著者
上 芳夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.11, pp.1070-1082, 2007-11-01

環境電磁工学(EMC)分野における伝送回路理論の基礎は,伝送線路と電磁波の結合を表す変形された電信方程式である.まず,二つの定式化モデルとその関係について概説している.次にこの解方程式を伝送線路からの放射問題に展開する考え方,非平行な伝送線路間の結合問題を回路網表現へ発展させる手法を提案している.更に,通常の電信方程式を拡張することによって表現される多線条線路の解析手法や高速電力線搬送通信(PLC)でのEMC問題に適用し,解析に有効なモード回路網を提案し,PLCモデムと電力線配線の取扱法を提示している.
著者
山極 大葵 萓野 良樹 上 芳夫 肖 鳳超 井上 浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.8, pp.509-518, 2023-08-01

電子機器の小型・軽量化に伴い,伝送線路から発生する電磁ノイズ対策の一つとして,薄い導体シールドが採用されている.本論文は,薄い導体シールドを伝送線路に実装した際に生じる周波数分散の物理現象の解明及び定量的表現に基づく特性の予測を目的としている.差動線路間隔よりも近傍に薄い導体シールドを実装した際に一次定数に生じる周波数分散の導体シールド厚み依存性及び近傍磁界シールド効果との対応関係について電磁界解析により検討し,周波数分散を予測するための定量的表現方法について提案した.検討周波数は高速伝送線路を想定した20 MHz ~10 GHzである.一般的なマイクロストリップやストリップ構造の伝送線路とは異なり,周波数分散は物理現象をもとに四つのシンプルな周波数帯域に区分でき,特に近傍磁界シールド効果に起因した帯域区分では,シグモイド関数により定量的に表現できることを示した.更に,定量的表現のフィッティング定数及び近傍磁界シールド効果の導体厚み依存性評価により,周波数分散が生じる帯域と導体シールドの厚みは反比例の関係があることを明らかにした.この周波数分散の定量的表現と導体シールド材料の厚み等の条件から,周波数特性が定量的に予測可能となることも示した.
著者
山崎 克明 篠田 徹 村上 芳夫 久塚 純一 斉藤 貞之 藪野 祐三
出版者
北九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

北九州市のネットワ-クの形成について特筆すべきは伝統の根強い残存である。このことは、ネットワ-クの主体、対象、そのあり方等において極めて特徴的である。近年、新たな試みがなされてはいるが、伝統型の残存から、「ネジレ」を生じていることも指摘しうる。具体的に述べれば(1)「企業間ネットワ-ク」については、中小企業における組織技術の鉄依存とタテのネットワ-クの残存(2)「まちづくりネットワ-ク」についてはKEPCのような新たなネットワ-ク形成がみられるものの、北九州市の不況のありようの把握の不正確さ→活性化策のミスマッチ(3)「市民と行政のネットワ-ク」については、伝統型自治会による新しい動きへの阻害(4)「助けるネットワ-ク」については、年長者いこいの家をめぐって高齢者個人の単発的ネットワ-クは形成されはするが、例えば、他の福祉施設との間の社会的ネットワ-クが形成されていない点(5)「女性のネットワ-ク」については、伝統型グル-プが中心を占めていることから、今日的課題の具体的扱い方も伝統的なものとならざるを得ない点(6)従って「雇用をめぐるネットワ-ク」も、雇用の構造にみられる数値以上の課題をかかえている点、等々となる。他方、新興の地域では、区長の役割の変化やキメ細かい行政も展開されつつあることも指摘できる。構造の変容、都像の変容という一般的課題とその担い手、より正確には、それへの参加を許される担い手の意識の「ネジレ」が問題点をより明確にしており、今後は、大都市を構成するより幅広い要素を社会的に組み込んだネットワ-クが追求されることが北九州市におけるネットワ-クの方向性を定めることになろう。都市のかかえる課題は、その課題の正しい認識と把握が基礎をなすのであり、一般化された解決手法は余り有効であるとは感じられない。
著者
荒木 健次 肖 鳳超 上 芳夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.11, pp.1106-1115, 2007-11-01
被引用文献数
10

電子機器で使用される多層基板において,バスラインを2枚のグランド層間に挟んで直交に配線する方式におけるクロストーク問題を解析するための回路網モデルを考察している.このモデルでは線路断面構造は上下面がグランド面で,線路の位置が中央にない非対称なストリップ線路である.このような線路が直交している場合のクロストーク問題を検討するために,TEMモードの条件下において一方の線路が作る電界が他方の線路に影響を与えるとして,4ポート回路網表示を求めている.このときの電界は電気影像法を用いて,ストリップ線路が非対称な構造であるので線電荷が作る電位から解析関数で求めている.この電位を線路端子での電圧と電流で表現し,最終的に縦続行列形の4ポート回路網を得ている.更に,この系での結合モデルでの分布相互キャパシタンスを評価し,そのほとんどが交差点に集中していることを定量的に明らかにし,集中相互キャパシタンスで表現するモデルを提案している.これらの回路モデルは実験モデルの測定値から検証を行っている.
著者
戸花 照雄 上 芳夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.812-818, 1996-11-25
参考文献数
11
被引用文献数
19

プリント回路基板(PCB)からの放射妨害波は,EMC/EMIの分野での深刻な問題である.PCBのグラウンド雑音はコモンモード放射源となる可能性が高く,そのためここではグラウンド電流が作る近傍磁界に着目している.線路パターンの位置が異なる有限な大きさのPCBの銅箔の表と裏の磁界分布について,実験的に考察し,理想的な状態で計算した磁界分布との比較を行っている.更に,基板から放射される遠方電界の測定を行い,実験から求めた基板縁の電流から簡単に求めた計算値との比較を行っている.これらの結果からPCBの線路パターンの存在する誘電体側(表側)だけでなく,PCBの裏側の部分にもかなり高いレベルの磁界分布が確認され,このコモンモード電流が放射電界に大きくかかわっていることを明らかにした.
著者
肖 鳳超 中田 洋平 村野 公俊 上 芳夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.885-893, 2006-11-01
参考文献数
19
被引用文献数
16

回路基板において,グランド層に入ったスリットを十分な間隔をおいてまたぐ平行な2本のトレース線路が配置されているとき,この線路間には大きなレベルのクロストーク現象が発生する.この現象が磁界結合(誘導性結合)であることを実験的に明らかにし,これを根拠に等価回路モデルを提案し,実験結果と比較することによって検証している.更に,このモデルを用いてスリット間に挿入するステッチングキャパシタのクロストーク低減効果を評価している.
著者
杉浦 行 上 芳夫 雨宮 不二雄 山中 幸雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ, 環境電磁工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.167, pp.23-28, 2007-07-20
被引用文献数
12

我が国では,平成17年の総務省「高速電力線搬送通信に関する研究会」及び平成18年の「情報通信審議会・CISPR委員会」において,家屋内の電力線の電気的特性,短波帯の電波伝搬特性,建物の電磁波遮蔽特性などの研究が精力的に行われてきた.その結果を踏まえて,平成18年6月に,高速電力線通信装置に課すべき許容値と測定法が上記審議会から総務大臣に答申され,これに基づいた法令が,平成18年10月に告示された.そこで,これらの許容値および測定法の根拠について概略を紹介する.