著者
諏訪部 仁 上野 智尚 石川 憲一
出版者
The Japan Society for Abrasive Technology
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.278-283, 2011

マルチワイヤソー方式とは,極細のワイヤ工具とスラリー(砥粒と加工液の懸濁液)を用いて硬脆材料をウエハ状に切断する加工法である.従来,本方式では砥粒としてGC砥粒を用いることによって,半導体の基板材料となるシリコンの切断等に用いられてきた.しかし,近年ではLEDの普及に伴いシリコンよりも高硬度であるサファイアインゴットの切断への適用が検討されている.そのため,GC砥粒よりも高硬度であるダイヤモンド砥粒を用いたスライシング加工が検討されている.そこで,本研究ではダイヤモンドスラリーの基礎的な加工特性を明らかにする目的で,工作物としてソーダガラスを用いて切断加工を行い,粘度や砥粒沈降性などのスラリーの性質や砥粒形状が加工特性に及ぼす影響について検討を行った.その結果,砥粒が沈降しやすいベースオイルや切断性の優れた砥粒を用いることによって,ウエハの表面性状は向上することが明らかとなった.
著者
川久保 英樹 土屋 和博 佐藤 運海
出版者
The Japan Society for Abrasive Technology
雑誌
砥粒加工学会誌 (ISSN:09142703)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.31-36, 2010

磁気研磨法は,金型の仕上げ工程を自動化するための手法として期待されている.金型は磁性工作物材料であることが多く,磁気研磨法によって仕上げを行う場合,強磁性材粒子が工作物表面に磁気吸引されて残留するなどの問題点が指摘されている.そのため,磁性工作物材料の磁気研磨技術の確立が切望されている.本研究の目的は,磁性工作物材料のR溝およびテーパR溝の内面磁気研磨法の提案とその研磨特性の検討である.本報では,マスキングテープを用いたR溝内面の部分研磨法を提案し,溝半径Rと強磁性材粒子半径rとの組み合わせが研磨特性に及ぼす影響を検討した.その結果,粒子半径rは溝半径R未満であり,半径比r/Rが1.0に近づく程,良好な仕上げ面が得られることを明らかにした.さらに,テーパR溝を均一に内面研磨するための分割研磨法を提案し,溝内全体を同程度の表面粗さに仕上げることを可能にした.