著者
木村 朗子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.16-27, 2011 (Released:2016-12-09)

本発表では、中世社会の信仰がどのようなイマジネーションに支えられ、どのようなものを幻視させるのかについて考えてみたい。ジュリア・クリステヴァは近著、Cet incroyable besoin de croire (Bayard, 2007) [This Incredible Need to Believe, 2009] で、信じること、信仰することについて論じ、信じるということは、それを真実と捉えるという意味だと述べている。多くの場合、宗教的な信仰は、とても信じ難いエピソードの集積の上に成り立っている。さらに、その真実性を補強するために経験譚や目撃譚などがあらわれる。信憑性への希求が結果としてますます信じられそうもないエピソードを上重ねしていくことになる。とくに信憑性をめぐるエピソード群は、一般に正典化されたものにたいして、外典的なものを派生させていく。正典は、外典を排除しようとするが、かえって外典的なものがさらに強い信仰に支えられて生き延びさせてしまう。本発表では、外典的エピソードのなかから、それらの体験という想像における見ることとしてのヴィジョナリーをめぐってうみだされた物語の視覚的イメージと語りとの関係について考える。
著者
木村 朗
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.333, 1992-05-15

那覇の黄昏は紫色に暮れ,美しい.沖縄で暮らし始めて1年,興味深い理学療法の状況をみている.研究の合間を縫っての,つかの間の臨床で,一面からしかとらえていないが.“ちゃんぷる”である. ちゃんぷるとは,素材を混ぜ合わせて炒めた料理を指すほかに,「混ぜる」の意味がある.困り事は「何でもリハ」,すなわち適応の有無が判断されないままのベルトコンベアー式指示と,治療方針の不明確な,「その他に丸」式処方が療法士部門に出され,「理学療法士の行なう理学療法」と「誰でもいいから理学療法らしいもの」がちゃんぷるされて,この両者に何の「差」も生じない構図である.
著者
鈴木 学 加藤 仁志 仲保 徹 木村 朗
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.485-489, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

〔目的〕学生の性格とPBLテュートリアルに対する取り組み状況との関係について検討した.〔対象〕A大学理学療法学科の3年生55名とした.〔方法〕PBL実施後,KT性格検査による学生の性格判定およびPBLの取り組み状況に関するアンケートを実施した.〔結果〕5つの性格の程度は7.85~11.71であった.主たる性格によるPBLの取り組み状況には差異はなかった.各タイプの傾向とPBLの取り組み状況との関係は,臨床思考は「信念確信型」との間で有意な正の相関,「繊細型」との間で負の相関,協調性は「自己開放型」との間で有意な正の相関がみられた.〔結語〕取り組み状況の要因の1つとして各性格の程度が関係していることが示唆された.
著者
木村 朗子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.32-43, 2014-05-10 (Released:2019-05-31)

宮廷物語は多く性愛関係を扱うものの、どうやら肉欲そのものの発露を描いてはこなかった。性的欲望の根拠として物語が主張するのは前世の契りという因果である。この世に生を受ける以前にまで遡って、今の欲動について考えようとするのは日本の古代だけではなくて、古代ギリシアにも同様にあった。「古代」は、今の理論において最も先進的な概念のクィアから発して議論が成る。本稿は、こうした「古代」的発想から、ジェンダー、セクシュアリティで議論されてきたことを再度捉え返すものである。
著者
木村 朗
出版者
日本公衆衛生理学療法研究会
雑誌
日本公衆衛生理学療法雑誌 (ISSN:21895899)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2018-03-16)

