著者
松井 勇起
出版者
Editional Board of "Library, Information and Media Studies"
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-14, 2018-09-30

本稿では教育社会学者竹内洋の提唱するメディア知識人論を発展させて、煽動行為者の特徴と範囲を研究する。竹内はメディア知識人を「メディアを舞台にしたオピニオン・リーダー」と定義し、承認欲求を求めてウケ狙いをする愛情乞食と説明する。しかし、実直で謙虚な堅気型のメディア知識人や、メディア知識人としては目立たない愛情乞食型及びメディア知識人でない愛情乞食型といった竹内の定義に当てはまらない存在もいる。ピエール・ブルデューの界の理論と竹内の覇権戦略論を参照し、竹内の挙げた堅気型と愛情乞食型の人物の比較する思考実験を行うと、これらの二つの型についての承認欲求を巡る違いが判明した。さらに、ウィリアム・コーンハウザーや佐藤卓己による類型論と対照させ、ブルデューのハビトゥス論を参照することで二つの型について社会的にも言うことができることを説明した。そして、愛情乞食型は外でメディア知識人として派手に振る舞うパフォーマー型と、組織内部で複雑なルールで他人をいじめて学内政治を行う宦官型に分けられる。両者ともに空気を読むことで優位に立ち満足することで承認を獲得する。宦官型はメディア知識人としては慎重戦略を採用し、外部からは観察しにくい。今後は実証面で更なる具体例の分析が望まれる。
著者
横山 幹子 YOKOYAMA Mikiko
出版者
Editional Board of "Library, Information and Media Studies"
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-16, 2018-03-31

アメリカの哲学者、ヒラリー・パトナムは、2016年3月13日に亡くなった。彼は、その哲学的な経歴において、科学的世界観と常識の世界観の両方を受け入れることができる、満足のいく哲学的実在論を求めて、実在論に対する立場を変えてきた。彼は、まず(狭い意味での)形而上学的実在論を、次に内的実在論を、それから、デューイレクチャーにおいて、選言説を含む自然な実在論(常識の実在論)を主張する。しかし、晩年、彼は、依然として常識の実在論を主張する一方で、選言説に反対し、リベラルな自然主義、リベラルな機能主義を主張する。本論文では、選言説への批判に焦点を当て、リベラルな自然主義やリベラルな機能主義の妥当性を検討する。そのため、まず、『心・身体・世界:三つの撚り糸』での自然な実在論と選言説について説明する。次に、リベラルな自然主義とリベラルな機能主義を概観する。それから、選言説への晩年のパトナムの批判を整理する。そして、最後に、リベラルな自然主義とリベラルな機能主義がかなり妥当する考えである一方で、それには、哲学的分析の役割をどのように考えるかという問題(常識は哲学かという問題)も含まれていると論じる。