著者
平塚聖一
出版者
静岡県水産試験場
雑誌
静岡県水産試験場研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Prefectural Fisheries Experiment Station (ISSN:03863484)
巻号頁・発行日
no.33, pp.5-10, 1998-03
被引用文献数
2

現在までほとんど行われていなかったうなぎの生鮮流通の可能性を調べるため、「開き」の冷蔵中の鮮度変化と貯蔵条件の異なる「開き」から得た白焼の品質を調査し、以下の結果を得た。 1)うなぎの「開き」を2℃で貯蔵したところ、3日後にはK値が30%を越えたが、VBN、POV及びAVに大きな上昇は見られず、また、官能的にも大きな変化は認められなかった。 2)うなぎの「開き」をControl(貯蔵期間なし)、2℃で貯蔵及び凍結(-40℃)貯蔵した白焼の形状を比較したところ、Control、2℃1日貯蔵及び凍結して解凍せずにそのまま加熱したものは肉の盛り上がりが大きく、反対に2℃4日貯蔵と凍結解凍してから加熱したものは肉の盛り上がりが小さかった。 3)白焼の官能検査結果では、Controlが2℃2日貯蔵と2℃4日貯蔵よりも肉が硬かった。また、味・匂いはControlよりも2℃2日貯蔵と2℃4日貯蔵の方が好まれた。
著者
平塚 聖一 澤田 敏雄 長谷川 薫
出版者
静岡県水産試験場
巻号頁・発行日
no.35, pp.23-27, 2000 (Released:2011-03-05)

1991年から1996年までの6年間に、静岡水試の調査船が近海、東沖及び南方漁場において漁獲したカツオ41漁獲群、4,114尾について石ガツオの出現状況を調査し、以下の結果を得た。 1)41漁獲群中、87.8%に当たる36漁獲群において石ガツオの出現が見られた。また、1漁獲群当たりの石ガツオの出現率は0~16.8%であったが、群間で大きな差が認められた。 2)石ガツオは近海、東沖及び南方漁場のいずれの漁獲物においても出現した。また、漁獲後処理のうち水氷、ブライン凍結両方の貯蔵方法においても石ガツオの出現が確認された。 3)石ガツオは漁獲後の処理方法によって発生するのではなく、生存中からすでに存在している可能性が高いと考えられた。 4)石ガツオは一部の漁場において特異的に出現するのではなく、広範囲に亘る漁場で出現する可能性が高いと考えられた。
著者
長谷川雅俊
出版者
静岡県水産試験場
雑誌
静岡県水産試験場研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Prefectural Fisheries Experiment Station (ISSN:03863484)
巻号頁・発行日
no.38, pp.19-25, 2003-10
被引用文献数
25 32

カジメ移植試験の結果とサガラメ群落衰退の観察から榛南海域での磯焼けの持続要因を検討した。1)坂井平田沖で実施したカジメ移植試験では、夏から冬にかけて着生数の減少と葉部の消失が生じた。2)カジメ移植試験の夏から冬にかけての残存個体の葉部には弧状の欠損部がみられ、アイゴの採食痕と一致した。また、残存個体の形態もアイゴの食害にあったカジメの形状に一致したことや1999年8月にはアイゴがカジメを採食しているのを観察したことから、アイゴの食害が葉部消失の主因と考えられた。3)安定して維持されてきた御前崎ホテル前のサガラメ群落では1999年10月8日-11月5日の間に大半のサガラメ成体の葉部が消失した。4)残存したサガラメ個体の葉部の弧状の欠損部と門歯状歯の跡はアイゴの採食痕と一致した。5)当海域では磯焼けの持続にアイゴが関与しているのみならず、磯焼けが進行した海域で残された群落の衰退にもアイゴが深く関与していると推察された。
出版者
静岡県水産試験場
雑誌
静岡県水産試験場研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Prefectural Fisheries Experiment Station (ISSN:03863484)
巻号頁・発行日
no.38, pp.47-52, 2003-10

釜揚げしらす製造に深層水を用いて煮熟し、食塩水(対照区)、表層水を使用したものとの冷凍保存性(-13℃保存)について比較した結果、次のことが分かった。1)深層水、表層水は、対照区と比較して、冷凍保存による黄変化を防止する作用があった。2)対照区の黄変化は、少なくとも1か月で進行することが確認された。3)深層水は表層水より僅かに黄変化防止作用が強かった。4)対照区の釜揚げしらすの黄変化は、リン脂質画分の黄変化が主因であると推定された。5)深層水を煮熟水として、釜揚げしらす加工に普及できるものと考えられた。
出版者
静岡県水産試験場
雑誌
静岡県水産試験場研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Prefectural Fisheries Experiment Station (ISSN:03863484)
巻号頁・発行日
no.40, pp.53-59, 2005-12

浜名湖で2003年に発生したH.c赤潮について、発生状況および漁業被害を調査し、以下の結果を得た。1)H.c赤潮は9月9日にはみられなかったが9月29日には高密度で発生しており、9月中旬頃から発生したと考えられた。2)浜名湖に設定した7測点で、10月2日-12月22日の間調査を行ったところ、12月19日まで確認され、細胞密度は最高23070cells/mlに達した。3)調査期間中、出現密度が高かったのは主に浜名湖本湖北部水域であった。4)赤潮発見当初に高密度発生水域であった細江湖は、7測点のうち最も早く赤潮が終息し、降雨に伴う陸水流入による表層塩分の低下が影響したと考えられた。5)H.cは、海水交換率が低いと考えられ且つ大きな流入河川のない松見ヶ浦および猪鼻湖で長期間出現した。6)H.c.が高密度で出現したときの水温は18.1-23.4℃、塩分は23.50-31.47であった。7)Hcが原因とみられる貝類のへい死は、マガキ、アサリ大型貝、ツメタガイおよびウチヤマタマツバキガイに認められた。一方、アサリの稚貝や小型貝およびサキグロタマツメタガイではへい死はみられなかった。