著者
西村 秀一
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.342-345, 2012
被引用文献数
1 1

本邦では,「プラズマクラスターイオン」「ナノイー粒子」「除菌電解ミスト」と称する特殊物質の放出により空中浮遊状態のウイルスや細菌,環境付着細菌の抑制を謳う電気製品が市販されている.だが,それらの有効性についての第三者による客観的検証報告はない.そこで,環境表面に乾燥状態で付着した細菌を想定し,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,セレウス菌,腸球菌の一定数生菌液をスライドグラス上にスメア状に塗布し容積0.2 m<sup>3</sup>のグローブボックス中に置き,対象機種を一定時間運転後,一定量の液体培地で洗い流し,生存細菌数を定量してみた.その結果全機種,全菌種で対照と生存菌量はほぼ変わらず,殺菌効果はほとんど認められなかった.<br>
著者
形山 優子 山本 満寿美 千田 好子 狩山 玲子
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.97-103, 2008-05-23
被引用文献数
3 4 1

急性期病院に治療目的で入院した誤嚥性肺炎患者9名の口腔内の状態と口腔ケアおよび口腔と吸引痰からの検出菌に関する実態調査を行った.患者の平均年齢は77歳で,7名に誤嚥性肺炎の既往歴があった.患者の口腔内の状態は,入院時約半数に舌苔や口腔内乾燥がみられたが,退院時は改善傾向にあった.しかし,入院後の口腔ケアは,大半の患者に1日1回実施しているのが実状であり,十分な口腔内清浄度が保たれていなかった.入院時,入院後3~5日目,退院時の3回,日和見感染菌検査用キット(BML社)を使用し,口腔と吸引痰から検体を採取した.口腔または吸引痰からの検出菌(患者数)は,入院時:<i>Candida</i> sp. (4名),MRSA, <i>Serratia marcescens</i> (各3名),<i>Pseudomonas aeruginosa</i>, <i>Klebsiella pneumoniae</i> (各2名),入院後3~5日目:MRSA (5名),<i>Candida</i> sp. (2名),<i>P. aeruginosa</i>, <i>K. pneumoniae</i>, <i>S. marcescens</i> (各1名),退院時:MRSA (4名),<i>P. aeruginosa</i>, <i>K. pneumoniae</i>, <i>Candida</i> sp. (各2名),MSSA (1名)であった.本研究において,MRSAが最も多く検出され,入院時の3名に比して,入院後3~5日目には5名,退院時4名と増加しており,院内感染が疑われた.退院時に定着菌あるいは残存菌が検出された6名の患者は,再度誤嚥性肺炎に罹患する可能性が高いことから,口腔ケアへの積極的介入が必要とされた.また,耐性菌蔓延防止のためには,医療施設内のみならず地域医療連携による感染対策を行うことが重要である.<br>
著者
白石 正 川合 由美 布施 明美 大谷 和子
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.124-128, 2008-05-23
被引用文献数
3 3

従来から術前の手洗いは,4%グルコン酸クロルヘキシジンなどのスクラブ製剤を使用して行われているが,米国疾病管理センター(CDC)のガイドラインでは,速乾性擦式消毒薬を用いたウォーターレス法を推奨している.そこで,4%グルコン酸クロルヘキシジンスクラブ剤と0.5%グルコン酸クロルヘキシジンエタノール剤の手指消毒効果について看護師22名を対象にグローブジース法にて比較するとともに2製剤を使用した場合の経済効果を併せて検討した.その結果,消毒直後および消毒3時間後では2製剤間に有意差は認められず,2製剤の同等性が認められた.また,経済効果では,スクラブ製剤に比較してエタノール製剤のコスト低下が認められた.<br>
著者
前田 修子 滝内 隆子 小松 妙子
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.41-47, 2008-03-25
被引用文献数
2 2

我々は,訪問看護師に対する感染管理の学習支援が必要にも関わらず教育プログラムがないことから,12回で構成する"訪問看護師を対象とした感染管理教育プログラム"を作成した.続いて,今回,この教育プログラムのうち,訪問看護師の要望が高かった「手洗い・うがい」を研修会形式により開催した.研修会参加者によるテーマ,開催方法,学習目標・内容・方法に関する評価と参加者の知識・技術の修得状況をもとに,研修会の効果検証を行った.結果,①研修会のテーマ,開催方法,学習目標・内容・方法は,大部分の参加者からよい評価が得られた.②知識・技術の研修会後の修得状況は,全項目において研修会前よりも上昇していたが,手洗い必要物品の選択・準備・持参に関する項目は低い傾向であった.今後は,研修会後の修得度が低かったもの,上昇があまり認められなかった学習項目の学習内容・方法を検討していく必要があると考えられた.<br>