著者
上田 晃子 塚本 和也 山入 高志 柏井 健作 坂口 健太郎 木下 智弘 西岡 正好 中田 秀則
出版者
日本禁煙科学会
雑誌
禁煙科学
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.1-8, 2020

<b>要 旨</b><br><b>目的:</b>児童・生徒の家庭内受動喫煙の現状と健康状態を調査し受動喫煙防止のための課題を明らかにすることを目的に検討した。<br><b>方法: </b>v2018 年度喫煙防止授業を実施した小・中学校、高校で授業前に家庭内受動喫煙について質問調査を行った。また同年同地域の 3 校の公立高校 3 年生を対象に受動喫煙の有無、既往症、最近の自覚症状について調査した。<br><b>結果:</b>授業前調査では小学生(4-6年生)750人、中学生(1-3年生)679人、高校生(1年生)311人が回答し(回答率94.6%、89.7%、99.4%)同居家族の喫煙率は、51.2%、49.6%、40.2%であり、そのうち65.4%、73.6%、57.6%が屋内で喫煙し、残りは屋外で喫煙していた。高校3年生の調査では696人が回答し(回答率94.3%)、同居家族の喫煙率は51.1%、喫煙する同居家族の78.4%が屋内で喫煙していた。同居喫煙者のいる生徒はいない生徒に比べ、女子では気管支喘息・咳喘息の既往がある者が有意に多く、湿疹・皮膚炎、副鼻腔炎の既往、最近咳が長引く、のどが痛い、目が痛い、皮膚がかゆい者が多い傾向を認めた。同居喫煙者のいる生徒はいない生徒に比べ、男子ではかぜを年2回以上ひいた生徒が有意に多かった。同居喫煙者がいる生徒を屋外喫煙群と屋内喫煙群に分けて比較すると、屋外喫煙群の方が屋内喫煙群より生徒の健康状態が良いという結果は得られなかった。母親の喫煙が女子生徒の蕁麻疹、気管支喘息の既往と関連を認めた。<br><b>考察:</b>受動喫煙による健康影響を防止するためには同居喫煙者に屋外喫煙を促すのみでは不十分である。学校医は家屋内とその周辺での禁煙、喫煙者の禁煙支援について啓発する必要がある。<br><b>結論:</b>同居家族の喫煙は気管支喘息、感冒罹患など児童・生徒の健康に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
後藤 眞
出版者
日本禁煙科学会
雑誌
禁煙科学 (ISSN:18833926)
巻号頁・発行日
vol.vol.7, no.08, pp.1-7, 2013 (Released:2021-08-09)

【要 旨】 背景:関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、原因不明の代表的な慢性炎症性疾患であり、発症・進展にはHLAな どの疾患感受性遺伝子に加え、免疫系と交絡する複数の環境因子が関与している。なかでも欧米での膨大な疫学研究と分 子生物学をはじめとする基礎研究により、環境リスクファクターとして、喫煙の重要性があぶり出されてきた。しかし、 我が国の専門家の間では、RA発症のリスクファクターとしてのタバコの認知度は高くなく、患者への指導はほとんどなさ れていない。日本の専門家への注意喚起を含めて、レビューしたい。 方法:PubMedならびに欧米の主要リウマチ関連雑誌の論文を参考にした。残念ながら、我が国での研究は、少ない。 結果:喫煙は、疾患感受性遺伝子を介する免疫異常を基礎とする慢性炎症によって、RAを発症、進展させる。しかし、RA の病態、予後に影響を与えない、という報告もある。 結語:喫煙は、RA発症を促進し、病態を修飾する可能性が高い。
著者
森岡 聖次 奥田 恭久
出版者
日本禁煙科学会
雑誌
禁煙科学
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.1-5, 2012

<b>要 旨</b><br>背景:多くの喫煙者は禁煙挑戦しようと考えているが、決断に到るきっかけがむずかしい。そこで、喫煙者への禁煙導入を促すため、著名人の死亡記事などから情報を収集し、データベースを構築し、講演会、禁煙外来での患者指導などに用いた。<br>方法:データ源は2003年4月以降の全国紙のほか、人生のセイムスケール等のインタネット情報を用いて収集した。死亡者が生前喫煙者であったかどうかは本人の記述や喫煙している写真を判断根拠とした。喫煙関連疾患は、加濃らの提唱した260以上の疾病リストを照合した。生没年は百科事典のほか、ウィキペディア等を参照した。啓発方法は防煙教育の場や禁煙外来等で啓発対象者の年齢、背景を考慮して、作成したリストの中から代表的な俳優(女優)、歌手、作家、学者、スポーツ選手等を紹介した。<br>結果:2010年7月現在で、516人(最古生年1804→最新生年1971:うち女性35人)を収集(うち日本人・東洋系は81%)した。このうち54人は現段階で死因不明であった。残る462人の職業は、作家32%、俳優(女優)17%、歌手12%が上位であった。死亡年齢は最年少31歳から最高100歳までで、この516人とは別に、喫煙歴不明の181人が喫煙関連疾患死亡者として収集されたが、現時点では生前の喫煙歴は確認されていない。死因別では、男女ともがん(男44%、女54%)、循環器疾患(男29%、女26%)、呼吸器疾患(男女とも9%)が多かった。<br>結論:著名人の死亡は話題性も高く、たばこ病を身近なものとして認識させ、禁煙挑戦を促進するうえで有用であると示唆された。新聞報道などでは、可能な限り死因と喫煙歴を掲載することが期待された。また禁煙効果の啓発のためには、禁煙した著名人自身が禁煙啓発する必要があると考えられた。
著者
永吉 奈央子 依田 千恵美 徳山 清之 高橋 裕子
出版者
日本禁煙科学会
雑誌
禁煙科学
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-5, 2015

<b>要 旨</b><br><b>目的:</b>当院禁煙外来における未成年の現状を評価した。<br><b>対象:</b>2010年9月~2013年8月に当院を受診した未成年者62名(男子46名、女子16名)<br><b>方法:</b>初診時の問診票と診療記録から、受診者の特徴と治療成績を調査した。<br><b>支援方法:</b>3か月間の通院治療を目標とし、ニコチン依存度に応じた薬物療法と行動療法で支援した。<br><b>結果:</b>初診時平均年齢15.1歳、初回喫煙年齢平均12.6歳、常習喫煙年齢平均13.1歳、喫煙本数平均9.8本/日。同居する喫煙者は、なし23名(37.1%)父親20名(32.3%)母親12名(19.4%)両親3名(4.8%)その他4名(6.5%)。受診の主な理由は、自分からやめようと思った39名(62.9%)、学校からの指導37名(59.7%)であった。禁煙動機は、たばこ代がかかる、健康のため、体力のため、などであった。たばこへの気持ちは、やめたい、吸ったことを後悔している、等であった。たばこの入手方法は、先輩、友人がタスポを貸す、親が買ってくれる、お店に買ってくれる大人がいる、であった。<br><b>治療経過:</b>2名(3%)は初診時すでに自力で禁煙しており、3か月の禁煙継続を確認した。5名(8%)は3か月通院を継続し禁煙成功を確認した。36名(58%)は通院を中断し、最終受診時点で9名は禁煙しており27名は禁煙していなかった。19名(31%)は初診以後来院しなかった。<br><b>結語:</b>自ら禁煙を希望した受診者が6割いるにも関わらず、卒煙を確認できた者は1割程度であった。通院が継続できない者が半数認められ、医療機関だけでのフォローは限界があると思われる。社会環境の影響の大きさも伺え、地域、家庭、医療、学校との連携による禁煙支援が必須と思われた。