著者
西井 稜子 松岡 憲知
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2008年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.114, 2008 (Released:2008-07-19)

はじめに 重力性変形地形として認識されている山向き小崖や山上凹地は,大規模崩壊・地すべりの前兆現象の一つとして指摘されており,災害対策の点からも注目されている.しかし,前兆現象として認識されているこれらの地形が崩壊へ移行する過程は,観測事例が少なく,詳細はわかっていない.本研究では,崩壊発生直後に形成されたテンションクラック群を含む岩盤斜面を対象に,変形過程を明らかにすることを目的とする.調査地 調査地は,赤石山脈・間ノ岳の東斜面に位置するアレ沢崩壊地頂部である.一帯の地質は,四万十累帯白根層群の砂岩頁岩互層からなる.主稜線周辺には,岩盤の重力性変形を示す山上凹地や山向き小崖が数多く分布している.一部の山向き小崖を切って存在するアレ沢崩壊地では,2004年5月に岩盤崩壊(推定約15万m2)が発生した.この崩壊によって,崩壊した斜面の直上部とその周囲には多数の小規模なテンションクラックが形成された.観測を行っているのは,崩壊地頂部にあたる標高約3000 mの岩盤斜面上である.調査方法 岩盤斜面に27の測点を設置し,2006年10月~2007年10月までの計5回,トータルステーションによる測量を行った.幅約10 cmのクラックには変位計を設置し,降水量,地表面温度の通年観測も同時に行った.結果および考察 変位計の観測結果から,幅約10cmのクラックは,融雪期にのみ3mm程の急激な変位が認められ,季節変動を示した.一方,岩盤斜面全体の変形は,大きく2タイプに分かれる.岩盤斜面上に存在する比高3~5m,長さ60m程の谷向き小崖を境に,下部斜面では,崩壊地へ向かって加速的に変位が進行しており,年間変位量は約50 cmを示した.小崖より上部斜面では,年間変位量は約10cmを示した.したがって,谷向き小崖を境にスライドが生じ,割れ目が拡大していることが推定された.また,ひずみが大きいことから,近い将来崩壊する可能性のある不安定領域が拡大していると推測される.

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@Rocy_No1 後で聞いたところによると、あそこは山丹全体が動いているんだそうです。 別口の調査報告も見つけました。 赤石山脈・間ノ岳における崩壊斜面頂部の変形過程 https://t.co/sRJwqZJsGY

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