著者
寺田 麻佑
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.51-62, 2017-11-08 (Released:2019-03-28)

本論考は、無線LAN利用に関する法規制のうち、無線LANを利用して何か法律に抵触する行為がなされた場合、無線LANの提供者が如何なる責任を負うべきかという問いに対して、参考となるEUの規制とドイツの事例を取り上げて、無線LANの利用に関する無線LAN提供者の責任の所在に関する検討を行うものである。無線LANの提供者の責任について検討を行うのは、無線LAN等を利用した何らかの法違反行為について、誰がその違反行為を行ったのかの追求が難しい場合が多く、それゆえ、責任の帰属先の特定が難しいという事態が生じるためである。公衆無線LANの増加にともなう公衆無線LANを利用した犯罪への対応については、我が国に限らずEUにおいても課題とされている。どのような形で公衆無線LANを提供すべきなのか、犯罪等に利用されることをできる限り予防するためにも、無線LAN一般に関する責任の在り方について、最安価損害回避者負担の考え方を取り入れている、EUの関連規制やドイツにおける議論などを参考とすることができる。本論考は、まず、無線LANが犯罪に利用された場合の我が国における刑事裁判の判例の一部をみることによって、実際に被害が発生していて問題の行為者が見つからない場合には無線LAN提供者に関して損害賠償責任が発生する可能性があることをみたうえで、ドイツにおける無線LAN提供者の責任に関する無線LAN利用規制と関連するドイツにおける無線LAN提供者の責任に関係するテレメディア法の法改正を検討している。さらに、EUの無線LANに関する政策をみることによって、目指されている無線LAN活用社会のなかでどのような提供者の責任の在り方が考えられるのかについて検討を行っている。