著者
山岡 武邦 沖野 信一 松本 伸示
出版者
Society of Japan Science Teaching
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.179-188, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
13

本研究は,理数系学部に在籍する国立理科系大学生319名を対象に,素朴概念の形成過程や,その克服の過程を明確化させることを目的として,2013年から2018年にかけてアンケート調査を行ったものである。調査対象者319名が記述した434個の素朴概念を分析した結果,次の6点が明らかとなった。(1)素朴概念を抱く時期は,男女ともに小学生の時期が多いこと,(2)素朴概念を抱く時期は,女子の方が男子に比べて幼い時期であること,(3)素朴概念を形成する分野ごとの男女比率は,物理分野は相対的に男子多く女子が少ない。生物分野は女子が相対的に多く男子が少ない傾向があること,(4)素朴概念が形成される原因について分野別に比較をすると,物理分野は実体験を基にした理解,化学分野は直感的理解や不可視を根拠にした理解,生物分野は他の助言を根拠にした理解,地学分野は漫画や映画等に基づく理解の割合が,相対的に多い傾向にあること,(5)素朴概念の形成に関する原因は,性差や発達段階の差によらないこと,(6)素朴概念を克服した方法について分野別に比較をすると,物理分野は数式による証明,化学分野は学校での実験等による実体験との照合,生物分野は学校での実験等による実体験との照合とSNSやテレビ番組,地学分野は発達段階に応じた理解の割合が,相対的に多い傾向にあること,が明らかとなった。