著者
金子 達哉
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.30-37, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
8

【目的】装具作製後のフォローアップ実態と他施設との連携実態を明らかにすること、装具手帳の必要性を検討することである。【方法】36施設を対象とした質問紙調査を実施した。質問は1)所属施設の種類、2)過去5年間での下肢装具処方歴、3)装具作製後のフォローアップ実態、4)装具作製後の他施設との連携実態、5)装具手帳の活用による装具難民減少の可能性である。なお、5)のみは各施設の複数理学療法士に回答を求めた。【結果】解析対象は15施設であった。装具作製後のフォローアップ実態は保守点検における不十分は94%、装具不具合時の問い合わせ先における不十分は87%であった。他施設との連携実態は不十分が100%、装具手帳の活用による装具難民減少の可能性は95人中83人(87.3%)が減ると思うと回答した。【結論】装具難民を減らすためには装具手帳の導入が望ましい可能性がある。
著者
栗田 慎也
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.47-54, 2022-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
22

目的:糖尿病性神経障害(以下、DN)患者を対象に運動療法と抗力を具備した継手付き体幹装具Trunk Solution Core(以下、TSC)の併用効果を検証した。方法:対象は血液透析療法を行う40代男性のDN患者1名とした。研究はAB型シングルケースデザインを用いた。A期は歩行練習を行う従来練習期とし、B期は歩行練習にTSCを使用した介入期とした。介入期間は両期とも2週間とし、非透析日の週3回を頻度で合計4週間とした。評価は快適歩行速度と介入前後の修正Borg Scaleの差とした。効果判定は標準偏差帯法を用い視覚的に分析した。結果:各期【A期/B期】の平均値は歩行速度(m/s)が【0.7±0.1/1.0±0.1】、修正Borg scaleの差が【3.5±0.8/2.3±0.8】と介入期に改善を認めた。結論:血液透析療法を伴うDN患者にTSCの使用は疲労感少なく、歩行能力改善が得られた。
著者
宮原 拓也 高島 恵
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-29, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1

臨床実習での下肢装具の体験不足等により、下肢装具に関する自己効力感が十分に培われていない可能性がある。本研究では最終学年の理学療法学科学生を対象に下肢装具に関する自己効力感を調査し、実施内容や体験機会による相違を検討し、下肢装具教育の課題を明らかにすることを目的とした。対象は3年制養成校最終学年41名とし、調査票を用いて年齢、性別、臨床実習で関わった主な病棟・施設、下肢装具に関する自己効力感、体験機会を収集した。その結果、体験機会の相違による比較では、自己効力感は臨床実習で体験、学内のみで体験、体験なしの順に高値を示した。実施内容の相違による比較では、使用、選定、調節の順に高値を示した。また、実施内容細項目間の比較では、長下肢装具やゲイトソリューションに関する内容で低値を示した。学内から体験機会を創出し、実施内容による差を是正することが必要と考えられる。
著者
小野塚 雄一 井上 和久
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-21, 2022-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
31

目的:脳卒中片麻痺者において、長下肢装具の有無が静的立位時の重心動揺と前額面アライメントに与える影響を明らかにすること。方法:対象は初発脳卒中片麻痺者9名。方法は長下肢装具の有無にて、重心動揺計を用いて測定し、前額面アライメントをデジタルカメラにて撮影し、ImageJにて解析を行った。統計解析は2群間比較をWilcoxonの符号付順位和検定にて分析し、各項目をSpearmanの相関分析で行った。結果:総軌跡長、外周面積、矩形面積、実効値面積、単位面積軌跡長、荷重率に有意差は認められ、体幹傾斜角度、骨盤傾斜角度および非麻痺側股関節内転に有意差が認められた。また重心動揺と麻痺側の股関節内転角度に高い相関が認められた。結論:長下肢装具によりアライメントが修正され、麻痺側への荷重率が増加し、静的立位の重心動揺は安定した。重心動揺との関係では麻痺側の股関節内転角度が関与する可能性があった。
著者
吉川 大志 金子 里可
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.55-61, 2022-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
20

【目的】脳卒中片麻痺者2例に対する短下肢装具(ankle-foot orthosis:以下、AFO)装着の改善を目的とした工夫について報告する。【方法】症例1(右片麻痺者)は本人用AFO作製時にクイックリングを採用し、面ファスナーシールを足部外側に貼付したことで、リングにベルトを通しやすく、足部の下にベルトが挟まれないようにした。症例2(左片麻痺者)はAFOを床に立てて装着する方法で練習を行い、AFOベルトへの装着番号シールの貼付や手順書を提示し装着手順を視認できるようにした。【結果】症例1は本人用AFO作製後に装着時間が短縮し、AFOの履き易さや愛着が改善した。症例2はAFO自己装着動作を含めた短距離歩行が自立した。【結論】脳卒中片麻痺者に対するAFO装着に対して工夫を行った結果、自己装着の自立度や装着時間、履き易さが改善された。
著者
小川 秀幸 宮原 拓也 小野塚 雄一 實 結樹 松岡 廣典 澤入 彩佳 三井 直人 中野 克己
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.72-79, 2023-03-25 (Released:2023-03-25)
参考文献数
22

【はじめに】先行研究における下肢装具のチェック項目は、選定方法が不明確などの課題が挙げられる。本研究は、下肢装具に関する経験豊富な理学療法士の意見を集約してチェックシートを作成し、内容的妥当性を検証した。さらに、使用感を確認し有用性を高める検討をした。【方法】下肢装具チェックシートは、先行研究から選定し、Delphi法を用いて内容的妥当性を検証した。次に、介護支援専門員を対象に実際の使用感に関するアンケート調査を実施した。【結果】26項目から17項目を採用した後、類似している内容を集約し8項目のチェックシートとした。アンケートの結果、チェックシートの使用感に関する回答は「分かりやすい」などポジティブな回答が60%以上であった。【考察】作成したチェックシートは、内容的妥当性が保証され、使用者の意見収集を実施した有用性の高いものであると考えられた。【結論】内容的妥当性を検証し、使用者の意見を反映した有用性の高い下肢装具チェックシートを作成した。