著者
張 慶在
出版者
Center for Advanced Tourism Studies = 北海道大学観光学高等研究センター
雑誌
International Journal of Contents Tourism (ISSN:24327557)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.45-52, 2017-03-01

本リサーチノートでは、コンテンツツーリズムとイベントツーリズムの側面から、コンテンツをテーマにするイベントの特徴について明らかにする。具体的には、北海道洞爺湖町で行われる 「TOYAKO マンガ・アニメフェスタ」(TMAF)に対する参与観察をもとに、参加者の参加形態を分析する。TMAF は、ポップカルチャーコンテンツをテーマとするイベントであり、2010年からはじまった。初年度の3千人から年々参加者が増え、2015年には約6万人が参加した。TMAF では、ポップカルチャーコンテンツが観光を誘発する要素の一つであり、そういう意味でTMAF に対する観光はコンテンツツーリズムと言うことができる。一方、TMAF はフェスティバル形式のイベントであり、イベントが観光を誘発するイベントツーリズムの特徴も見られる。TMAF に参加する観光客の実際の観光パターンからは、既存のコンテンツツーリズムとイベントツーリズムとは少々異なる特徴が見られる。TMAF において参加者は、観光客であると同時に、場の雰囲気を作るホストのような役割をする。また、伝統的にはホストに属する地域住民がゲストのような役割をすることもある。TMAF の事例を通して、コンテンツツーリズム、イベントツーリズムなどポップカルチャーイベントをめぐるダイナミックな観光の在り方が見られる。This research note analyses pop-culture-related festivals as contents tourism based on participant observation at the Toyako Manga Anime Festa (TMAF).TMAF began in 2010 and is an annual festival on the theme of manga and anime. There were 3,000 participants in the first year. Numbers have increased year by year and in 2015 there were almost 60,000 participants during the two days of the festival.Pop culture contents help to induce visitation to Toyako town, therefore participation in TMAF can be called a form of contents tourism. Conversely, TMAF has a festival format which includes many exhibitions, therefore participation in TMAF can also be called event tourism. Meanwhile, the behaviour of participants at TMAF consists of various travel patterns which belong to neither contents tourism nor event tourism. Attendees participate simultaneously as festival performers and as visitors to the event. Also, residents of Toyako town, who do not treat participants as tourists as in the traditional host/guest theory of tourism studies, tend to behave like tourists at TMAF. As a result, the dynamic patterns of tourism related to pop culture as seen atTMAF constitute a synergistic blend of contents tourism and event tourism.
著者
張 慶在
出版者
Center for Advanced Tourism Studies = 北海道大学観光学高等研究センター
雑誌
International Journal of Contents Tourism
巻号頁・発行日
vol.1, pp.45-52, 2016-07-29

本リサーチノートでは、コンテンツツーリズムとイベントツーリズムの側面から、コンテンツをテーマにするイベントの特徴について明らかにする。具体的には、北海道洞爺湖町で行われる 「TOYAKO マンガ・アニメフェスタ」(TMAF)に対する参与観察をもとに、参加者の参加形態を分析する。TMAF は、ポップカルチャーコンテンツをテーマとするイベントであり、2010年からはじまった。初年度の3千人から年々参加者が増え、2015年には約6万人が参加した。TMAF では、ポップカルチャーコンテンツが観光を誘発する要素の一つであり、そういう意味でTMAF に対する観光はコンテンツツーリズムと言うことができる。一方、TMAF はフェスティバル形式のイベントであり、イベントが観光を誘発するイベントツーリズムの特徴も見られる。TMAF に参加する観光客の実際の観光パターンからは、既存のコンテンツツーリズムとイベントツーリズムとは少々異なる特徴が見られる。TMAF において参加者は、観光客であると同時に、場の雰囲気を作るホストのような役割をする。また、伝統的にはホストに属する地域住民がゲストのような役割をすることもある。TMAF の事例を通して、コンテンツツーリズム、イベントツーリズムなどポップカルチャーイベントをめぐるダイナミックな観光の在り方が見られる。
著者
Mason Michele M.
出版者
Center for Advanced Tourism Studies = 北海道大学観光学高等研究センター
雑誌
International Journal of Contents Tourism (ISSN:24327557)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.31-43, 2017-03-01

Arakawa Hiromu's best-selling manga Silver Spoon, which began serialization in 2011, kicked off an impromptu migration of fans to the story's setting, the Tokachi-Obihiro region of Hokkaido. Both local tourism officials and agricultural stakeholders quickly devised a number of strategies to capitalize onthe newfound interest in their region. Their efforts only intensified when anime and film versions were released in 2013 and 2014. This article examines the ways local officials, business owners, and other constituents have pursued not only profits from Silver Spoon-inspired tourism, but also the chance to offer a different picture of agricultural life than is typically disseminated in the media. Below, I demonstrate how the promotion of Ban'ei horse racing, a wide-variety of agricultural products, and hands-on farming and food production experiences are at the heart of local community's attempts to appropriate the cultural capital of Silver Spoon to craft narratives of Tokachi identity, heritage, and pride.荒川弘によるベストセラーマンガ作品『銀の匙 Silver Spoon』は、2011年の連載開始後すぐに、舞台地・北海道十勝帯広への作品ファンの流入を引き起こした。地元の観光行政担当者と農業関係者の両者は、新たに地域に生まれたこうした好機をフルに活かすための多くの戦略を素早く立案した。こうした彼らの取り組みが活発化したのは、2013年のアニメ版の放送、2014年の劇場版公開に依るところが大きい。本稿では、地元の行政・事業者・その他の地域構成員が、同作品に触発されたツーリズムによる利益をどのように追及したのか、さらにそうしたツーリズムを、メディアを通して広まっている農業生活のステレオタイプなイメージとは異なる、新たなイメージを提供する機会としてどのように捉えたのか、について分析する。そして、ばんえい競馬や農畜産物、実際の農畜産業・食糧生産などのプロモーションを通して、地域コミュニティがどのように、文化資本としての同作品を十勝のアイデンティティ・遺産・誇りに関する語りの生成へと結びつけていったのかを示す。