著者
池田 岳大
出版者
日本STEM教育学会
雑誌
STEM教育研究 : 論文誌 (ISSN:24346438)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.3-12, 2023-02-10 (Released:2023-02-23)

本研究は,大学での専攻分野検討時期と実際に選択した専攻分野との関連およびその性差を分析することで,大学における専攻分野の性別分離がいかにして形成されるか検討する。特に,社会構造としてのジェンダー秩序の存在によって,男女それぞれが性少数派の専攻分野に進学する際には専攻分野検討時期の遅れがみられるか否か,四年制大学に通う大学生の個票データを用いた計量分析によって実証する。 分析の結果,性少数派の専攻分野への進路選択,具体的には男性比率の高い専攻分野へ進学する女性(もしくはその逆のパターン)においては,性多数の専攻分野への進路選択をする男女よりも専攻分野検討時期の遅れがみられた。この結果は,性多数派の進路では周囲への同調による進路選択の早期化,性少数派の進路においては葛藤による進路選択の遅延化といったジェンダー秩序による影響であると考えられ,専攻分野の性別分離を帰結することが示唆される。
著者
五関 俊太郎 後藤 勝洋 松浦 執
出版者
日本STEM教育学会
雑誌
STEM教育研究 : 論文誌 (ISSN:24346438)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.21-30, 2022-05-16 (Released:2022-06-17)

現代社会ではイノベーターの視点が求められており,学校教育においてもその人材の育成が注目される。イノベーションを創出する人材の育成にはデザイン思考とイノベイティブ・マインドセットの涵養が重要とされる。本研究では,第6学年理科「電気の活用」の展開として,センサーを用いたプログラミングを含む回路づくりを行い,デザイン思考の「Double Diamond」モデルをベースとしたものづくり活動を実践した。児童の討論記録と作品の分析から,Double Diamondモデルをベースとした指導計画の下で,多様なアイデアの創出が見られた。また,イノベイティブ・マインドセットに関する質問紙調査から,「理科の学習への意欲」「課題解決への粘り強さ」「コミュニケーションへの姿勢」「変革志向」「社会への参画」の5因子が抽出された。さらにこれらの因子が,本ものづくり実践の実施前後で顕著に向上することが見られた。
著者
荻原 彰 前田 昌志 森下 祐介 宮岡 邦任
出版者
日本STEM教育学会
雑誌
STEM教育研究 : 論文誌 (ISSN:24346438)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.3-11, 2022-05-16 (Released:2022-06-17)

野外学習においてドローンを利用することは,学習者の等身大の視点に,ドローン画像による上空からのリアルタイムの視点を加えることを可能にする.等身大の視点では見えなかったり,空間的配置がわかりにくいものでも,ドローンによる視点を加えることによって理解を促進する効果が期待できるのである.そこで筆者らは治水学習の一環として,ドローンを使用した野外学習教材の開発を試みた.三重県安濃川に残る伝統的な治水手法である越流堤と霞堤を対象とした野外学習においてドローンを使用し,ドローンからコントローラーに送信される画像を教師のフェイスブックに転送し,ポケットWi-Fiを通じて児童のiPadに配信し,それを教師が説明するという構成の教材である.評価は児童の理解度の自己評価,ドローンで学習したことに対する児童の評価,授業後の振り返りの分析により行った.その結果,ドローンを利用した野外学習教材は治水手法の理解を促す上で一定の効果があったと判断できる.