- 著者
-
上原 一浩
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
- 巻号頁・発行日
- vol.J100-B, no.9, pp.693-704, 2017-09-01
1980年代,軍用通信への応用を目指してソフトウェア無線の研究開発がスタートし,DSPやFPGA等の急速な性能向上と低価格化も進み,民生機器への展開に向けた研究開発が本格化した.また,1990年代には,ソフトウェア無線機を適応的に制御し利用するためのコグニティブ無線の概念が提唱され,その応用として高度な電波利用の実現に向けた技術開発が加速した.無線装置及び無線ネットワークの機能や性能を動的かつ適応的に変更可能とするソフトウェア無線・コグニティブ無線を実現するためには,信号処理技術やシステム制御技術,ネットワーク技術,広帯域フロントエンド技術や無線機構成技術,スペクトルのセンシング・可視化・管理・共用技術,セキュリティ技術など,ベースバンド部からRF部に至るまで,ハードウェア・ソフトウェアの両面で,様々な基盤技術の開発が必要である.本論文では,このソフトウェア無線・コグニティブ無線技術の研究開発に関し,特に無線アクセスシステムへの応用を目指した我が国における基盤技術開発を中心に,これまでの主要な取り組みについて概説する.更に,主要な実用化事例と,2020年代のIoT時代に向けた将来展望についても述べる.