著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2022

刻々と変化するAIに関する規制の整備状況のなかでも、特に日本の法整備に影響を与え、かつ参考となるEUで進められるハードロー(法制度整備)的な枠組み構築の在り方の比較検討を進め、法規制や共同規制の在り方についても、国際共同研究を進めながら、一層の研究の深化を図る。特に、先進的かつ具体的な規制枠組みにつき、EUにおける先端技術にかかわる立法事例の積み重ねとともに、EUにみられる柔軟な調整機関・規制機関の設立の在り方、他国に影響を与える立法状況を、BREXITを含めた法的課題や影響が今後どのように変化していくのかという点を含めて注視し、比較検討したうえで、我が国への影響や課題について研究を行う。
著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
社会科学ジャーナル = The Journal of Social Science (ISSN:04542134)
巻号頁・発行日
no.86, pp.89-109, 2019-03-31

本稿は、従わなければならないのは人である統治者の決める法なのか、古来、慣習として信じられ、存在が認められてきた、神々の法としての法なのかという問題について、アンチゴーヌをどのように読み解くのかという問題から、神の法・人の法について考察をおこなうものである。 アンチゴーヌは、神々の掟(法)に基づき、国王が定めた国(人)の法に抵抗した。これは、国という権力、国王という権力に対抗した、ということができるかもしれない。 アンチゴーヌはこう語る。「法がどこからくるか、知っている人はいない。法は永久に続くもの。」 古代や中世との比較において現代社会の法をみるとき、その特色は、個人の尊厳と個人の尊重を中核とし、基本的人権の制度的保障体系が憲法や法律のなかに確立され、整備されていることだということである。 しかし、法は、だれが、どのように作ることができるのかということに関する答えはない。法律の内容は(とくに間接民主制を採用する社会においては)議会の「公開の」審議を通して討議されて確定されるべきであるが、現実の法制定過程をみてみると、審議は行われず、あらかじめ定められた、もしくは予定された通りに国会を通過していくものも多い。 また、法が社会状況に追いつかない問題も常に生じる。法と社会のずれの問題は、どの社会においても起こるが、日本においてもそうである。このような法と社会のずれの問題は、何を「法」と考えるのかという問題とつながっている。 そこで、本稿は、アンチゴーヌを主題としてそこから現れる神の法・人の法の相違について検討を加えたうえで、現代社会の法と社会、人の法と神の法の問題をアンチゴーヌがどのように解釈しているのかということを通して考察を行う。
著者
板倉 陽一郎 寺田 麻佑
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:21888647)
巻号頁・発行日
vol.2022-EIP-96, no.8, pp.1-6, 2022-06-02

欧州・米国間では,個人データの移転のために,欧州の十分性認定制度を前提としつつも,セーフハーバースキーム,プライバシーシールドが採用されてきたが,それぞれ,欧州司法裁判所によって無効とされてきた(SchremsI,SchremsII).プライバシーシールドに対する十分性認定が無効となったのちの,欧米間の個人データ移転のための交渉は表面化していなかったが,2022 年に入り,新たな大西洋横断データプライバシー・フレームワーク(Trans-Atlantic Data Privacy Framework)が検討されていることが公表された.本発表では,同フレームワークについて,現状と課題を述べる.
著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
社会科学ジャーナル = The Journal of Social Science (ISSN:04542134)
巻号頁・発行日
no.86, pp.89-109, 2019-03-31

本稿は、従わなければならないのは人である統治者の決める法なのか、古来、慣習として信じられ、存在が認められてきた、神々の法としての法なのかという問題について、アンチゴーヌをどのように読み解くのかという問題から、神の法・人の法について考察をおこなうものである。 アンチゴーヌは、神々の掟(法)に基づき、国王が定めた国(人)の法に抵抗した。これは、国という権力、国王という権力に対抗した、ということができるかもしれない。 アンチゴーヌはこう語る。「法がどこからくるか、知っている人はいない。法は永久に続くもの。」 古代や中世との比較において現代社会の法をみるとき、その特色は、個人の尊厳と個人の尊重を中核とし、基本的人権の制度的保障体系が憲法や法律のなかに確立され、整備されていることだということである。 しかし、法は、だれが、どのように作ることができるのかということに関する答えはない。法律の内容は(とくに間接民主制を採用する社会においては)議会の「公開の」審議を通して討議されて確定されるべきであるが、現実の法制定過程をみてみると、審議は行われず、あらかじめ定められた、もしくは予定された通りに国会を通過していくものも多い。 また、法が社会状況に追いつかない問題も常に生じる。法と社会のずれの問題は、どの社会においても起こるが、日本においてもそうである。このような法と社会のずれの問題は、何を「法」と考えるのかという問題とつながっている。 そこで、本稿は、アンチゴーヌを主題としてそこから現れる神の法・人の法の相違について検討を加えたうえで、現代社会の法と社会、人の法と神の法の問題をアンチゴーヌがどのように解釈しているのかということを通して考察を行う。
著者
板倉 陽一郎 寺田 麻佑
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:21888647)
巻号頁・発行日
vol.2016-EIP-71, no.2, pp.1-6, 2016-02-12

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 (平成 25 年法律第 27 号) においては特定個人情報の提供が制限されている (法 19 条柱書).番号利用法は行政法規の一種であるため,本条項の違反において主観面は問題にならないことが原則であるが,特定個人情報には個人番号それ自体が含まれるとされており,文字通り解釈すれば,ランダムな 12 桁の数字を述べるだけでも違法になり,12 桁の数字をすべて読み上げると膨大な違法行為をすることになる.そのような解釈はあまりにも現実離れしたものであるが,主観面の要件がない中で,どこまで違法性に制限を設けることが出来るか,考察する.
著者
板倉 陽一郎 寺田 麻佑
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2015-DPS-164, no.1, pp.1-7, 2015-09-03

