著者
森岡 聖次 奥田 恭久
出版者
日本禁煙科学会
雑誌
禁煙科学
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.1-5, 2012

<b>要 旨</b><br>背景:多くの喫煙者は禁煙挑戦しようと考えているが、決断に到るきっかけがむずかしい。そこで、喫煙者への禁煙導入を促すため、著名人の死亡記事などから情報を収集し、データベースを構築し、講演会、禁煙外来での患者指導などに用いた。<br>方法:データ源は2003年4月以降の全国紙のほか、人生のセイムスケール等のインタネット情報を用いて収集した。死亡者が生前喫煙者であったかどうかは本人の記述や喫煙している写真を判断根拠とした。喫煙関連疾患は、加濃らの提唱した260以上の疾病リストを照合した。生没年は百科事典のほか、ウィキペディア等を参照した。啓発方法は防煙教育の場や禁煙外来等で啓発対象者の年齢、背景を考慮して、作成したリストの中から代表的な俳優(女優)、歌手、作家、学者、スポーツ選手等を紹介した。<br>結果:2010年7月現在で、516人(最古生年1804→最新生年1971:うち女性35人)を収集(うち日本人・東洋系は81%)した。このうち54人は現段階で死因不明であった。残る462人の職業は、作家32%、俳優(女優)17%、歌手12%が上位であった。死亡年齢は最年少31歳から最高100歳までで、この516人とは別に、喫煙歴不明の181人が喫煙関連疾患死亡者として収集されたが、現時点では生前の喫煙歴は確認されていない。死因別では、男女ともがん(男44%、女54%)、循環器疾患(男29%、女26%)、呼吸器疾患(男女とも9%)が多かった。<br>結論:著名人の死亡は話題性も高く、たばこ病を身近なものとして認識させ、禁煙挑戦を促進するうえで有用であると示唆された。新聞報道などでは、可能な限り死因と喫煙歴を掲載することが期待された。また禁煙効果の啓発のためには、禁煙した著名人自身が禁煙啓発する必要があると考えられた。
著者
笠松 隆洋 吉村 典子 森岡 聖次 橋本 勉
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-26, 1996-02-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

和歌山県民栄養調査に参加した世帯の調理担当者769人について, 1日の摂取食品数を調査し, 摂取食品数と栄養素等摂取状況及び肥満との関連性について検討した結果, 以下のことが明らかになった。1) 1日の摂取食品数を12食品未満, 12~17食品, 18~23食品, 24~29食品, 30食品以上の5群に分けたところ, 18~23食品群が最も多く41%を占めていた。平均摂取食品数は, 20.2食品であった。2) 摂取食品数の増加に伴い, 栄養素等充足率は高くなる傾向を認めた。摂取食品数が18~23食品群ではカルシウムと鉄のみが不足し, 24~29食品群ではすべての栄養素が充足された。一方, 30食品以上群では, たんぱく質の充足率は142%, 脂質の充足率は125%にも達していた。脂肪エネルギー比は25%を超えていた。3) 摂取食品数の増加に伴い, いも類, 菓子類, 油脂類, 豆類, 果実類, 野菜類, 海草類, 魚介類, 肉類, 卵類, 乳・乳製品の摂取量は増加していた。4) 摂取食品数の増加に伴い, たんぱく質, 脂質, ビタミンB1, ビタミンB2は, 肉類, 卵類, 乳・乳製品といった動物性食品からの摂取割合が増加していた。5) 肥満者の割合は, 摂取食品数が24~29食品群で最も低かった。以上, 和歌山県民栄養調査の結果から, カルシウム所要量を充足させることに重点を置いた栄養指導を行うことを前提にすれば, 1日の摂取食品数は25食品程度を目標に摂取するとよいことが推察された。
著者
坂田 清美 吉村 典子 森岡 聖次
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

近年わが国における児童の肥満傾向の者や高脂血症が増加を続けているため、児童を対象とした高脂血症、肥満予防を主な目的とした教材を開発した。教材の開発にあたっては単に知識を与えるだけでなく、自ら考え判断できるスキルを身に付けるよう工夫した。教師の使いやすさや、保護者に対しても教育効果が上がるように配慮した。和歌山県中部の一地域において、小学4年生を対象に教材を用いて教育を実施した結果、「コレステロール」の言葉の認知度は、1年間で61%から79%まで上昇した。「食物繊維」という言葉の認知度は59%から78%まで上昇した。油、塩、砂糖に関する正解率では、15問中13問以上正解した者の割合は、38%から49%まで上昇した。お菓子の材料が記載されていることを知っている者は73%から85%まで上昇した。肉・魚を同じくらい食べると答えた者は51%から54%まで上昇した。野菜を毎日食べる者は、37%から42%と増加した。朝ご飯を毎日食べる者は、78%から81%と増加した。運動をほとんど毎日する者は、41%から43%へと微増した。健康教育教材を使用することにより、健康に関する知識の向上がもたらされた。運動については、今後さらにプログラムを充実させる必要がある。今後は、血清脂質等に与える影響を評価し、さらに健康教育プログラムを他の学年にも実施し、こころと体、健康と病気についての段階的で、包括的な学習プログラムへ発展させる予定である。