理学療法は昭和40年日本において理学療法士法が成立して以来、2013年時点でおよそ10万人を超える有資格者によるサービス提供体制を持つに至った。 さらに、公衆衛生学的な課題に応えるためのサービスの提供のためには、新たに保健医療福祉システムの視点および社会の価値観と経済成長、情報通信技術(Information Communication Thecnology,ICT)の進歩、生活様式の変化など社会的視点を加えながら研究し、社会に貢献することが公衆衛生理学療法の視点であり、本研究会の設立趣旨はそこにある。 このような具体的な課題を、従来の理学療法に収束させるだけでなく、展開することを目的として研究する場として本会は設立された。さらに、インターネットの機能が進歩したため、研究会運営をwebベースで行うことができるようになったことが契機となり、日本公衆衛生理学療法研究会の発起人の会が生まれ設立総会が平成24年10月25日に開催された。研究会の運営とHomepageの管理を、m3.comで行うことが可能になったことからスポンサーの確保などの心配がなくなり、従来の学会組織と一線を画す運営形態がとれる見通しが立った。
著者
木村 朗
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.41-47, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
3

医療と福祉分野における理学療法は,障害者に日常生活活動と余暇活動における最大限の自立を促すことを目的にしている。同様に,産業保健での理学療法は職業活動における自立を促すことが目的である。これからは理学療法士が,障害の予防や,真の障害者のリハビリテーションに貢献することが望まれる。すなわち,日常生活活動,余暇活動に加えて,より積極的な職業活動における理学療法の役割を見出すべきである。ただし,わが国において,産業保健領域で働くために必要な資格がある。本稿は,これらの資格に衛生管理者があることを示し,さらに労働衛生コンサルタントがあることも紹介し,産業保健分野において理学療法の実践可能な開業権取得の可能性があることを述べた。これらの受験資格において理学療法士の置かれた立場は,まだ不利な点があり改善すべき課題があることを示した。
著者
木村 朗
出版者
日本公衆衛生理学療法研究会
雑誌
日本公衆衛生理学療法雑誌 (ISSN:21895899)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.18-23, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
11

はじめに:日本の20歳代の若者では、血糖スパイクの発生率はそれほど高くないと報告されているが、1995年以降に生まれた20歳代の血糖スパイクの発生率は増加している。 目的20代の青年の血糖スパイクを予測する発達上の複雑な要因を探った。 方法:20歳代の血糖スパイクを予測する発達因子の影響を、後ろ向きコホート研究によって分析した。予測因子は、出生体重、3歳の体重(BW)、12歳のBW、15歳のBWであった。高校時代の運動習慣の有無、20代の物理的な不活動の存在、20代の食事中の野菜や果物の摂取、20代の朝食摂取習慣の存在、20代の血糖スパイク(GS)の存在。我々は、肥満の存在を従属変数とするロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 結果:67名(平均年齢21±0.4歳、女性51%)が分析に含まれた。血糖スパイクの頻度は13.4%(1.079〜78.219)であった。血糖スパイクへの影響の個々の因子を調整した後、最良の予測モデルは、12歳の性別、性別、定数(誤差)で構成される。唯一有意な予測因子は、12歳の1.222(1.038〜1.438)のBWであった。性別0.05(0.003~0.831)、定数0.0098。性別による効果の差異が示された。興味深いことに、野菜と果物の摂取量、出生時体重、3歳と15歳のBW、高校時代の運動習慣、20代の身体活動、20代の朝食摂取習慣、20代のGSが血糖スパイクの予測に関連する。 2008年頃の日本の経済不況の影響は、伝統的な日本料理から輸入された安価なブドウ糖食品の普及にも影響を及ぼしている可能性がある。 結論:我々の所見は、おそらく2008年頃の12歳の青年の体重を、20歳の青年期の血糖スパイクを予測する発達上の複雑な要因として示している可能性が示唆された。
著者
木村朗著
出版者
三共出版
巻号頁・発行日
2018
著者
木村 朗 水池 千尋 大城 昌平 吉川 卓司 甲賀 美智子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1191, 2005