長年,個人情報保護法はクラウド・コンピューティングの利用が個人情報の取扱いの委託に該当するかという問題について目を背けてきたが,マイナンバー法の本格施行,改正個人情報保護法における越境移転制限・記録義務の導入により正面からの議論が必要となってきた.本稿ではこれまでの議論・学説を整理するとともに,可能な限り諸外国での議論についても触れる.
著者
寺田 麻佑
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.51-62, 2017-11-08 (Released:2019-03-28)

本論考は、無線LAN利用に関する法規制のうち、無線LANを利用して何か法律に抵触する行為がなされた場合、無線LANの提供者が如何なる責任を負うべきかという問いに対して、参考となるEUの規制とドイツの事例を取り上げて、無線LANの利用に関する無線LAN提供者の責任の所在に関する検討を行うものである。無線LANの提供者の責任について検討を行うのは、無線LAN等を利用した何らかの法違反行為について、誰がその違反行為を行ったのかの追求が難しい場合が多く、それゆえ、責任の帰属先の特定が難しいという事態が生じるためである。公衆無線LANの増加にともなう公衆無線LANを利用した犯罪への対応については、我が国に限らずEUにおいても課題とされている。どのような形で公衆無線LANを提供すべきなのか、犯罪等に利用されることをできる限り予防するためにも、無線LAN一般に関する責任の在り方について、最安価損害回避者負担の考え方を取り入れている、EUの関連規制やドイツにおける議論などを参考とすることができる。本論考は、まず、無線LANが犯罪に利用された場合の我が国における刑事裁判の判例の一部をみることによって、実際に被害が発生していて問題の行為者が見つからない場合には無線LAN提供者に関して損害賠償責任が発生する可能性があることをみたうえで、ドイツにおける無線LAN提供者の責任に関する無線LAN利用規制と関連するドイツにおける無線LAN提供者の責任に関係するテレメディア法の法改正を検討している。さらに、EUの無線LANに関する政策をみることによって、目指されている無線LAN活用社会のなかでどのような提供者の責任の在り方が考えられるのかについて検討を行っている。
著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
社会科学ジャーナル = The Journal of Social Science (ISSN:04542134)
巻号頁・発行日
no.82, pp.47-71, 2016-09-30

Privatization generally means the transfer of ownership or business fromthe governmental organization to the private company and there are manymethods to exercise ‘privatization’.We have to think carefully and deeply on the methods of privatizationalong with the risk and the ways of responsibility that the government andlocal governments should take. It is because methods of privatization are thekey to think of the ways, fields and frameworks of providing services by thecentral and local governments.This paper takes up airport privatization among many fields whereprivatization becomes an issue. After looking at several countries’ privatizationsituations of airports from a viewpoint of legal system (mainly Japan, the U.S.,the U.K. and Germany), it considers the nature of the system and ways ofpreferable controlling of the airports.Currently in 2016, privatization of airports is progressing in Japan. Forexample, privatization of Kansai International Airport and Itami Airportwas carried out and they are operated as privatized airports from this April.Plus, Sendai Airport has also been privatized early this year and the newcompany which was founded by the new management rights holder is goingto run the airport from this June. In addition to above, there are many otherconsiderations of privatization are currently done for other airports.Therefore, this paper looks at the methods and risk of privatization ofairports. In particular, what kind of approaches are adopted as methods ofprivatization of airports, what kind of legal risks the methods would holdare to be considered by comparing other countries’ methods and cases ofprivatization of airports. Then the indication for future consideration on thelegal methods and risks of privatization of airports of Japan and other countriesare compared and basis for future consideration will be examined.This paper first introduces the methods to privatize the airports andconsider the ways of privatization of airports. Then this paper will look at theactual cases of other countries where privatization of the airport actually wassuccessful and not successful. Finally, this paper considers and analyzes therisk of the governments how they should take the responsibility to guaranteethe outcome or service by thinking of the methods of the privatization ofairports which currently is also progressing in Japan on the comparison of thelegal systems of that of other countries.
著者
寺田 麻佑
出版者
国際基督教大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

わが国における情報通信分野における規制機関と規制手法の在り方につき、わが国において情報通信法制度を巡る様々な法改正の動きを前提として、活発な法律上の議論が行われた状況を踏まえつつ、学問的な議論を米国法との比較法的に深めた。情報通信分野における規制機関に関する議論は、米国に強い影響を受けた委員会制度の導入とその後の廃止等にかかる議論と密接不可分な関係を有している。現在の制度のまま独立性を高めた情報通信分野における規制機関の再検討を行うには、透明性の確保の問題以外にも、独立規制機関の設置に係る憲法上の問題点も慎重に検討する必要がある。
著者
高橋 滋 岡森 識晃 小舟 賢 寺田 麻佑 ヨアヒム ザンデン
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

憲法における環境関連規定の在り方につき、わが国において憲法改正の動きも前提として活発な法律上の議論が行われ、さらにそれらの議論が沈静化した現状を踏まえつつ、学問的議論を比較法的に深めた。特にドイツ、フランス、その他EU諸国並びにアメリカにおける環境権規定及びこれに関する議論を詳しく分析し、その結果、環境保護について憲法的価値を認めるとしても現実には多くの限界があり、環境意識、環境保護に資する特別な訴訟制度の充実等が必要であることが確認された。