著者
下井倉 ともみ 土橋 一仁 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.238-247, 2014 (Released:2015-01-19)
参考文献数
16
被引用文献数
6

Several studies have revealed that most students not majoring in science at the Faculty of Elementary Education are not confident to teach science at elementary school. We conducted a questionnaire survey to 1815 such students at 15 universities in Japan. The purpose of this survey was to investigate what they expect from university and what would be the most effective education in order to improve their confidence. The survey revealed that (1) the students only have confidence in teaching biology, but (2) not other scientific subjects covered at elementary school, and (3) they are especially reluctant to teach physics and chemistry. These results indicate that a comprehensive curriculum at university covering all science subjects taught at elementary school is needed to improve their confidence.
著者
松本 伸示 北浦 隆生
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.220-228, 1999-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
12

It is said that biological education in today's high school has many problems. The purpose of this paper is to explain the existence of those problems, and to search for possible clues for solving them. For the purpose of achieving this goal, an analysis was made of the historical transition of biological education since the Second World War. The materials that were analyzed include sets of the course of study and textbooks used in each period. The characteristics of a particular course of study in each period were extracted through this analysis. The following characteristics of biological education in Japan became clear from the analysis : 1. The basic structure of high school biological education contents has not changed since the curriculum movement of science education ; 2. The basic concepts which have been used in biological education have been retained ; 3. There was some old-fashioned content as a result of the introduction of too little new content of biology in recent years ; and 4. A serious problem exists in the biological education content structure due to the elimination of content as a result of revisions made in the courses of study.
著者
松本 伸示 佐藤 真 森 秀樹
出版者
兵庫教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

19年度は,兵庫県加東市の小学校で低学年児童を対象として絵本の「読み聞かせ」活動を取り入れた日本版の「哲学」授業を実践した。これは,これまでIAPCで開発されたテキストを用いてきたが,低学年児童を対象するには討論の題材が身近であること,さらには,低学年児童の読解力の発達を考慮にいれたことによる.また,これまで「総合的な学習の時間」を活用して「哲学」授業をおこなってきたが,今年度は子どもたちにもっと哲学的討論を身近なものとするため,学校のカリキュラムに縛られることのない放課後の学童保育の時間を活用することも考えてみた.これにより教室という物理的,心理的な条件に縛られることなく子どもたちは自由に哲学的討論を楽しむことができた.さらに,兵庫教育大学附属中学校においても選択科目の時間を活用し日本版の「哲学」カリキュラムを開発して授業実践した。これはイギリスのNEWSWISEを手がかりにニュースを教材としたP4Cの手法を参考としつつ,討論テーマを生徒の身のまわりの出来事から取り上げた実践研究である.この実践ではより哲学的な要素を含んで討論が展開されるようにカリキュラムを設定した.また,17年度に収集した韓国の資料をもとに思考力育成を図るための副読本「お母さんとともに創る日記」を完成させた。これらの基礎データによって日本においても「哲学」授業が可能であり,児童・生徒の思考力の育成につながっていくことを明らかにした。
著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.234-245, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
31
被引用文献数
1

Despite the accidental and purposeless nature of “biological evolution,” there is no end to the “Naturalistic Fallacy” borrowed for value judgment during social change. A previous study shows that elementary school students hold many misunderstandings concerning “biological evolution”; for example, several misconceptions such as “Lamarckism” and “teleology” (which are frequently applied even by university students). It has been pointed out that modern biology, which floats in a great sea of knowledge, should be integrated by “biological evolution.” Therefore, in this study, based on this “unified understanding of biology,” lower secondary school science was integrated from the viewpoints of “acquisition of scientific evolutionary concepts” and “elimination of misconceptions,” in order to examine the learning content and structure of biology education. By analyzing the data obtained from descriptions of the two tasks in the classes of two units (genetics and ecosystem) among lower secondary school students, it was suggested that a “unified understanding of biology” contributes to avoiding misuse of “evolution”. In conclusion, we proposed a curriculum that uses evolution as an overarching theme to integrate five units (classification, cells, genetics, evolution, and ecosystem) to create a new biology course.
著者
山岡 武邦 沖野 信一 松本 伸示
出版者
Society of Japan Science Teaching
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.179-188, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
13

