著者
溝口 全子 松岡 緑 西田 真寿美
出版者
日本看護科学会誌
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.92-102, 2000
被引用文献数
1

本研究の目的は, 女子大学生のダイエット行動において, 比較的緩やかなダイエット行動をとる人, 健康をも脅かすような過激なダイエット行動をとる人の背景に何が関与しているのか, 各々の行動に及ぼす影響要因の違いについて明らかにすることであった. 調査では, PenderのHealth Promotion Modelの枠組みを参考に, ダイエット行動に関連す る要因を (1) 個人的因子: 生物学的要因 (体脂肪率・年齢・家族の肥満), 心理学的要因 (主観的健康評価・集団回帰傾向・体型不満・ボディイメージ), 社会的要因 (周囲のダイエット行動者・ダイエットに関する話題の頻度), (2) 過去の関連行動: 過去のダイエット経験, ダイエット情報の収集, 情報源, 体型・体重に関する嫌な体験, (3) ダイエット行動に対する特別な認識と感情: 痩せ願望, 自己効力感と設定し, 看護女子大学生203名を対象に調査した. その結果, 以下のことが得られた.<BR>1) 緩やかなダイエット行動, 過激なダイエット行動には共通して痩せ願望が影響していた.<BR>2) 緩やかなダイエット行動のみに影響する要因は専門的情報, 自己効力感があった. 過激なダイエット行動のみに影響する要因は家族の肥満, 過去のダイエットの成功体験, 体型・体重に関する嫌な体験があった.<BR>3) 痩せ願望をもたらす要因では, 過去の関連行動, 生物学的要因, 心理学的要因, 社会的要因の順に影響力が強かった.<BR>痩せ願望があっても自己効力感が高ければ, 専門的・健康に基づいたダイエット情報を得て, 緩やかなダイエット行動をとることが示唆された. 今後, 自己効力感を高めていくような介入が必要と考えられる.
著者
江藤 宏美
出版者
日本看護科学会誌
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.30-39, 2001

本研究は, 家庭環境における生後1か月児を対象として, 夜間の睡眠・覚醒の行動観察を行い, 睡眠状態の特徴を明らかにすることを目的とした. 対象は36人の第一子, 正常児 (生後30.8日) で, 自宅における夜間の睡眠・覚醒状態の録画をビデオ録画法によって2夜連続行い, 第2夜のデータをプロトコールに従ってコード化し, 分析した.<BR>その結果, 1か月児の当該夜における睡眠の全体像は, 総録画時間のうち総睡眠時間はその約7割を占める7.4時間であった. 睡眠時間のうち浅い眠り (Active Sleep) と深い眠り (Quiet Sleep) のバランスは7: 3で, 浅い眠りの割合が多かった. 夜間の中途覚醒により分断される周期毎の睡眠期は, 平均124分であった. 睡眠変数の主成分分析により,「眠りの安定性」「眠りの深さ」の2成分が抽出された.「眠りの安定性」は [平均睡眠期],[睡眠率],[覚醒回数],[覚醒期のばらつき]の4変数から,「眠りの深さ」は[%QS],[%AS]の2変数からなっていた. 今回, 睡眠の必然的分断によっておこる, 1か月児の実際的な睡眠の特性を反映した新しい睡眠変数[平均睡眠期][覚醒期のばらつき]が採択された.<BR>今後は, これらの変数をさらに検討するとともに, 継続的な観察を通して, 乳児の睡眠・覚醒パターンを明らかにしていくことが重要であると考える. また, 今後の方向性として, この研究法をさらに進め, 夜間の睡眠や授乳に関わる母子の相互作用を明らかにする必要性が示唆された.