著者
沢井 芳男 外間 安次 鳥羽 通久 川村 善治
出版者
(財)日本蛇族学術研究所
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究はヤマカガシ咬症の重症患者の治療血清の試作を行うためにヤマカガドウベルノイ腺から毒液を抽出し, ウサギ及びヤギを免役し, その血清を採集し, 硫酸ナトリウム, 硫酸アンモニウムによる分画及びペプシン消化法によってγ-グロブリンを分画精製し高力価の抗毒素を得た. その結果ウサギ抗毒素0.2mlは120μg(48mld)の毒量を中和した. またヤギ抗毒素0.1mlは220μg(73.3mld)の毒の致死を中和し, 216μg(47mhd)の毒の出血を抑えた. また抗凝固性は抗毒素0.05mlは119.3μg(108.5u)の毒による凝固を阻止した. また抗毒素の精製度については電気泳動の結果γ-グリブロンの単一のピークが得られた. しかし免疫電気泳動では抗ウサギγ-グロブリン(IgG)ヤギ血清に対し, ウサギ抗毒素は特異時的な反応帯が認められたが, 抗ウサギ血清に対してはγ-グロブリン以外の混入が認められた.なお本抗毒素にはさらに治療用毒素に必要な所定の検査を行い, 長期保存にたえるように凍結乾燥を行った. その間に発生したヤマカガシ咬症患者の重症例の治療に応用し, その治療効果を確かめることができた. すなわち本抗毒素は患者の出血性素因及び血液の凝固異常を速やかに回復し, 患者を治癒に導いた.
著者
鳥羽 通久
出版者
(財)日本蛇族学術研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

染色体の研究では、ビルマアオハブのように少し違ったW染色体を持つものはいたが、ヨロイハブのように形態がかなり異なるものでも、同じような核型を持ち、あまり差がでないので、これを使った分類は現状ではまだ難しい。そこで結局頭骨の形態を中心に、鱗表面の微細構造やオスの交尾器の構造などを加えて、系統を推定することにした。まずすべての点で最も他と異なっているのがヨロイハブで、外翼状骨-上顎骨の持続部の構造、毒牙、鱗表面の構造、鼻の小孔の位置など、ハブ類においては他に類縁を求めるものがない。マムシ亜科の中では最も原始的だと言われるマムシ属と比べても、際だった違いを見せることから、かなり初期に他のグループから別れて、独特の進化の道をたどったものと考えられる。インドシナからフィリピンまで広く分布し、現在1種とされているが、島によって色彩が大きく違っており、詳しい分類を行う必要がある。ヨロイハブ属におくのが妥当だろう。次にヒメハブ類が、少し違っており、いろんな点でマムシ属と他のハブ類との中間的な形態を見せる。これもヒメハブ属を設けるのに賛成である。次に問題になるのが、沖縄のハブを含むグループで、トカラハブ、サキシマハブ、タイワンハブが非常によく似ている。ジェルドンハブもおそらくここに入り、現時点でははっきりしないのが中国西部のT.xianchengensisである。この位置づけがはっきりしたら、このグループをProtobothrops属に置くことになるだろう。残りは狭い意味でのハブ属におくほかないが、T.puniceus、T.stejnegeri、T.albolabris、T.purpureomaculatus、T.sumatr anusなど、5つのグループは比較的はっきりしているが、残りの種の位置づけはいまだにはっきりしない。