著者
寺尾 康
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.193-198, 1999 (Released:2006-04-25)
参考文献数
7

本研究では,ある伝導失語患者の発話例の分析をもとに,それを心理言語学での言い誤り研究の観点からみたらどのようなことが言えるのか,を中心に比較検討を行った。その結果は以下のようにまとめられる。 (1) 健常者の言い誤りでは,誤りの源が文脈中にある転置型の誤りが,源がない置換型の誤りよりも頻度が約3倍の高さだったが,観察した音韻性錯語の例ではこの傾向は逆であった。 (2) 誤りの解釈と発話モデル内の「音韻的レベル」と「音声的レベル」を仮定する際には,弁別素性による誤りと源の類似性の分析だけでなく,音韻的な環境を考慮した分析単位も必要になる。音韻性錯語の付加の誤りが生じる位置はフットの境界と一致すること,同一母音を持つ2モーラ間で子音の誤りが起きやすい,という観察から伝導失語症患者が音韻的枠を準備できる能力を残している可能性が示唆された。

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