著者
梅永 雄二
出版者
日本職業リハビリテーション学会
雑誌
職業リハビリテーション (ISSN:09150870)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.41-48, 1995-03-31 (Released:2011-03-23)
参考文献数
9

表出言語が困難な場面 (選択性) 緘黙症者に対し, 職域開発援助事業を通してハンバーガーショップM社において職業指導を行った。場面緘黙症者はコミュニケーションに障害があるため, 作業指示に対する反応として身ぶりサインによる指導を行った。また, 作業理解のために, 作業工程を課題分析し, その課題分析に視覚的JIG (補助具) を利用した。その結果, ハンバーガー等の注文に対する受け答えに対しては, 身ぶりサインによりコミュニケーションがとれるようになり, 作業工程も問題なく理解できるようになった。このように, 事業所環境を本人のわかりやすいように「構造化」することによって, 作業が遂行できるようになることが明らかになったことは, 今後の職業指導に一つのをもたらすことができたものと考える。
著者
西村 武
出版者
日本職業リハビリテーション学会
雑誌
職業リハビリテーション (ISSN:09150870)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.52-59, 2003-03-31 (Released:2011-03-23)
参考文献数
8
被引用文献数
2

メモの使用は、記憶障害を有する高次脳機能障害者には必須の外的補助手段であるが、それを効果的・効率的に獲得する方法は、近年まで明確ではなかった。刎田他の実践研究により、高次脳機能障害者への参照→構成→記入という段階的なメモリーノート訓練の有効性が示唆されたが、本研究では、さらに重度の高次脳機能障害者に対し、先行研究の一部 (メモ形式・訓練方法) を改良し、メモ訓練を実施した。具体的には、(1) 長期展望を必要としない項目に訓練項目を絞り、机上訓練を行い、(2) 訓練効果の般化のため、机上訓練の終了段階で、将来の就労環境に近い形での実践訓練を行った。その結果、メモリーノートを出来る限り自分で使用し、適切に作業を遂行する習慣が身についた。さらに、訓練効果を支えた要因を、「本人側の要因」(障害認識と訓練へのモチベーション) と「環境側の要因」(メモリーノートの使用に関する、定期的な個別訓練場面の設定と作業場面での助言・指導) の両面から考察した。
著者
若林 功
出版者
日本職業リハビリテーション学会
雑誌
職業リハビリテーション (ISSN:09150870)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.2-15, 2007-09-15 (Released:2011-03-23)
参考文献数
24

わが国では職場定着や離職予防の要因として働く障害者本人の職務満足度を取り上げた研究は少ない。本研究はミネソタ職業適応理論の枠組みを参考に、職務満足度は離職意図と関連しているのか、また職業上の希望実現度は直接的に離職意図に影響しているのか、それとも職務満足度を媒介し影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。質問紙による調査を実施し、得られたデータをカテゴリカル回帰分析等により分析した結果、以下のことが明らかになった。(1) 職務満足度は離職意図と関連している。(2) 職務満足度と離職意図の関連の程度は障害種類により異なる。(3)「仕事の達成感」「労働条件」等職務満足度を構成する下位要素と離職意図の関係は障害種類によって異なる。(4) 就職時の希望条件が実現していないことや希望する配慮の実現していないことは、直接的に離職意図に影響しているのではなく、職務満足度を媒介して離職意図に影響を与えている。