著者
谷 淳
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J74-A, no.8, pp.1208-1215, 1991-08-25

リヤプノフ安定性を基盤とする多くのニューラルネットモデルは,極小への落込みなどの問題点をもち,その動特性の限界が指摘されている.本論文ではこのようなニューラルネットモデルに対してカオス力学系を導入することにより,それらに新たな動特性を付加することを試みる.本論文で提案するカオス力学モデルは,エネルギー曲面での運動を記述する力学方程式の散逸項に周期的に変動する非線形抵抗をもつことを特徴とし,安定および不安定の位相を繰り返すことにより,状態のカオス的遍歴を実現するものである.誤差逆伝搬学習およびホップフィールド型ネットワークでの記憶想起に本力学モデルを適用した結果,これらの動的過程においてカオス的な極小遷移を確認した.更に,適当なパラメータ操作により発生するインターミテントカオスは,安定性と可塑性が共存したより柔軟な学習,構造性をもった記憶想起などの有効な動特性をネットワークに導くことが確認された.

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