著者
田淵 紀子
出版者
日本助産学会 = Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.32-44, 1999-01-20
被引用文献数
4 4

The present study is undertaken to investigate how mothers felt when they heard the cries of their babies (within one week and one month after birth) and what actions they took.The subjects of this study were 16 women who delivered normal neonates at a private clinic in Ishikawa Prefecture. How these mothers dealt with the cries of their babies was investigated by means of an interview, which was carried out in a semi-controlled method. The interviews were recorded on tape with each mother's consent. The interviews were performed twice (within one week and one month after birth). Qualitative analysis of the mothers' responses to their babies' cries yielded the following results.The responses of mothers to their babies' cries within one week after birth were found to contain the following six elements: emotional responses, cognitive responses, intellectual interpretation of the cries, concrete countermeasures, intuitive understanding of the cries, and evaluation of the baby's character and temperament.These emotional responses were affected by the mother's stability, the mother's awareness of her role as a mother, the babies' temperament reflected in their cries, and the time since the previous lactation.Mothers attempted to interpret the meaning of their babies' cries. This attempt involves two elements (time and features of the cry).This study revealed what mothers felt when hearing their baby's cries and what action they took to deal with their baby's cries at two points after delivery (within one week and one month after delivery). The findings of this study may be useful to nurses when supporting mothers in the care of babies within one week and one month after birth. 本研究の目的は, 出生後早期および生後1か月時点において, 児の泣き声を聞いたとき, 母親がどのように感じ, どのように考えて行動しているかという "児の泣き声に対する母親の反応" を明らかにすることである.石川県内の出産施設で出生した正常な新生児をもつ母親16名を調査対象とし, 児の泣き声に対する母親の受け止め方について, 半構成的に面接を行い質的に分析した.その結果, 新生児の泣き声に対する母親の反応には, 以下の6つのカテゴリーがあげられた.そのカテゴリーとは,【感情・情動反応】,【認知的反応】,【泣きの解釈】,【児の要求を満たすための行動】,【児の泣きに対する思い】,【児の性格・気質の感じ取り】であった.このうち,【感情・情動反応】には, 児の泣き声を聞いたときの『母親の気持ちの安定性』,『母親役割意識』,『泣きの特徴からみた児の気質』,『前回の授乳時間からの時間経過』が関与していた.また【泣きの解釈】には『時間経過』と『泣きの特徴』が関与していた.本研究の結果より, 出生後1か月ごろまでの児をもつ母親の心理的な状況と母親を支援する方向示唆された.
著者
紙尾 千晶 島田 啓子
出版者
日本助産学会 = Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.17-28, 2016

<b>目 的</b><br> 熟練助産師が分娩介助の経験を積みながら,どのようなreflectionをしているのかを明らかにする。<br><b>対象と方法</b><br> 解釈学的現象学を理論的背景として14名の熟練助産師に対して,参加観察及び面接調査を行った。<br><b>結 果</b><br> 助産師のreflectionは,分娩介助しているプロセスの中で行われるreflectionと,介助の終了後に行われるreflectionに大別された。<br> そして介助のプロセスの中で行われるreflectionは,予測外の展開や不確かな状況を気がかりとして感知するかどうかによって違いがみられた。まず,気がかりを感知した状況では,助産師は過去の経験知から様々な手段を携えて試行していく【様態1:試行を生み出すreflection】を行っていた。一方,正常に経過,進行していく想定内の状況においては,気がかりを感知せず,自身の経験知や身体感覚を復元させて瞬間的に介助行為に取り入れる【様態2:状況との融合を生み出すreflection】を行っていた。そして介助行為の後には【様態3:鏡映的に自己を客観視して洞察するreflection】を行っていた。<br> 【試行を生み出すreflection】は2つのテーマ,〈成功する確信がない中で反応を探りながら試行する〉〈過去の経験で身に着けた豊富な手段を引き出す〉に整理された。<br> 【状況との融合を生み出すreflection】は2つのテーマ,〈身体感覚を復元させて状況の意味を瞬時に見抜く〉〈正常性を見通して自然な行動を導く〉に整理された。<br> 【鏡映的に自己を客観視して洞察するreflection】は5つのテーマ,〈気がかりが引っかかり心を揺さぶられながら取り組みを見直す〉〈その人にとっての出産の意味付けを共に考える〉〈経験した学びをパターン付けして塗り替える〉〈助産師として関わる自分の姿勢を見つめ直す〉〈他者との関わりの中で自分の経験知を磨き究める〉に整理された。<br><b>結 論</b><br> 熟練助産師のreflectionは3つの様態,【試行を生み出すreflection】【状況との融合を生み出すreflection】【鏡映的に自己を客観視して洞察するreflection】に大別できた。
著者
田淵 紀子 島田 啓子 亀田 幸枝 関塚 真美 坂井 明美
出版者
日本助産学会 = Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-36, 2008-06-30
被引用文献数
2 4

目 的<br> 生後1ヶ月児の泣きに対する母親の困難感とその感情に関連する要因を明らかにすることを目的とした。<br>対象と方法<br> 北陸地方の病産院にて出産し,1ヶ月健診時に調査の同意が得られた母親を対象に,自己記入式質問紙調査を実施した。調査内容は,児の泣きに対する母親の困難感と,その関連要因として,児の泣きの性質や母親の睡眠・授乳状況,サポート状況などの質問項目を設定し,各々4段階リカート尺度で点数化した。<br>結 果<br> 有効回答は,初産婦298名(47.3%),経産婦332名(52.7%),合計630名であった。全体の約半数の母親が,児が泣くと戸惑ったり,抱いたり,あやしても泣きやまない困難な状況を経験していた。困難感を示した母親は,小さな子どもと接したことのない初産婦に多く,子どもの泣き方が特徴的であったり,なかなか寝入らないなど,子ども側の要因と母親の生活状況,育児に対する負担感や自信感等の母親側の要因が困難感に関連していた。<br>結 論<br> 生後1ヶ月時の母児の支援には,児側の要因と母親側の要因の双方に着目し,児の泣きの特徴や,母親の疲労状態,育児に対する気持ち等に注意を向け,母親が児の泣きをどのようにとらえているのかを知ることが重要であり,これらのスクリーニングの必要性が示唆された。