著者
真宮 靖冶 平塚 美幸 村田 政穂
出版者
Japanese Nematological Society
雑誌
Japanese journal of nematology (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-30, 2005-06
被引用文献数
1

木材腐朽菌を中心とする担子菌14種25菌株についてマツノザイセンチュウ(以下線虫)に対する捕食効果を追及した。ペトリ皿内の1.5%寒天平板上に生育する供試菌菌叢に対し線虫を接種して、菌糸の影響を顕微鏡下で直接観察した。9種の木材腐朽菌に線虫捕食効果を確認した。ヒラタケ、ウスヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ツキヨタケでとくに効果は顕著であった。マツオウジ、シハイタケ、ナメコ、ヒトクチタケにも線虫捕食効果が認められたが、捕食死亡率や効果発現の時間的経過などにおいて、ヒラタケをはじめ上記5種と比べて捕食効果は劣った。ペトリ皿のPDA培地平板上で発育伸長した各菌菌叢が線虫の増殖に及ぼす影響を検討した。ヒラタケ、ウスヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ツキヨタケ、マツオウジ、ナメコの菌叢では、接種線虫は早くに消滅し、以後の増殖は起こらなかった。シハイタケ、ヒトクチタケでは、線虫の生存が接種後もしばらく認められたが、とくに目立った増殖にはいたらなかった。このような増殖実験の結果は、各供試菌が示した線虫捕食効果の強弱と一致していて、菌叢の線虫への直接的な影響を裏付けた。マツオウジ、シハイタケ、ヒトクチタケは、マツ枯死木における普遍的な先駆的木材腐朽菌であり、これらの枯死木材中における生息が、線虫の個体数変動に与える影響が予測された。
著者
小倉 信夫
出版者
Japanese Nematological Society
雑誌
Japanese journal of nematology (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.99-102, 2004-12

培養条件下でのマツノザイセンチュウ(センチュウと略す)の増殖に対する殺虫剤(アセフェート(オルトランR)、クロルピリホスメチル(レルダンR)、フェニトロチオン(スミチオンR)、マラチオン(マラソンR)、ピリミホスメチル(アクテリックR)、ピリダフェンチオン(オフナックR))、殺ダニ剤(デコフォル(ケルセンR))の抑制効果を調べた。クロルピリホスメチル、フェニトロチオン、ピリミホスメチル、ピリダフェンチオンは培養条件下でセンチュウの増殖を抑制した。これらの殺虫剤のセンチュウ増殖を抑制する濃度は、それぞれ0.09、0.45、0.62および<0.25ppm以上と推算された。マツ樹幹注入剤メスルフェンホス(ネマノーンR)と酒石酸モランテルナトリウム塩はそれぞれ1.28および3.58ppm以上の濃度で同様の効果を示すと推算された。クロルピリホスメチル、フェニトロチオンおよびピリダフェンチオンはマツノザイセンチュウの媒介昆虫であるマツノマダラカミキリに対する予防散布薬の成分でもある。このような一致は興味深い。