著者
増岡 秀次 森 満 野村 直弘 桜井 美紀 吉田 佳代 岩渕 由希子 青木 典子 白井 秀明 下川原 出 浅石 和昭
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.63-68, 2006-03-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

日本女性の乳癌死を減少させるために, 症例対照研究によるリスク因子解析により検診推奨者を選定した。当院で手術を施行した原発乳癌2,103例を症例とし, 当院受診者で受診時乳腺疾患のない3,131例を対照とした。解析結果より, 次のとおり検診推奨者を選定した。 (1) 35歳以下のhigh risk group : 1.初潮が11歳以下と早い者, 2.良性乳腺疾患の既往がある者, 3.癌の既往がある者, (2) 閉経前 : 1.初潮が早い者, 特に11歳以下の者, 2.肥満度 (BMI) が18.5未満と痩せの者, 3.既婚者で未産の者, 4.出産しても授乳をしていない者, 5.独身者, 6.第1度近親者あるいは第2度近親者に乳癌の家族歴のある者, (3) 閉経後 : 1.肥満度 (BMI) が18.5未満と痩せの者および25.0以上の肥満の者, 2.体重が58kg以上の者, 3.既婚者で未産の者, 4.出産しても授乳をしていない者, 5.独身者検診は癌の発生の予防ではなく, 早期発見により癌による死亡を減少させるためのものである。厚生労働省は「健康日本21」において, 2010年の受診率目標を1997年の50%増の約39%を掲げている。しかし目標が達成されたとしても対象者の半分以上が依然として検診を受けていない状況になっている。以上を踏まえ, われわれは症例対照研究によりリスク要因を特定し, 効率のよい検診を進めるため検診推奨者を選定した。
著者
馬場 紀行 福田 光枝
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.42-47, 2017

平成25年(2013年)がん登録等の推進に関する法律の成立により,がん診療に従事する施設に対して全国がん登録が義務化され,2016年度に新たに診断された患者さんから登録が始められている。登録は主として治療を行った施設によってなされているために,発見されたきっかけが検診であった患者さんについては発見に最も寄与した検診施設の功績が反映されない可能性がある。26の登録項目の中には発見経緯として「がん検診・健診診断・人間ドック」があり,検診施設が登録に関与する余地がある。登録は早い者勝ちである一面があるので,検診施設が登録に参加するチャンスは大いにある。登録協力施設は公的な保健,衛生関係のHP に掲載される可能性があり,多くの民間人やメディアの眼に触れる機会がある。施設の知名度や検診精度をアピールする上でも全国がん登録に参加するべきであると考える。そのためには全国がん登録の項目について知っておくこと,より確実に登録票が受理されるために可能であれば細胞診ないし針生検を行うことが望ましい。今年度から登録データはオンライン提出される方針となっている。
著者
雷 哲明 相良 安昭 大井 恭代 久木田 妙子 田口 稔基 相良 吉昭 玉田 修吾 馬場 信一 松山 義人 安藤 充嶽 相良 吉厚
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.31-36, 2008-03-30 (Released:2009-03-19)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2000年4月より20007年3月までの7年間に手術された乳癌のうち術前MMG(二方向)かつUS検査した2,641例(全乳癌)をretrospectiveに分析し,MMGに異常所見がなくUS検査が発見の契機となった乳癌(US乳癌)の特徴を全乳癌と比較し,US検診の可能性を探った。US乳癌は202例であり,全乳癌の7.6%であった。年齢層別にみると全乳癌と比較してUS乳癌は30歳代(11.9% vs 7.5%)と40歳代(39.1% vs 26.2%)に多く,50歳代では差がなく,60歳代70歳代では少なかった。全乳癌のうち非浸潤性乳管癌が占める割合は12.4%に対し,US乳癌では32.7%であった。浸潤癌のうち各組織亜型別の割合をみてみると,通常型のうち乳頭腺管癌,硬癌では差がなく,US乳癌では充実腺管癌が少なかった(21.5% vs 8.4%)。病理組織学的な浸潤径を測定した症例でみると,浸潤径が1cm以下の症例では全乳癌は17.3%に対しUS乳癌は32.8%であり,DCISとT1を含めると全乳癌は60.0%に対しUS乳癌は88.9%であった。以上よりMMGでは異常所見がないUS乳癌は若年者,非浸潤癌と腫瘍径が小さい浸潤癌が多かった。40歳代以下の若年者,高濃度乳房の早期乳癌発見のためにはUS併用は不可欠であり,集団検診におけるUSの導入には早急に費用対効果の検討が必要と思われた。