著者
札 周平 佐藤 信輔 林 可奈子 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.85-91, 2022-12-01 (Released:2023-06-19)
参考文献数
11

根深ネギのネギハモグリバエ B 系統を対象に茨城県の主要産地で普及しているチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤について,現地秋冬どりネギ栽培圃場で慣行防除に加え,梅雨入り時,または梅雨明け後にそれぞれ株元散布を行った。粒剤処理後の捕殺数および被害度により,防除効果を評価した結果,8 月中旬の第 1 発生ピーク時には両処理時期ともに無処理区よりも捕獲数,被害度が少なく推移したが,収穫直前の 9 月下旬の第 2 発生ピーク時では,すべての試験区で第 1 発生ピークを上回る捕殺数,被害度が確認された。また,供試したチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤について,ネギハモグリバエの防除により寄与している成分を明らかにするため,茨城県農業総合センター園芸研究所内圃場でチアメトキサム粒剤,シアントラニリプロール粒剤と比較したところ,チアメトキサム粒剤はチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤と同等の効果があることが認められた。さらに,チアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤よりも安価で,同等以上の効果が期待できる粒剤を検討するために,ネギのネギハモグリバエまたはハモグリバエ類に登録のある各種粒剤(クロチアニジン粒剤,ニテンピラム粒剤,ジノテフラン粒剤,シアントラニリプロール粒剤,チアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤)について比較試験を行った。その結果,ジノテフラン粒剤で最も高い効果が確認され,低コストかつ使用成分回数の削減につながると考えられた。
著者
小西 博郷 小河原 孝司 島本 桂介 冨田 恭範
出版者
茨城県農業総合センター園芸研究所
巻号頁・発行日
no.17, pp.43-46, 2010 (Released:2011-07-26)

温湯をイチゴ苗上に散布することによる病害防除の可能性について検討した。炭疽病菌の接種前または接種後に温湯を散布することでイチゴの葉における炭疽病の病斑数は無処理区と比較して共に減少し、灰色かび病についても同様の傾向が認められた。温湯散布条件としては、炭疽病菌および灰色かび病菌接種前後で散布時間を30秒間に設定した場合は40℃以上で、温度を50℃に設定した場合は散布時間10秒間以上で効果があり、温湯散布の効果には温度依存的および時間依存的な傾向が見られた。また、45℃、30秒間の温湯散布ではイチゴ苗に熱害の影響は見られなかった。以上より、温湯散布にはイチゴの炭疽病および灰色かび病に対する予防効果および発病進展抑制効果の両方があると考えられ、イチゴ栽培における温湯散布実用化への可能性が示唆された。
著者
小河原 孝司 冨田 恭範 田中 有子 長塚 久
出版者
茨城県農業総合センター園芸研究所
巻号頁・発行日
no.14, pp.35-42, 2006 (Released:2011-03-05)

茨城県内現地におけるトマト灰色かび病の発生実態と防除対策について調査し、BS剤の防除効果を最大限に発揮させるための温度条件並びにその防除効果の持続期間について検討した。また、BS剤を組み入れた防除体系の有効性について検討した。1.トマト促成栽培における殺菌剤散布は、主に灰色かび病防除が目的であり、本病が主要病害であった。2.トマト灰色かび病に対するBS剤の防除効果は、気温15℃以下では低く、20-25℃において高かった。3.灰色かび病多発生条件下において、BS剤は、メパニピリム水和剤と比較し、薬剤散布18日後までほぼ同等の防除効果が認められた。4.BS剤を防除体系の中に組み入れ、発病葉除去等の耕種的防除を徹底し、化学合成殺菌剤の散布回数を3割程度削減した場合、生育後半の葉における灰色かび病の発生はやや増加したが、果実では十分な防除効果が認められた。
著者
藤永 真史 小林 久茂 小松 和彦 小木曽 秀紀 上原 敬義 小野 佳枝 冨田 恭範 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.52, pp.25-29, 2005-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

長野県のセルリー栽培において最も問題である病害は, 連作によって引き起こされる難防除土壌病害の萎黄病である。これまでは, 化学合成薬剤である土壌くん蒸剤によって恒常的に防除を実施してきたが, 現状, 生産農家からは環境に負荷をかけない防除法の開発が強く要望されている。そこで, セルリー萎黄病防除対策として, 家庭用小型ボイラーを利用した簡易型熱散水殺菌装置による熱水土壌消毒法の有効性を検証した。その結果, 本法はセルリー萎黄病に対し高い防除効果を示すとともに, セルリー萎黄病菌密度は収穫時まで低く維持され, さらに, アスター萎凋病菌, カーネーション萎凋病菌, トルコギキョウ立枯病菌に対しても, 十分な殺菌効果が認められた。これらの作物は施設花き生産の基幹品目であることから, 今後の普及適応拡大に有望と判断される。
著者
小河原 孝司 冨田 恭範 西 和文 西宮 聡 窪田 耕一
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.35-39, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

メロンつる割病レース1が前作で多発生した現地のビニルハウスにおいて, 熱水土壌消毒の防除効果およびその持続効果について検討した。サブソイラーを用いて深さ50cm程度まで耕私後, 2003年6月中旬に熱水土壌消毒装置を用いて約200L/m2の熱水を処理し, 約1週間放置した。処理期間中の最高地温は, 深さ30cm位置で64.7~92.9℃と, 高温を維持した。熱水処理前に深さ30cmまでの土壌から Fusarium 属菌が検出されたが, 処理後には深さ10cmで未検出, 深さ30cmでは菌密度が低下した。7月中旬にメロン品種「アールス雅春秋系」を定植したところ, 収穫時における発病株率は0~0.5%と, 高い防除効果が認められた。その後, 土壌消毒を行わず, 2003年12月下旬にメロン品種「オトメ」を定植したところ, 2月中旬 (交配期) には発病株率が37%と高くなった。生物検定法により, ハウス内土壌のつる割病菌の汚染程度を調査したところ, ハウス全体に菌が蔓延していた。