著者
高橋 哲郎
出版者
精華女子短期大学
雑誌
精華女子短期大学研究紀要 (ISSN:13495453)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.17-26, 2005-03-31

不登校の問題は, 小学校・中学校・高等学校・大学と進級するにつれ顕著な不適応行動として表れ, 職場でも出張拒否となって表れる現象で個人的な原因に加え, 学校でのちょっとしたことが, 引き金になって表れる。その特徴として, 低学年では分類不安が多く, 本人は緊張して家庭から出られない。高学年になるにつれ, 理由づけがなされ, 中・高では「学校など意味がない」など批判的言動も述べられる。共通の身体的訴え (頭痛, 腹痛, 嘔吐感)や朝のけだるさ, 抑うつ感が多くなる。第2の特徴として, 知的能力は低くなく, むしろ成績上位の場合が多くある。第3の特徴として, 家庭の社会的・経済的地位が低くなく中流以上が多い。第4の特徴は両親の精神的安定感が低い。父母の役割が不明確で不安定, ことに父親の未成熟, 母親の神経症的支配性・干渉性が共通に見られる。その点心理援助として次のようなことが考えられる。 1. スクールカウンセラー及び精神科医と連携し, 本人の内的な緊張感, 不安感, 挫折感をおびやかすような場合を極力避けること。 2. 家庭においては, 親の子どもへの期待感が子どもに強い不安を喚起することがあるので過剰な期待をしないこと 3. 現実の体験学習を繰り返し, 自分の目標を再構成すること。不登校の発生過程を振り返り, 家庭内での開設されている情緒障害児短期治療施設を利用することも効果が期待される。児童・生徒中心の心の琴線に触れながら精神的サポート体制の試行が継続され維持・発展されることが肝要である。
著者
芝木 儀夫
出版者
精華女子短期大学
雑誌
精華女子短期大学研究紀要 (ISSN:13495453)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.47-54, 2008-03

印刷術の発明は、文字の発明や電気通信とともに情報革命ともいえ、大量に情報を複製する技術である。グーテンベルグは活字印刷の創始者として有名である。本論で紹介するクリストファー・プランタンは、創意あふれる出版活動と可読性の高い印刷技術により、メディアの事業を発展・成功させた。プランタンが活躍したのは、ベルギーのアントワープである。 16世紀の当時、当地はハプスブルグ家が支配するスペイン領ネーデルランドとよばれていた。そして、スペインによる経済的圧政や宗教弾圧などに抗議して、ネーデルランド独立運動が繰り広げられていた。大航海時代の本格的な到来により、アントワープは産業や貿易、印刷業の中心地になっていた。プランタンは、はじめ革細工や製本の職人を目指したが、暴漢に襲われて大けがをしてから印刷業に転じた。その後、高度な技術力と幅広い人脈で事業を拡大していき、1575年の最盛期には20台以上の印刷機と約80人の職人を雇っていた。これは当時の印刷業として異例の規模であった。彼は印刷出版で名を成した後、たびたび宗教上の異端審問に付された。しかし、そのたびに友人の支援により一時避難をしたり、自らの努力で支配者に対峙したりしてその危機を乗り越えた。その過程で、「多言語対訳聖書(ポリグロット・バイブル)」という画期的な印刷物を生み出した。プランタンの人生は、まさにその商標に謳われる銘句「努力と堅忍不抜」で語られる。プランタンの最後の工房及び住居は現在、「プランタン・モレトゥス博物館」としてアントワープで一般に公開されている。
著者
佐藤 慶治
出版者
精華女子短期大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究2年目においては、「みんなのうた」初代チーフ・プロデューサーであった故後藤田純生氏に更に焦点を当て、国会図書館、後藤田氏遺族自宅での資料調査や論文執筆・学会発表を行った。また、申請書に記載していた六つの研究課題のうち、以下の二つの課題について掘り下げることができた。⑤「ゼッキーノ・ドーロ」の調査「みんなのうた」の楽曲には、1959年に始まったイタリアの児童音楽祭「ゼッキーノ・ドーロ」の入賞歌曲を原曲とするものが複数存在する。後藤田氏の資料より、後藤田氏が「ゼッキーノ・ドーロ」の楽曲を「みんなのうた」に輸入した経緯を検討し、また商業主義の強かった「ゼッキーノ・ドーロ」の楽曲が「みんなのうた」に入ることにより、その後のポピュラー路線につながる契機となったことを導き出した。⑥学校教育における楽曲使用の調査この課題については、まず保育現場や小学校で使用されている楽曲の実態を検討した。また「NHK番組アーカイブス学術利用トライアル」にも参加し、「ポピュラー性」をキーワードとして、特集番組等における「みんなのうた」各楽曲の使用頻度について調査を行い、各楽曲の認知度について分析を行った。また、5月3日に東京・晴海区民館で初期「みんなのうた」の関係者(当時のディレクター、演奏者、ファン会会員等)を招いての研究座談会を行った。これによって、1960年代の「みんなのうた」の制作背景や、当時の番組の受容についての情報を得ることができた。更に、9月17日に国際シンポジウム「近代の音と声のアーカイブズ」を熊本大学音楽学講座と共同開催した。そこで報告「戦後のNHK児童番組の資料保存についての現状と『みんなのうた』写真資料の発見」を行い、映像が失われてしまった1962年度版「大きな古時計」について、後藤田氏の資料よりセル画の写真資料を発掘したことと、再現映像を作成していることについての発表を行った。
著者
高橋 哲郎 元田 幸代
出版者
精華女子短期大学
雑誌
精華女子短期大学研究紀要 (ISSN:13495453)
巻号頁・発行日
no.31, pp.37-42, 2005-03
被引用文献数
1

卒業後, 現場での保育活動に適応してもらうためのプログラムの一つとして「実習指導IV」において, 卒業生へのアンケート調査結果を活用した試みを実施した。その内容から学生が「実習指導IV」で学びたいと思った10項目を選び出した。これらの項目について, 学外講師 (幼稚園園長先生), 教員, 実習助手, 学生の代表委員 (実習連絡協議会担当者) に担当を割り振り, 授業で実施した。アンケート結果を用いることにより, 就職後生じるであろう問題を身近に具体的に捉えさせることができた。さらに, 学生自身が現在の自分の状況を客観的に捉えて就職までに行っておくべき課題を見つけ, 課題を解決していこうとする意欲, そして, 就職後に問題が生じたとしても解決していこうとする意欲を喚起することができた。また, 学生の考察からこのプログラムの実施時期や内容のさらなる検討も必要であることがわかった。全国保育士養成協議会における専門委員会の研究報告との比較により, 卒業生が課題としてあげている内容は, 保育現場で時間をかけて行われている職務内容と保育者として専門性が要求される職務内容とがあることがわかった。今後は, プログラムの実施時期や内容をさらに検討していきたい。