- 著者
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岩田 益
内田 信
- 出版者
- 農林省蠶絲試驗場
- 雑誌
- 蚕糸試験場彙報 (ISSN:03853594)
- 巻号頁・発行日
- no.122, pp.p43-54, 1984-10
夏切後,夏肥と追肥の施肥割合(春4:3:3また春4:5:1)および収穫形式(初秋中間伐採,初秋,晩々秋伐採,晩秋70cmおよび90cm中間伐採)を組合せ,一ノ瀬とみなみさかりの2品種を用い植付3年目から3か年試験を行い,枝条の生長と収量に及ぼす影響を検討した。なお肥料は10a当たり窒素30kgを化成肥料(16-10-14)で,稲わら500kgを土中堆肥で施用した。大要は次のとおりである。1.収穫当日における最長枝長,枝条数は夏肥と追肥の施用量による影響は認められなかった。初秋,晩秋期の最長枝長は一ノ瀬が長く,枝条数はみなみさかりがやや多く再発枝も多かった。2.冬期の先枯れ割合は一ノ瀬では3~5%にすぎなかったか,みなみさかりの再発枝では18~21%と顕著であった。両品種とも晩秋70cm中間伐採は90cmに比べ母条の枯れ込みが多かった。3.3か年平均収量は一ノ瀬では初秋中間伐採が10a当たり2,400~2,500kgと最も多く,みなみさかりでは晩秋90cm中間伐採が2,670~2,780kgと最も多く,施肥割合の影響は認められなかった。秋期収量は両品種で差がなく,一ノ瀬は春期に縮葉細菌病のため減収し年合計も減少した。4.蚕期別収量割合は両品種を通じ,初秋中間伐採では秋期と春期の比は3:7,初秋,晩々秋伐採および晩秋中間伐採では5:5または4:6と秋期の割合が増加した。5.年間10a当たり2,500kg以上の収量(収繭量約120kg)は慣行栽培で達成されたが,収量が逓減する傾向にあり,収量を安定するためには窒素30kg/10a相当の化学肥料の外に1t以上の堆肥を投入する必要があるものと考えられる。