著者
上原 一浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.9, pp.693-704, 2017-09-01

1980年代,軍用通信への応用を目指してソフトウェア無線の研究開発がスタートし,DSPやFPGA等の急速な性能向上と低価格化も進み,民生機器への展開に向けた研究開発が本格化した.また,1990年代には,ソフトウェア無線機を適応的に制御し利用するためのコグニティブ無線の概念が提唱され,その応用として高度な電波利用の実現に向けた技術開発が加速した.無線装置及び無線ネットワークの機能や性能を動的かつ適応的に変更可能とするソフトウェア無線・コグニティブ無線を実現するためには,信号処理技術やシステム制御技術,ネットワーク技術,広帯域フロントエンド技術や無線機構成技術,スペクトルのセンシング・可視化・管理・共用技術,セキュリティ技術など,ベースバンド部からRF部に至るまで,ハードウェア・ソフトウェアの両面で,様々な基盤技術の開発が必要である.本論文では,このソフトウェア無線・コグニティブ無線技術の研究開発に関し,特に無線アクセスシステムへの応用を目指した我が国における基盤技術開発を中心に,これまでの主要な取り組みについて概説する.更に,主要な実用化事例と,2020年代のIoT時代に向けた将来展望についても述べる.
著者
瀬尾 文洋 鈴木 秀宣 上原 一浩 矢内原 巧 中山 徹也
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1089-1097, 1980-08-01
被引用文献数
1

妊娠中における血中遊離型(F)及び抱合型(C)エストロゲン(E)の動態については未だ明らかにされていないため以下の実験を行った.対象としては正常妊婦及び分娩時の母体末梢血,並びに膀帯動静脈血を用いた.更に妊娠中毒症,胎児発育遅延(IUGR),無脳妃妊娠,胎盤性sulfatase 欠損症等の異常妊娠におけるF及びC.Eの変化も合蛙て検討した,被検血漿中よりエーテルにて抽出した分画をF分画として,次いでβ-Glucmronidase/Arylsulfatase を用いて加水分解を行い,Fとして抽出したものをC分画とした.本加水分解による回収率は85%であり,かつC.V.は5%と一定していた.Sephadex LH-20カラム.クロマトグラフィを用いて,estrone(E_1),estradiol(E_2),estriol(E_3)を分離し,各々を抗E_3-16,17-dihemisuccinyl-BSA血清を用いたRIAにて測宛した.(実験成績)(1)正常妊婦末梢血中E値は妊娠週数に伴いF及びCともに増長する.妊娠経過に伴うC.Eに対するF.Eの比(C/F)は各Eにより異たる.E_1では妊娠中期までは一定した上昇傾向を示さず妊娠末期に上昇する.E_2では俺は全期を通じて一定しているが,妊娠末期に軽度上昇を示す.E_3では妊娠経過に伴い前期で4.5,中期で6.5,末期では8.5と著しく上昇し,Cの増量が著しい.(2)妊娠中毒症及びIUGRではF及びC・Eとも低下し,Cの減少が目立つが,両老間に推計学的有意差は認められなかった.無脳児妊娠及び胎盤性sulfatase欠損症においてはF.EのみたらずC.Eも極めて低値であった.(3)母胎血中と臍動脈血中E値を比較すると,臍動脈血中総E値は母体血中値より高く(7倍).特にE_3値は母体血に比べ18倍の高値を示し,その大部分(98%)はCであった.E_1はCおよびFとも母体に高く,E_2値はFが母体に,Cは臍動脈に高かった.臍帯動脈間の血中各E値を比較するとCでは3Eにほとんど差はなく,Fが臍静脈にE_1, E_2, E_3共に各々5, 8, 1.7倍高値であった.
著者
芝 宏礼 山口 陽 赤羽 和徳 山田 貴之 上原 一浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.155, pp.7-12, 2009-07-22
被引用文献数
12

