- 著者
-
甘利 俊一
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:03736091)
- 巻号頁・発行日
- vol.J69-A, no.6, pp.757-763, 1986-06-25
二つの地点で互に相関のあるデータが観測された場合に,両地点でそれぞれ独立に情報の縮約を行いデータの量を減らすことがある.経済データ,環境データなどにこうした例が多い.縮約したデータ(統計量)を持ち寄って両者を共通に支配する確率構造についての統計的推論を行う場合に,それぞれのデータを独立に情報縮約したことによって失われる統計情報量はどのくらいであろうか.いいかえれば,Shannonの意味での情報量の縮約を両地点で独立に行った場合に失われるFisher情報量はどの位であり,このときの最良のデータ圧縮法と推定法はどのようなものになるであろうか.本論文は,新しく相互Fisher情報量という概念を導入し,情報理論と統計学を結ぶ新しい理論を提唱してこの問題を解決する.確率分布空間の幾何学的構造を研究する情報幾何学の有効性がここでも示される.