著者
野村 信威
出版者
明治学院大学心理学部
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.35-47, 2017-03-08

夢の内容と夢の中で経験される感情、そして日常場面における怒りの感情などとの関連について探索的な検討を試みた。首都圏の私立大学生を対象に質問紙調査を依頼し、調査票が回収出来た230名(男性55名、女性175名、平均年齢18.8歳、SD1.2歳)を対象者とした。対象者には最近見た夢の内容について自由記述で回答をもとめ、夢を見ているときの感情や夢を想起する頻度、日常場面で怒りの感情を経験する程度などを尋ねた。報告された191名の夢の内容についてKJ法(川喜多、1986)により分類を行った結果、友人の夢、非日常的な夢、日常的な夢、追われる夢など17のカテゴリに分類された。夢の中でもっともよく経験される感情は「驚き」であり、「恐れ」と「喜び」がそれに次いで多かった。夢の内容のカテゴリを独立変数とする1要因分散分析を日常場面における怒りの感情の程度に対して行ったところ、報告された夢の内容による日常場面での怒りの程度に統計的に有意な違いは認められなかった。
著者
水戸 博道
出版者
明治学院大学心理学部
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.69-80, 2017-03-08

本研究は、移調楽器の学習者がどのように音楽的音高の言語的符号化をおこなっているか、その多様性に注目し、実態を明らかにした。調査は符号化の多様な事例を明確にしていくことを目的とし、10名の移調楽器学習者が、実際の音楽活動の場で、どのように音高の符号化をおこなっているのかを、インタビューと歌唱テストによって調査した。また、異なる符号化の事例が、絶対音感などの音感とどのような関係にあるのかを検討するために、すべての参加者に絶対音感テストを実施し、その成績と符号化の方略の関連に関しても、個別に考察していった。考察の結果、ほとんどの参加者は、なんらかの形で音高の符号化をおこなっているが、音感の違いや演奏する楽器によって、符号化の運用の方略は同一ではないことが浮かび上がった。非常に正確な絶対音感をもっている者は、移調楽器を演奏する時でも、移調譜に基づいて音高を符号化して聴くことが難しいことがわかった。一方で、絶対音感をもっていない者に加え、ある程度の絶対音感をもっている者は、移調譜の音名で符号化ができている参加者もいることがわかった。これらの結果より、音高の符号化は、必ずしも絶対音感などに縛られたものではなく、複数の符号化システムを併用していくことも可能であることが示唆された。