著者
西間 三馨
出版者
Japanese Society of Pediatric Pulmonology
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-26, 1990

国療南福岡病院小児科における気管支喘息の年間登録患者数は, 1975年: 466人, 1988年: 2, 140人と4.6倍, 発作入院患者数は1975年: 121例, 1988年: 1, 005例の8.3倍となっているが, 死亡患者は年に1例の率で出ており, その多くは自宅死亡かDOA (death on arrival) である。これらのことは病態の解明などに伴って, 喘息の管理が飛躍的に向上したことを物語っている。<BR>しかしながら, 重症または難治型喘息児の予後は必ずしも良好なものではない。発症後20年の重症児の予後をみた我々のデータでは治癒: 40.9%, 死亡: 5.4%となっており, 死亡の73.3%は思春期児の急死であった。このように, とくに思春期の年齢層はpsycho-socio-economical handicapが加わった場合に極めてコントロールが困難となっている。<BR>一般的に喘息がコントロールしやすくなったことは確かではあるが, 重症難治型の喘息児には, 多種薬剤の長期使用の弊害, 日常生活の障害, 進学就職上の障害, 夜間救急体制の不備, 周辺社会の無理解など, 多くの問題があり, 社会的視野を持った真の意味でのtotal careの確立が強く望まれる。
著者
加野 草平 西間 三馨
出版者
Japanese Society of Pediatric Pulmonology
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.73-77, 1990

全国の大学病院ならびに日本小児呼吸器疾患学会参加施設 (計265施設) に対し小児の在宅酸素療法 (HOT) に関するアンケート調査を行なった。HOT対象児は106例 (男63例, 女43例) で, 平均年齢は5.2歳, 67.9%が5歳以下の症例であった。対象疾患では, 呼吸器疾患が61例 (57.5%) と最も多く, 心血管系疾患35例 (33.0%), 多発奇形および神経筋疾患12例 (11.3%) であった。HOT開始時の動脈血液ガス所見では, 大気吸入下でPaO<SUB>2</SUB>48.5±15.0mmHg, PacO<SUB>2</SUB>46.3±12.5mmHg (n=59) であった。酸素供給源の種類は, 吸着型酸素濃縮器が68例 (64.2%) と最も多く, 膜型28例 (26.4%), 酸素ボンベ13例 (12.3%) であった。HOT施行例の転帰については, 死亡18例 (17.0%) で, 病状の改善によるHOT中止例が30例 (28.3%) 存在していた。小児のHOTの特徴として, 低年齢児, 小児特有の疾患を対象とすることが多く, また将来HOTを中止できる症例がかなり存在すること等があげられる。