- 著者
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本図 竹司
- 出版者
- 茨城県農業総合センター園芸研究所
- 雑誌
- 茨城県農業総合センター園芸研究所特別研究報告
- 巻号頁・発行日
- no.1, pp.1-70, 2001-03
- 被引用文献数
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5~8℃の低温の後作用を利用した、実際栽培での低温処理法の改善について検討した。オランダ産の'エレガンス'球茎を早期に入手し、5~10℃湿潤の低温処理を行って8月下旬に定植すると、10℃よりも8℃の処理で、これまで不可能であった9月末に高品質の切り花が得られた。一方、5℃では出荷が10月中旬とやや遅れるが、8℃よりさらに高品質の切り花を出荷することが可能であった。また、'アラジン'と'シンデレラ'では、10℃に比べ8℃で葉の軟弱化による垂れや花茎の曲がりの発生が少なくり、切り花の商品性を向上させることができた。 'ブルーヘブン'を用い、従来の10℃湿潤の低温処理を行う前、あるいは行った後に5~8℃湿潤条件で3~5週間置いたところ、開花が早まるとともに高温障害の発生を抑制することができた。その際、低温処理の初期に5~8℃においた場合に効果がより高かった。 低温の後作用を簡便に利用するため、さらに低温処理中の芽の伸びを抑えるために、10℃乾燥での低温処理の利用について'エレガンス'を用い検討したところ、湿潤状態での10℃低温処理を行う前に乾燥状態での10℃低温処理を加えると、開花が早まるとともに低温処理中の芽の伸びが抑えられ、作業効率を高められることがわかった。 実際栽培で懸念されている低温処理中の最高・最低温度の較差については、花芽形成適温域をはずれる時間が長くなければ影響がないことがわかった。 近年発表された高温開花性品種を用いることは、低温処理期間の短縮、および従来の品種では開花できない高温条件での開花が可能となり、高温期生産に有用と認められた。