著者
野村 浩子 川﨑 昌 Hiroko Nomura Sho Kawasaki
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-24, 2019

我が国では、女性管理職登用において先進国のなかで大きな後れをとっている。先進諸国の多くが3割を超えるのに対し、日本の女性管理職比率は2017年度時点で11.5%にとどまる。女性管理職育成を進める企業がぶつかる壁として、ジェンダー・バイアスが指摘されている。そこで、本研究では、組織リーダーに望まれるものと、成人男性・女性に望まれるものの関係を探ることで、ジェンダー・バイアスが女性管理職登用に与える影響を探る。大手企業25社に勤める2527名から得たアンケート回答を分析した結果、組織リーダーは望ましさの程度が似ている男性向きで、女性にはふさわしくないというジェンダー・バイアスが存在することが示唆された。さらに、ジェンダー・バイアスは、男性に比べ女性回答者により強い傾向がみられた。こうしたジェンダー・バイアスにより、女性が管理職になることをためらう、また組織内でも女性は登用にふさわしくないとみなされる可能性がある。
著者
伊藤 孝一 Koichi Ito
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.3, pp.85-96, 2018

日本のテレビ放送が始まって64年が経ち、テレビはメディア・コミュニケーションの中心的な役割を担い、人々に大きな影響を与えてきた。テレビ番組のなかで、報道やスポーツとならぶ大きな存在であり、大衆文化を先導してきたのがドラマである。今日、インターネットやスマートフォンの普及によるデジタルネットワーク社会の進展やオーディエンスの視聴環境がドラマの企画や表現の創造性="クリエイティビティ"に大きな影響を及ぼしていると思われる。ドラマは「時代を映す鏡」といわれて久しいが、時代とドラマの創造性="クリエイティビティ"との関係に視点をおき、現在のテレビドラマにおけるクリエイティビティを考察する。
著者
伊藤 孝一 Koichi Ito
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.4, pp.109-118, 2019

日本のテレビ放送が始まって65年。テレビはメディア・コミュニケーションの中心的な役割を担い、人々に大きな影響を与えてきた。テレビ番組の中で、報道やスポーツとならぶ大きな存在であり、大衆文化を先導してきたのがドラマである。「生ドラマ」と呼ばれる生放送から始まり、VTR機器類の進化、山田太一・向田邦子・倉本聰という「シナリオライター御三家」やこの後の有能なシナリオライターの登場により、テレビドラマはエンタテインメントを担うコンテンツとして大きく進展してきた。しかし、この数年、「俳優が出演を拒否する」「視聴率が取れない」「バラエティ番組枠に変更する」などという声が聞かれ、テレビドラマは不振と言われている。ドラマは「時代を映す鏡」といわれて久しいが、いま醸し出されている人々の意識、あるいは時代の空気感とドラマの創造性="クリエイティビティ"との関係に視点をおいて、現在のテレビドラマにおけるクリエイティビティについて論じる。
著者
野村 浩子 Hiroko Nomura
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.3, pp.15-27, 2018

2016年、アメリカ大統領選をきっかけにフェイクニュースの拡散が社会問題となっている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及により、瞬時に偽情報が拡散されるようになったことが背景にある。メディア環境が大きく変わるなか、改めて大学においてメディアリテラシー教育を行う必要性が高まっている。SNSにより偽情報が広まる仕組みを知ること、また無意識のうちに自分にとって心地よい情報ばかりに囲まれている怖れがあることに気付きを促すことが大切である。そこでSNS時代のメディア理論を身につけたのちに、新聞を用いてニュースを読み解くリテラシーを高める教育を実践した。他メディアに比べ真偽チェックが厳しく行われる新聞を用いての学習が、ネット時代においても今なお有効であることがわかった。
著者
田中 則広 Norihiro Tanaka
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.5, pp.27-39, 2020

植民地統治期の朝鮮における最大の民族運動である「3・1独立運動」から100年目を迎えた2019年、日本と韓国、および、日本と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、歴史認識をめぐって対立し、解消の兆しの見えない状況が続く。こうした中、本稿では歴史認識をめぐる捉え方の差異を検証する一環として、日本、韓国、北朝鮮の各国で放送されたテレビニュースを中心に、内容の比較・分析を試みた。その結果、3・1独立運動に対する報道姿勢について、それぞれの国において顕著な特徴のあることが明らかになった。
著者
田中 洋平 Yohei Tanaka
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.4, pp.97-108, 2019

本論では中等教育段階における歴史教育と歴史学研究の結節を企図し、高等学校で使用されている日本史教科書の記述について、歴史学的知見からこれに検討を加えた。具体的には、近世宗教史分野の研究成果を整理するとともに、これに新たな研究知見を付与したうえで教科書の記述を再検討している。ここでは、これまでの研究史及び『肥後藩人畜改帳』の分析から、寺檀制度の成立に照応させつつ、それを担う寺院が建立されたことを確認し、にもかかわらず、そうした寺院がどの段階で造営されていったかという点について、教科書中には記述がないことを指摘した。併せて近世宗教史研究のうえで長らく議論されてきた「近世仏教堕落論」についても、これを教科書に記載したうえで、歴史事象に関する生徒間の討論を深化させるための素材とすることができる可能性について言及した。
著者
西川 和孝 Kazutaka Nishikawa
出版者
淑徳大学人文学部紀要委員会
雑誌
研究論集 (ISSN:21895791)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-54, 2017

本稿では、従来、等閑視されてきた中国のアヘン輸出の歴史的意義の解明を目指し、その基礎的作業として中国のアヘン生産と輸出の拠点として重要な役割を果たした雲南に焦点を当て、清朝末期における東南アジアに繋がるアヘン交易の実態に迫る。そこで、雲南におけるアヘンの輸出ルートである、東南アジアに直結する①紅河沿いルート②思茅ルート③騰越ルートと、外省を経由する④広西省龍州ルート⑤広東省北海ルートについて各々の経路と輸出量の検討分析を行い、以下の点を指摘する。即ち、まず、仏領インドシナとのアヘン取引の解禁に伴い、輸出ルートは、外省経由から紅河沿いルートに収斂されていったこと。次に人口が密集するトンキン・アンナンを中心に、低価格を武器にインド産アヘンとの市場競争を有利に進め、急速に普及したこと。そして、最後に、こうしたアヘンの輸出量増加は、雲南の輸入をも下支えすることとなり、結果的に世界経済との結びつきを深化させていった点である。