著者
岡村 徳光 濱田 和美 竹野 智美 奥田 展子 大杉 匡弘
出版者
Japanese Society of Mushroom Science and Biotechnology
雑誌
日本応用きのこ学会誌 (ISSN:13453424)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.189-195, 1999-12-25 (Released:2018-04-20)
参考文献数
11

武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科ホームベーカリーを用いて5%マイタケを添加したパンを焼いたところ,標準のパンに比べ著しく体積と比容積が減少した.マイタケの添加は.パン酵母によるガスの発生に影響を与えた.発酵4時間後の卜ータルガス量は,標準生地の約2.1倍に増加した.発酵6時間後では,マイタケを含む生地の上部の表面にいくつかの穴が形成されていた.ガス発生はマイタケ中のグルコースとマンニトールの消費に伴って増加した.マイタケの添加は低分子の糖(発酵糖)の生産を増加させた.それゆえ,マイタケの添加は,酵母に対する栄養源としての発酵糖を供給し,このことは過剰なガスの発生を促し,生地表面に穴を形成し,そこからガスが放出するために,結果として,生地の体積が低くなるものと結論づけられた.したがって,全自動ホームベーカリーを使用した場合では,生地の表面に穴が形成することで,焼く前に生地が破壊し,体積が低く崩れた状態で焼かれるものと推測された.
著者
山下 慎司 赤田 康太 松本 聡 木下 幹朗
出版者
Japanese Society of Mushroom Science and Biotechnology
雑誌
日本きのこ学会誌 (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.7-14, 2020 (Released:2021-07-14)
参考文献数
33

近年,日本を含む東アジアにおいて過敏性腸炎や潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患の増加は深刻になりつつある.これら慢性的な腸管炎症の継続は,下痢等による生活の質の低下だけでなく,大腸ガン発症リスクを上昇させる可能性が報告されている.タモギタケを含むきのこ類,またその水溶性画分において,抗腫瘍活性などの機能性が報告されおり,その摂取による腸疾患予防が期待されている.本研究では,きのこ子実体の脂溶性画分の腸疾患に対する機能性を明らかにするために,タモギタケ脂溶性画分としてタモギタケ子実体エタノール抽出物(GOMEE)を用い,食餌性GOMEEが慢性大腸炎モデルマウスに及ぼす影響を調査した.1.5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)飲水により誘導された慢性大腸炎に対し,食餌性GOMEEは,飼育期間後期の体重減少を抑制するとともに,DSS飲水26日目では脾臓重量の増加並びに大腸の収縮を有意に抑制した.また,GOMEE摂取はDSSにより誘導される大腸絨毛の損傷を摂取量依存的に抑制することが観察された.DSS飲水18日目の炎症初期・中期においては,GOMEE摂取は大腸粘膜の炎症関連サイトカインレベルの上昇を摂取量依存的に抑制した.以上の結果は,タモギタケの脂溶性成分には,抗炎症活性を有する腸管保護成分が存在する可能性を示唆する.