本研究は,理数系学部に在籍する国立理科系大学生319名を対象に,素朴概念の形成過程や,その克服の過程を明確化させることを目的として,2013年から2018年にかけてアンケート調査を行ったものである。調査対象者319名が記述した434個の素朴概念を分析した結果,次の6点が明らかとなった。(1)素朴概念を抱く時期は,男女ともに小学生の時期が多いこと,(2)素朴概念を抱く時期は,女子の方が男子に比べて幼い時期であること,(3)素朴概念を形成する分野ごとの男女比率は,物理分野は相対的に男子多く女子が少ない。生物分野は女子が相対的に多く男子が少ない傾向があること,(4)素朴概念が形成される原因について分野別に比較をすると,物理分野は実体験を基にした理解,化学分野は直感的理解や不可視を根拠にした理解,生物分野は他の助言を根拠にした理解,地学分野は漫画や映画等に基づく理解の割合が,相対的に多い傾向にあること,(5)素朴概念の形成に関する原因は,性差や発達段階の差によらないこと,(6)素朴概念を克服した方法について分野別に比較をすると,物理分野は数式による証明,化学分野は学校での実験等による実体験との照合,生物分野は学校での実験等による実体験との照合とSNSやテレビ番組,地学分野は発達段階に応じた理解の割合が,相対的に多い傾向にあること,が明らかとなった。
著者
名倉 昌巳 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.397-407, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
17

本研究の目的は中学校の新入生に「生物多様性」の理解と,その多様性の解析手法である「進化思考」の形成過程を探ることにある。現行(平成20年改訂学習指導要領準拠)の中学校第1学年理科教科書における「生命編」の最初には,近隣のいろいろな環境に生息する「身近な生物」を観察しながら,顕微鏡の使い方など基本的技能の習得が目的とされてきた。平成29年改訂の新学習指導要領では,そこに「分類」の記述が加わり,「生物多様性」の理解が重視されるように改訂された。しかし,中学校現場では「身近な生物の観察」も通り一遍で終えられることが多い。そこで,新入生による初めての観察実習として,科学的な見方・考え方という観点を踏まえた授業を展開した。一方,「生物多様性の理解には進化に関する知識の習得が重要」であり,かつ「分類思考と系統樹思考を柱とした進化思考が多様性の解析手法の基盤である」という2つの提言がある。そこで,本研究ではその2つの提言に基づいて,「身近な植物」としてのタンポポの「分類」を手始めに,雑種タンポポ出現による「多様化」や,水中の小さな生物の「系統的分類」を事例に,進化の入門編を意図した授業を開発した。ワークシートの記述分析や質問紙調査の結果から,「生物多様性」や「科学的進化概念」の理解を一定程度促進することが明らかになった。
著者
小川 博士 髙林 厚志 池野 弘昭 竹本 石樹 平田 豊誠 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.345-356, 2019-03-25 (Released:2019-04-12)
参考文献数
32
被引用文献数
3

我が国の理科教育では,科学や理科学習に対する態度の低迷が問題となっている。本研究は,実社会・実生活との関連を志向する真正の学習論に着目し,中学校理科において,単元開発及び実践を行い,科学や理科学習に対する態度の向上に有効であるかを明らかにすることを目的とした。この目的を達成するために,中学校第2学年の生徒132人を対象として,「電流と磁界」の単元開発を行い,授業を実施した。学習効果を検証するために,「科学や理科学習に対する態度」に関する質問紙を用いて事前事後調査を行った。また,単元後の生徒の感想記述を分析した。その結果,「科学に関する全般的価値」や「科学に関する個人的価値」などにおいて,事後の平均値の方が事前のそれよりも有意に高かった。また,生徒の感想記述を計量テキスト分析し,コード化した。コード間のJaccard係数を算出したところ,「科学の内容」と「日常生活」や「日常生活」と「有用感」などの関連度が高かった。以上のことから,実社会・実生活との関連を志向する真正の学習論に着目した中学校理科授業が,生徒の科学や理科学習に対する態度の改善に一定の効果があることが明らかとなった。
著者
向井 大喜 村上 忠幸 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.455-464, 2019-11-29 (Released:2019-12-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究では,高校生の探索的な科学的問題解決における,仮説形成の到達段階を評価する指標の開発を目指した。そこで,仮説形成プロセスのモデルを設定して評価指標を作成し,高校生に実践された探索的な科学的問題解決を実際に評価した。その結果,活動が進展している学習グループには以下の(1)~(3)が認められた。(1)実験素材への「操作」を通して「要素の抽出」が生じた。(2)要素に説明付けすることで「説明仮説の生成」が生じた。(3)説明仮説から演繹することで「作業仮説の生成」が生じた。しかし,停滞している学習グループでは,「要素の抽出」が繰り返され「説明仮説の形成」へ進まず,演繹的探究への移行が起こらなかった。このことより,本研究で提案する指標には,仮説形成の段階を評価できる可能性があることが明らかになった。
著者
松本 榮次 建部 昇 安部 洋一郎 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.183-191, 2020-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

