著者
Konaga Shunji Nishiyama Katsunobu
出版者
気象研究所研究報告
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.151-156, 1978
被引用文献数
1

1977年7月上旬に神戸海洋気象台春風丸により,切離冷水塊の中で2つの非常に興味ある現象が観測された(上平悦朗ほか(1978)).(1)は切離冷水塊の周辺部に環状に表面塩分の低い海域が存在していることおよび(2).冷水塊の中心のすぐそばに,周囲に比して異常に高温な観測点が存在していることである.前者は梅雨前線による降水が海山と渦の相互作用で環状に収束したものであり,後者は異常高温の大部分がXBTプローブの不良に帰せられるにしても,場所的に見て,テーラー柱の発生の可能性がある.<BR>また黒潮と切離冷水塊の挙動を第2紀南海山の位置から見て,切離冷水塊の発生から消滅まで第2紀南海山の影響を強く受げていたことが予想される.将来観測により確認する必要がある.
著者
Magata Mitsuo
出版者
気象研究所研究報告
雑誌
気象研究所研究報告 (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-110, 1969
被引用文献数
2

山越気流の理論としては,風下波動に関する線型理論跳水現象に関する水力学的理論等があるが,最近では数値実験による研究が行われるようになった。筆者等は富士山の雲の写真観測によって,気流の変形の状態を推論してきたが,富士山の雲を大局的に分類すると,笠雲,つるし雲,旗雲,jump状雲,その他になるが,これらの雲の成因を数値実験によって研究するのが,この論文の目的である。笠雲,つるし雲は風下波動の理論によってある程度説明できるが,その色々の変形については複雑で,なお不明の点が多い。冬季北西季節風の時に現われる旗雲,暖湿な南西気流によって起るjump状雲については線型理論によって説明することは困難で,この論文では,地表面からの加熱,冷却の効果を入れた数値実験によって説明することを試みた。すなわち,寒冷な北西気流が日射による山肌からの加熱蒸発効果によって旗雲が形成され,また,暖湿な南西気流が地表からの冷却によって斜面を急降下する流れを生じ,それがjump状の雲を形成するようになると推論した。ここで使用した数値モデルは2層モデルで,垂直構造については不充分であり,なお改善の余地が残されている。