著者
松井 勇起
出版者
「図書館情報メディア研究」編集委員会
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-14, 2018-09-30

本稿では教育社会学者竹内洋の提唱するメディア知識人論を発展させて、煽動行為者の特徴と範囲を研究する。竹内はメディア知識人を「メディアを舞台にしたオピニオン・リーダー」と定義し、承認欲求を求めてウケ狙いをする愛情乞食と説明する。しかし、実直で謙虚な堅気型のメディア知識人や、メディア知識人としては目立たない愛情乞食型及びメディア知識人でない愛情乞食型といった竹内の定義に当てはまらない存在もいる。ピエール・ブルデューの界の理論と竹内の覇権戦略論を参照し、竹内の挙げた堅気型と愛情乞食型の人物の比較する思考実験を行うと、これらの二つの型についての承認欲求を巡る違いが判明した。さらに、ウィリアム・コーンハウザーや佐藤卓己による類型論と対照させ、ブルデューのハビトゥス論を参照することで二つの型について社会的にも言うことができることを説明した。そして、愛情乞食型は外でメディア知識人として派手に振る舞うパフォーマー型と、組織内部で複雑なルールで他人をいじめて学内政治を行う宦官型に分けられる。両者ともに空気を読むことで優位に立ち満足することで承認を獲得する。宦官型はメディア知識人としては慎重戦略を採用し、外部からは観察しにくい。今後は実証面で更なる具体例の分析が望まれる。In this paper, I develop media intellectual theory by You Takeuchi, an educational sociologist, so as to research features and scope of agitators. Takeuchi defines media intellectuals as "Opinion leader on the media" and regards media intellectuals as a beggar for love, so to speak, approval desire. But there are many media intellectuals who are not suitable for the definition by Takeuchi. Namely there are two types. One, an honest and robust type. Another, a type of beggar for love, who is quiet media intellectuals or not media intellectuals. According to Pierre Bourdieu's theory of the field and Takeuchi's theory of hegemonic strategy, comparing people of robust type and affection beggar type, I found a difference of approval desire between these two types. Furthermore, contrasting the typology between William Kornhauser and Takumi Sato, and referring to the Bourdieu's Theory of Habitus, Takeuchi's classification is valid not only in the field of media intellectuals but also in the general public. Dividing beggar for love into two, there are performer type acting gorgeously as a media intellectual, and eunuch type bullying other people inside the organization using complex rules. Both of them acquire approval by satisfying the dominance in their field by reading the situation. The eunuch type is difficult to observe from the outside because it adopts a prudent strategy as media intellectual. In the future, more empirical examples are desired for the development of this study.
著者
嶺井 尚子 Naoko MINEI
出版者
Editorial Board of "Library, Information and Media Studies"
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.37-51, 2019-03-31

子どもの貧困は社会的課題とされ、貧困の連鎖が生じている可能性が指摘されている。貧困の連鎖の要因の1つとして教育格差が挙げられるが、公立図書館は社会的包摂の観点から教育格差を是正する一助となり得る。本研究では、公立図書館における児童サービスの可能性を、子どもの貧困対策の観点から再考することを目的とする。調査方法として、子どもの貧困対策や公立図書館の児童サービスに関する学術論文・図書を対象とし、文献調査を実施した。また文献調査の補完として、子どもの貧困を主たる課題とする地域の公立図書館の児童サービス担当職員を対象とし、児童サービスの現状・職員の意識に関するインタビュー調査を実施した。結果として、子どもの貧困対策として居場所づくりが、学力向上の手段として読書活動と親子間の交流が挙げられることが明らかになった。そして,公立図書館の児童サービスにおける①子どもの居場所を提供,②逆境を乗り越える力への間接的影響,③親子の愛着形成の機会提供という3つの活動が、子どもの貧困対策の要素を有することを指摘した。このように本論文は,公立図書館における児童サービスが子どもの貧困対策の一助となる可能性を示した。
著者
松井 勇起
出版者
Editional Board of "Library, Information and Media Studies"
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-14, 2018-09-30

本稿では教育社会学者竹内洋の提唱するメディア知識人論を発展させて、煽動行為者の特徴と範囲を研究する。竹内はメディア知識人を「メディアを舞台にしたオピニオン・リーダー」と定義し、承認欲求を求めてウケ狙いをする愛情乞食と説明する。しかし、実直で謙虚な堅気型のメディア知識人や、メディア知識人としては目立たない愛情乞食型及びメディア知識人でない愛情乞食型といった竹内の定義に当てはまらない存在もいる。ピエール・ブルデューの界の理論と竹内の覇権戦略論を参照し、竹内の挙げた堅気型と愛情乞食型の人物の比較する思考実験を行うと、これらの二つの型についての承認欲求を巡る違いが判明した。さらに、ウィリアム・コーンハウザーや佐藤卓己による類型論と対照させ、ブルデューのハビトゥス論を参照することで二つの型について社会的にも言うことができることを説明した。そして、愛情乞食型は外でメディア知識人として派手に振る舞うパフォーマー型と、組織内部で複雑なルールで他人をいじめて学内政治を行う宦官型に分けられる。両者ともに空気を読むことで優位に立ち満足することで承認を獲得する。宦官型はメディア知識人としては慎重戦略を採用し、外部からは観察しにくい。今後は実証面で更なる具体例の分析が望まれる。
著者
横山 幹子 YOKOYAMA Mikiko
出版者
Editional Board of "Library, Information and Media Studies"
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-16, 2018-03-31