情報通信サービスの高度化・多様化に伴い,携帯電話や無線LANやRFIDなど多種多様な無線システムが運用され,現在も多くの無線システム方式の標準化が行われている.RFIDタグやセンサを用いた情報通信サービスは,さらなる発展が予想されており,端末数も急増している.無線システムや収容する端末数の増加に伴い,基地局設置場所の不足やシステム間干渉といった問題が生じる.これらの問題を解決するために,本稿では,多種多様で膨大な数の無線端末を単一システムで統合的に収容する無線システムの提案を行う.提案するフレキシブルワイヤレスシステムは,ソフトウェア無線技術やコグニティブ無線技術を応用しており,従来の無線システムとは異なり,受信した無線信号を基地局で復調処理等をすることなく,ネットワークに電波環境をそのまま取り込み,ネットワークで受信した電波をソフトウェアで処理することであらゆる無線システムに対応する.本稿では,フレキシブルワイヤレスシステムの実現に向けた試作結果について述べる.複数の無線システムを同時に収容する際の課題の一つである信号処理負荷の増大に対して,高効率ソフトウェア復調方法を提案し,その有効性を実機を用いて示す.
著者
上原 一浩 関 智弘 鹿子嶋 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.593-601, 1995-09-25
被引用文献数
57

従来より,屋内伝搬遅延特性の解析に適用されている幾何光学的解析手法に,任意の送受信アンテナ指向性と偏波の効果を含めて計算するアルゴリズムを組み込んだ.直方体の部屋においてこれらを含めた計算を行う際に必要な角度情報等を,部屋の幾何学的性質から容易に求める手法を示した.本手法によりマルチパス伝搬環境における狭ビームアンテナの遅延波抑圧効果を定量的に示した.例えば,送受信アンテナが共に無指向性の場合に対し,半値角30°のペンシルビームを用いた場合には遅延スプレッドは1/10近くまで低減される.これらにより,屋内高速無線データ通信において高い伝送品質を実現するためのアンテナ半値角や偏波等の設計手法が示された.
著者
李 斗煥 山田 貴之 芝 宏礼 山口 陽 上原 一浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.441, pp.129-134, 2010-02-24
参考文献数
11

Rapid developments and changes of wireless radio environments require a unified platform which can flexibly deal with various wireless radio systems. To satisfy this requirement, we proposed a heterogeneous network system which is composed of flexible access points and protocol-free signal processing part. As a partial fulfillment of the proposed system, we employ compressed sensing technology to realize a highly flexible and efficient radio wave data reception and transmission. Compressed sensing is a new framework for solving an ill-posed inverse problem of sparse signal. Direct translation of compressed sensing in the sense of wireless technology is as follow: radio wave data can be received, transmitted, and reconstructed using sub-Nyquist rate information without aliasing provided that radio wave is sparse. Considering the scarce usage of frequency resources, compressed sensing is suitable for various scenarios in wireless technology. To provide a full understanding of our approach, we first provide basic knowledge of compressed sensing. Then, describe new radio wave data compression methods which provide a highly efficient radio wave data transmission.
著者
丸山 珠美 上原 一浩 鹿子嶋 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.424-433, 1997-05-25
被引用文献数
44

屋内高速無線LAN端末用アンテナは, 設置場所のフレキシビリテイ向上のため小型でかつ全方位をカバーできることが望ましい. しかし高速化を実現する鋭いビームを得るには, アンテナの開口面積を確保する必要があり小型化は困難であった. 本論文は, この小型化を目的として, 円形地板上にモノポール八木・宇田アレーアンテナを周方向に配列したマルチセクタモノポール八木・宇田アンテナ(MS-MPYA: Multi Sector Monopole Yagi-Uda Antenna)を提案し, モーメント法を用いた解析と実験によりその設計を行った. MS-MPYAは金属フィンの設置がアレー間結合によって生じる水平面指向性のビーム割れをなくすのに有効であること, 隣接アレーを用いた指向性制御により水平面の半値幅を10゜小さくできること, 地板の影響により垂直面のビーム幅がアレー長によらず絞られることを示し, これによりアンテナの小型化が可能となることを明らかにした. 本結果をもとにアレー長, 地板長, リフレクタの高さ, フィンの長さで決まるMS-MPYAの設計法を示すと共に, 無線LANに用いる19GHz帯で試作を行い, MS-MPYAがコーナリフレクタを用いた場合の1/3の高さ6mmで所望特性が得られることを明らかにした.