【目的】近年、生活習慣病を有す高齢片麻痺患者の維持期では新たに動作障害に応じた身体活動量の増加が求められている。生活習慣病は生理学的指標のバイアスになる。そこで、本研究は、生理学的指標を用いずに動作の加速安定性から定常状態を評価するための条件を探った。リズムに合わせた動作指導時の時間要因と、3方向の動作軸の空間要因が動作時間と加速度へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として調べた。<BR><BR>【方法】介護老人保健施設に通所する測定協力に同意が得られたCVA発症後5年以上経過した年齢が70歳から83歳の片麻痺患者5名(男性3名、女性2名)をランダムに選んだ。ステージは上肢4、手3、下肢4。手順は被験者にイス座位で加速度センサー(microstone、MVPA305)を正中位に両手保持し、肘を90度屈曲位にしたまま左右に体幹を回旋するよう指示した。次いで、ラルゲットテンポ(66Hz)の <I>リンゴの唄</I>を頭部後ろから聞き取らせ、60秒間、唄のテンポに合わせ左右に最大回旋するよう指示した。5ms時からの最初の5動作と最後の直前の5動作49510ms時までのxyz軸方向の反復動作時間(加速度のピークからピークまでの時間:PPD)とピークの加速度を測定した。初期vs定常期(時間要因:TF)と前後-上下-水平:xyz方向要因(空間要因:SF)がPPDおよび加速度に及ぼす影響をANOVAで調べた。<BR><BR>【結果】開始初期のPPD(平均±SD単位はms)、 前後:1047.5±105.2、上下:2076.2± 54.5、水平:2071.2±59.7定常状態期のPPD前後:1072.5±441.9、上下:2093.7±45.8、水平:108.70+/-51.2。開始初期の加速度(平均±SD単位はm/sec<SUP>2</SUP>)前後:5.7±.6、上下: 8.8±.9、水平:14.6±.9定常状態期の加速度、前後:6.7±.9、上下:8.7±1.2、水平:15.0±1.0。ANOVAの結果:PPDのTF:ns、SF:p<0.001。Tukeyは95%CIがx-y:-1268.0から-781.9、y-z:-248.0から238.0(ns)、x-z:-1273.0から-786.9であった。加速度のTF:ns、SF:p<0.001。Tukeyは95%CIがx-y:-3.6から-1.4、y-z:-9.6から-7.4、x-z:1.4から3.6。nsを除き、p<0.01。<BR><BR>【考察】被験者は意識的に体幹の回旋とリズムを合わせようと指示され、肘が体幹に固定されているため上下の動きで随意的努力が少なく済み、水平の動作では四肢の片麻痺でも体幹が両側支配で、座位での体幹回旋は、四肢に比べ麻痺の影響が少ないためにリズムに合わせることが可能であったと考えられる。注意を促さない前後の動きで加速が定常期に増えるのは動作の継続を可能にするための身体効率を高める何らかの自動制御機構の関与が加わる可能性が考えられる。<BR><BR>【まとめ】座位体幹回旋エアロビクス運動では定常状態に至るにつれ前後方向の加速度はリズムを反映しないで増加する。この<B>揺れ増加現象</B>に注意して指導する必要があろう。
著者
木村 朗子
出版者
新潮社
雑誌
新潮
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.185-199, 2017-04
著者
石川 捷治 出水 薫 李 弘杓 中島 琢磨 平井 一臣 木村 朗 藤村 一郎 山田 良介 木原 滋哉 黒木 彬文 中村 尚樹 李 〓京 権 赫泰 金 暎浩 金 世中 余 信鎬 徐 炳勲 李 春根 許 殷
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

朝鮮半島における1945年「8月15日」を境とする政治・社会状況の変化について、当時の人々(日本人を含めて)の証言(記憶)と記録により歴史の具体像の解明にせまる。韓国・日本・その他の歴史博物館における「8・15」の位置づけに関する調査と文献資料の収集と分析を行い、現地での韓国人や引揚者などからの聞き取り調査を交えて、研究を進めた。その結果、それぞれ「転換期」にある韓国・日本の「歴史認識」の位相について明らかにすることができた。