著者
黒田 春菜 小寺 浩二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2022年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.101, 2022 (Released:2022-03-28)

Ⅰ はじめに 本研究では、最新の現地調査(2021 年 11月)と過去のデータ及び既往研究との比較を行うことで、猪苗代湖の中性化の現状をより明らかにすることを目的としている。また、2021年11月に底泥採取および珪藻分析を行ったため、その報告も兼ねる。 Ⅱ 地域概要 猪苗代湖は、汽水湖であるサロマ湖を除けば、国内における湖面積第3位を誇る。流入河川としては主に北岸へ流入する長瀬川があり、総流入量の半分以上を占める。ついで南岸へ流入する舟津川がある。流出河川は日橋川と安積疎水がある。日橋川は天然の流出河川であり、安積疎水は人的に管理されている。 Ⅲ 研究方法 現地では気温、水温、pH、RpH、電気伝導度(EC)の測定をおこなった。試料は実験室で処理し、TOC やイオンクロマトグラフを用いて主要溶存成分(N+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl−、NO3−、 SO42−)の分析をしている。その他湖心の調査なども行った。また、採取した底泥は筒状に採泥し、上部5mm。下部5mmずつ削って珪藻プレパラートを作成した。 Ⅳ 結果と考察 猪苗代湖および浜では、とりわけ湖西部で生活排水や湖岸植生「ヨシ」の枯死によって人的もしくは自然的な影響によるpHの上昇が見られた。沼ノ倉2号橋では、放水が起こるとEC値が通常時の50µS/cm前後から150µS/cm以上にまで大きく上昇することがわかった。しかしこの放水が湖水にもたらす影響は微々たるものであるため、猪苗代湖の中性化は長瀬川の水質に大きく左右されることがわかった。長瀬川に合流する旧湯川(湯川橋)の水質は、強酸性である硫黄川とアルカリ性である高森川の2河川の水質に大きく左右されることもわかった。上下で2枚作製した珪藻プレパラートは、上下で出現珪藻に違いが見られた。上部における最多出現属はフラギィラリア(Fragilaria)属、下部ではナビィクラ(Navicula)属が最多であった。 Ⅴ おわりに 化学的分析および生物学的分析により猪苗代湖の中性化についての議論が深まったが、これらをより確固なものとするためにも今後も定期的な調査が必要である。特に珪藻分析の質を高め、流量の測定に一段と気を配りつつ、猪苗代湖および集水域の調査を継続していきたい。 参 考 文 献 小寺浩二・森本洋一・斎藤圭(2013):猪苗代湖および集水域の水環境に関する地理学的研究(4) -2009年 4 月~ 2012年 11月の継続観測結果から-, 2013年度日本地理学会春季学術大会発表要旨集.

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