著者
山極 大葵 萓野 良樹 上 芳夫 肖 鳳超 井上 浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.8, pp.509-518, 2023-08-01

電子機器の小型・軽量化に伴い,伝送線路から発生する電磁ノイズ対策の一つとして,薄い導体シールドが採用されている.本論文は,薄い導体シールドを伝送線路に実装した際に生じる周波数分散の物理現象の解明及び定量的表現に基づく特性の予測を目的としている.差動線路間隔よりも近傍に薄い導体シールドを実装した際に一次定数に生じる周波数分散の導体シールド厚み依存性及び近傍磁界シールド効果との対応関係について電磁界解析により検討し,周波数分散を予測するための定量的表現方法について提案した.検討周波数は高速伝送線路を想定した20 MHz ~10 GHzである.一般的なマイクロストリップやストリップ構造の伝送線路とは異なり,周波数分散は物理現象をもとに四つのシンプルな周波数帯域に区分でき,特に近傍磁界シールド効果に起因した帯域区分では,シグモイド関数により定量的に表現できることを示した.更に,定量的表現のフィッティング定数及び近傍磁界シールド効果の導体厚み依存性評価により,周波数分散が生じる帯域と導体シールドの厚みは反比例の関係があることを明らかにした.この周波数分散の定量的表現と導体シールド材料の厚み等の条件から,周波数特性が定量的に予測可能となることも示した.

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