アメリカの哲学者、ヒラリー・パトナムは、2016年3月13日に亡くなった。彼は、その哲学的な経歴において、科学的世界観と常識の世界観の両方を受け入れることができる、満足のいく哲学的実在論を求めて、実在論に対する立場を変えてきた。彼は、まず(狭い意味での)形而上学的実在論を、次に内的実在論を、それから、デューイレクチャーにおいて、選言説を含む自然な実在論(常識の実在論)を主張する。しかし、晩年、彼は、依然として常識の実在論を主張する一方で、選言説に反対し、リベラルな自然主義、リベラルな機能主義を主張する。本論文では、選言説への批判に焦点を当て、リベラルな自然主義やリベラルな機能主義の妥当性を検討する。そのため、まず、『心・身体・世界:三つの撚り糸』での自然な実在論と選言説について説明する。次に、リベラルな自然主義とリベラルな機能主義を概観する。それから、選言説への晩年のパトナムの批判を整理する。そして、最後に、リベラルな自然主義とリベラルな機能主義がかなり妥当する考えである一方で、それには、哲学的分析の役割をどのように考えるかという問題(常識は哲学かという問題)も含まれていると論じる。
著者
後藤 嘉宏 Yoshihiro GOTO
出版者
図書館情報メディア研究編集委員会
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.63-81, 2019-03-31

中井正一は三木清から影響を受けているが、三木の個性、独創性信仰に対しては批判的な眼差しももっていた。本稿は中井の三木への評価の肯定的眼差しと否定的眼差しの双方を、中井の全著述を通じた三木への言及から、見ていく。中井はメディウムよりミッテルを、ということをほぼ終生にわたって唱えた。著述家三木に対しては狭い意味での個性志向を示しメディウムを脱しえなかったと評する一方で、実践家三木に対してはミッテルの実践をしたと、高く評価する。両者の眼差しの矛盾を考察することで、ソクラテス流の文字に自分の言葉を残すよりも対話をというミッテルの媒介の典型の姿を、中井は三木の実践に見据えていることが分かった。
著者
後藤 嘉宏
出版者
Editorial Board of "Library, Information and Media Studies"
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, Information and Media Studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.63-81, 2019-03-31

中井正一は三木清から影響を受けているが、三木の個性、独創性信仰に対しては批判的な眼差しももっていた。本稿は中井の三木への評価の肯定的眼差しと否定的眼差しの双方を、中井の全著述を通じた三木への言及から、見ていく。中井はメディウムよりミッテルを、ということをほぼ終生にわたって唱えた。著述家三木に対しては狭い意味での個性志向を示しメディウムを脱しえなかったと評する一方で、実践家三木に対してはミッテルの実践をしたと、高く評価する。両者の眼差しの矛盾を考察することで、ソクラテス流の文字に自分の言葉を残すよりも対話をというミッテルの媒介の典型の姿を、中井は三木の実践に見据えていることが分かった。
著者
村上 孝弘
出版者
「図書館情報メディア研究」編集委員会
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, information and media studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-12, 2017-09-30

本稿では、大学図書館実態調査の「館長の地位」に関する調査項目に着目し、その項目が設置された歴史的背景について『国立大学図書館長会議議事要録』などの一次資料から明らかにした。「館長」の地位は、大学図書館基準をはじめ大学図書館関係法規において早くから重要なものと認識されていたが、各大学の実態は法規とは大きくかけ離れていた。そのため、大学図書館近代化の時期(昭和30年代中期から40年代)に大学図書館界は国立大学図書館長会議を中心に、その実質化に向けて長く議論をおこなってきた。その後、昭和50年代以降に大学図書館界の議論の中心は「機械化-情報化」に置かれるようになり、「館長の地位」などの管理運営的要素は中心的要素から次第に外れていくこととなる。しかし、国立大学法人化等を契機として、現代では大学における管理運営の課題が再認識されている。「館長が自動的に大学の評議員となる」ことをとおして図書館の学内における総体的地位の向上が目指されていた当時の議論を振り返ることは、現代の大学ガバナンスを検討するに際しても、重要な歴史的視点を有しているといえよう。