著者
宮川 慎司
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.28-60, 2020-09-15 (Released:2020-10-14)
参考文献数
50

途上国の貧困層は,生活の上で当局に認められないインフォーマルな活動を行うことが少なくない。本稿は,互いの苦境を理解するマニラ首都圏の貧困層自身が,なぜ2010年代半ばになって反インフォーマリティの規範をもつようになったかについて,スラム地域の「盗電」に関する調査から考察する。盗電を行う住民と行わない住民双方の論理から,盗電を許容しない規範が生じる理由を明らかにする。もとよりスラム住民は火災発生の恐れがある盗電に対して批判的な規範をもつ一方で,電力正規契約を得る障壁の高さから盗電を正当化していた。しかし近年の2つの法執行強化により,盗電は許容されなくなりつつある。第1に,技術的な取締りの導入により,盗電を取締られた住民が金銭的負担の不公平から盗電に対して批判を強めた。第2に,ドゥテルテ政権下における公的機関の行政手続き改善を背景に,正規契約を得る障壁低下の可能性が示され,盗電の正当化が難しくなった。

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