著者
諏訪 惠信 宮坂 陽子 原田 翔子 仲井 えり 谷口 直樹 塩島 一朗
出版者
日本臨床生理学会
雑誌
日本臨床生理学会雑誌 (ISSN:02867052)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.187-192, 2020-12-01 (Released:2021-03-14)
参考文献数
9

近年,心房細動患者の塞栓症予防に直接経口抗凝固薬が使用可能となったが,添付文書に従っていない不適切な減量(“off-label”under-dose)投与が及ぼす影響についての報告は少ない.そこで本研究は,2012 年から2015 年に当院で新規にリバーロキサバンが投与された非弁膜症性心房細動患者で,腎機能が保たれた連続患者を対象とし,塞栓症と心血管死の複合イベントと出血イベントを調査した.リバーロキサバン10 mg 投与患者を“off-label”under-dose 群(N =65)とし,15 mg の適正使用群(N = 235)と比較検討した.対象患者300 例の平均観察期間13 カ月中に,複合心血管イベント13 例,出血イベント22 例を認めた.Cox 比例ハザード解析で,“off-label”under-dose 群は複合心血管イベントの有意な危険因子であったが(ハザード比=3.86, P=0.03),出血イベントでは有意ではなかった.つまり,リバーロキサバンの“off-label”under-dose 投与患者は塞栓症と心血管死のイベントが有意に増加したが,出血の抑制は認められなかった.
著者
永田 栄一郎
出版者
日本臨床生理学会
雑誌
日本臨床生理学会雑誌 (ISSN:02867052)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.155-160, 2019-12-01 (Released:2020-03-06)
参考文献数
8

神経免疫疾患は,重症筋無力症,多発性硬化症,ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP),自己免疫性脳炎,多発性筋炎など自己免疫の異常を起こし,中枢神経系および末梢神経に障害を起こす疾患で,その症状は多彩である.中でも末梢神経障害,筋疾患に関しては診断,治療の評価に対して筋電図検査は有用である.ギラン・バレー症候群,CIDP などの末梢神経障害を起こす疾患では,神経伝導速度検査が有用である.CIDP では,運動神経伝導速度では,遠位潜時の延長,伝導速度の遅延,時間的分散や伝導ブロックなどの異常が認められる.また,針筋電図などでも神経原性変化が認められる.多発性筋炎や皮膚筋炎などの筋疾患では針筋電図において筋原性変化を認める.さらに,重症筋無力症は反復刺激試験においてwaning 現象を認め診断の一助となる.神経免疫疾患において,特に電気生理学的検査は診断・治療の上で重要である.