著者
平井 松午
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100060, 2012 (Released:2013-03-08)

1.はじめに 江戸幕府は,安政元年(1854)の日米和親条約に基づく箱館開港にともない,翌年2月に松前藩領を除く蝦夷地全域を幕府直轄地とし,明治維新を迎えることになる。この蝦夷地第二次幕領期には,仙台藩・南部藩・津軽藩・秋田藩,安政6年以降はこれに会津藩・庄内藩が加わって,東北諸藩による蝦夷地の分領支配および警衛が行われた。そのため,東北諸藩は蝦夷地の各地に元陣屋や出張陣屋などを構え,数百人規模の藩兵を派遣してロシアの南下政策に備えることとなった(図1)。 本報告は,絵図資料等をもとに,GISソフトを用いて安政期におけるこれら蝦夷地陣屋の位置比定や景観復原を行い,その形態的特徴を明らかにすることにある。2.蝦夷地陣屋の絵図資料と陣屋の構造 東北諸藩による蝦夷地陣屋の建設にあたっては,陣屋建設地の事前見分,警衛持場絵図,陣屋周辺の絵図や陣屋配置図・陣屋建物差図・台場絵図等の作成,地元(東北)での建築部材の調達など,幕府や箱館奉行所の指導の下に準備が進められたとみられる。 これらの絵図や関連文書は,弘前市立図書館,盛岡市立中央公民館,函館市立中央図書館などに残されており,これらの絵図をGISソフト上で重ね合わせることで陣屋景観の3D復原も可能となる。 図2は,津軽藩・南部藩の蝦夷地警衛の拠点となった箱館近郊の千代ヶ台陣屋および水元陣屋の復原図である。ともに,外郭土塁や内郭土塁,水濠などで二重三重に囲繞された堅固な構造を有していたことが判明した。 しかしながら,こうした絵図資料を欠く陣屋も多く,その中には位置比定さえも困難な陣屋もある。報告時には,空中写真や発掘資料なども活用して,他藩の陣屋や出張陣屋についても景観復原を試みる。付記本報告は,平成22~25年度科研費・基盤研究(B)「文化遺産としての幕末蝦夷地陣屋・囲郭の景観復原-GIS・3次元画像ソフトの活用」(研究代表者:戸祭由美夫奈良女子大学名誉教授,ヶ台番号22320170)の成果の一部である。参考文献戸祭由美夫2000.幕末に建設された北海道の囲郭-五稜郭の囲郭プランのもつ意義の研究-.足利健亮先生追悼論文集編纂委員会編『地図と歴史空間』303-315。大明堂.

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GISを用いた幕末期における蝦夷地陣屋の3D復原 https://t.co/wZGiEj1rF7

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