「月の満ち欠け」を科学的に理解するには地球視点と宇宙視点を交互に視点移動させる能力が必要であり,その指導は容易でない。本研究では,地球視点と宇宙視点の両方から活用できる三球儀風「月の動きと形しらべ盤」を開発した。小学校では,地球視点を中心にして「月の満ち欠け」の理解を指導するが,開発した三球儀風「月の動きと形しらべ盤」を活用することで,地球視点と宇宙視点の両方の視点から月の満ち欠けを考えることができる。平面的な教材として開発したことで,児童自身が作成することが可能となった。このクラフトを利用することで,月の動きや形についての子供たちの学習を支援することができることが示唆された。
著者
沖野 信一 山岡 武邦 松本 伸示
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.389-401, 2021-11-30 (Released:2021-11-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究は,質量の科学的概念の構築を試みた授業において,沖野・松本(2011)の3段階のメタ認知的支援(方略1「素朴概念の明確化」,方略2「素朴概念の獲得過程の明確化」,方略3「素朴概念と科学概念の接続・照合」)のすべてを講じるクラス(実験群:2クラス,N=52)と方略1だけを講じるクラス(対照群:2クラス,N=43)を比較し,方略2と方略3の有無によって,どのように生徒の理解に影響を及ぼすのかについて検討することを目的とした。その結果,質量の科学的概念の構築に対して,対照群よりも実験群の方が,有効性が高まることが示された。本研究により,方略2と方略3を講じることによって,方略1で生じた素朴概念と科学的概念の間の認定的葛藤が解消され,力および質量が運動に与える影響に関して,正しく考察できるようになったことが示唆された。
著者
山岡 武邦 松本 伸示 隅田 学
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.25-34, 2015

本研究は,中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問と生徒の期待に関する分析を行うことで,指導法への示唆を導出することを目的とした。具体的には,第3回国際数学・理科教育調査の第2段階調査(TIMSS-R)ビデオスタディ95時間分の国内中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問を分析した。分析結果を踏まえた質問紙を作成し,2013年9月から10月に,県内公立中等教育学校1校で中学校1から3年生451人を対象に調査を実施した。その結果,次の3点が明らかとなった。(1)教師は,別の生徒を指名するよりも,誤答を述べた生徒で対応する傾向があること,(2)1年生は情緒的対応を期待する傾向があること,(3)3年生は認知的対応を期待する傾向があること。以上より,中学校段階では,学年が上がるにつれて情緒的対応から認知的対応へと移行させる支援を意識しながら中学1年で「ヒント」,中学2・3年で「説明」,中学3年で「同じ発問」という対応を行い,自力で答えさせる指導をすることが効果的であると考えられる。
著者
松本 伸示 廣瀬 正見 秋吉 博之
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.55-61, 1990

本研究は,理科学習に於ける生徒の「やる気」の要因を同定しようとする基礎的研究である。そこで,まず「やる気」に影響を及ぼすであろう項目を抽出し,理科における「やる気」に関する調査票:QMSCを開発した。調査は,昭和63年11月,兵庫教育大学附属中学校3年生126名(男子74名,女子52名)を対象として行われた。調査票の信頼度係数は0.85であった。分析の結果,本調査票の43項目中の31のものが,「やる気」に彫響を及ぼしていることが認められた。そこで,この項目をさらに因子分析にかけたところ5つの因子が抽出された。第I因子は「科学的興味」,第II因子は「科学的活動」,第II因子は「数学的作業」,第IV因子は「測定的作業」,第V因子は「内容不消化」の因子と解釈することができた。この内,第I,II因子はプラス側に,第III,IV因子はマイナス側に働くことが明らかになった。
著者
竹尾 隆浩 松本 伸示
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.1-10, 2005-09-20 (Released:2018-05-08)

本研究は,Ryan & Deciの外発的動機づけを段階的なものとするとらえ方に着目し,総合的な学習の課題設定場面における動機づけについて事例研究を通して検討を試みたものである。動機づけにおいて重要とされる自己決定の認識を中心に,「学習者中心の本質的特徴は,学習内容に関する決定を自らが行うこと,すなわち自己決定することである」という立場から,総合的な学習の授業実践を質的に分析した。その結果,興味や関心,問題意識の高まりなくして自己決定はありえないということ,また,自己決定を生かす大切な要因として,共に学ぶ友達の存在の重要さが示唆された。そして,自己決定を阻害する要因として,課題と学習方法の同一視,不安や焦りの解消,友達への追従が確認された。
著者
土橋 一仁 松本 伸示
出版者
東京学芸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、温室効果を実験室で再現する実験器の開発に挑戦した。温室効果は地球温暖化の主要因として知られているが、その原理を正しく学習するためのモデル実験は存在しない。温室効果を実験室で再現するためには、温室効果ガスを封入する容器として、可視光から中間赤外線にかけて透明な素材が必要である。我々は、そのような素材として岩塩を用い、実験器を試作した。二酸化炭素を封入して実験を行ったところ、温室効果と思われるデータを得ることができたが、岩塩は脆弱で再現性に問題があり、研究期間内に温室効果検出の確証を得るには至らなかった。実験器の問題点は明らかなので、現在も引き続きその問題解決に取り組んでいる。