著者
寺尾 康
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.17-27, 2008-12-30 (Released:2017-08-31)
被引用文献数
1

The regularity and characteristics which speech errors show have been regarded as a 'window' through which one can see how unconscious language production mechanisms work in the mind. The present study examines the phonological components of two influential models based on Japanese speech error data. It is suggested that WEAVER++ adopting verification system and syllabary explains the flow from the ordering of segments in phonological encoding to the articulator in a more convincing way, whereas the interactive activation model has advantages over WEAVER++ in describing the repeated phoneme effect observed often in Japanese sound exchange errors.
著者
寺尾 康
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.193-198, 1999 (Released:2006-04-25)
参考文献数
7

本研究では,ある伝導失語患者の発話例の分析をもとに,それを心理言語学での言い誤り研究の観点からみたらどのようなことが言えるのか,を中心に比較検討を行った。その結果は以下のようにまとめられる。 (1) 健常者の言い誤りでは,誤りの源が文脈中にある転置型の誤りが,源がない置換型の誤りよりも頻度が約3倍の高さだったが,観察した音韻性錯語の例ではこの傾向は逆であった。 (2) 誤りの解釈と発話モデル内の「音韻的レベル」と「音声的レベル」を仮定する際には,弁別素性による誤りと源の類似性の分析だけでなく,音韻的な環境を考慮した分析単位も必要になる。音韻性錯語の付加の誤りが生じる位置はフットの境界と一致すること,同一母音を持つ2モーラ間で子音の誤りが起きやすい,という観察から伝導失語症患者が音韻的枠を準備できる能力を残している可能性が示唆された。
著者
中 則夫 宮田 Susanne 寺尾 康
出版者
大阪学院大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

(I)日本語における語彙の発達に関する予備調査本年度は、日英語のデータ整備、および少数の被験者を対象にした予備分析を行った。その結果、観察した四児にはいくつかの傾向がみられた。(11)タイプはすべて名詞が一番多い(12)間投詞類が多く形容詞、動詞の活用語が少ない(10%以下)グループがある(13)動詞の活用語が多く(20%程度)、間投詞類が少ない(10%以下)グループがある(14)上位を占める品詞はばらつきがあり、個人差により出現しない品詞もある(15)(12),(13)の結果は大久保のいう名詞型、動詞型にほぼ一致する(16)活用語のタイプが多いときはト-クンも多い(動詞は24%以上(II)幼児のメンタル・レキシコンを探る手がかり本年度行った、筆者が所属する大学の保育科の学生に依頼して行った予備的な実例収集では、(1)のような語彙の代用タイプの誤りは34例(総数750例)観察された。全体的な傾向としては、子どもの誤りであっても意図した語と誤った語の文法範疇は100%一致していること、誤りの要因では(2)に示すような、音韻的な類似性に影響されたと思われるものが多く観察された。(2)a.ハンバーグ(段ボール:1.6)b.オイナリ(かみなり:3.0)c.ガイコツ(がいこく:4.0)また、(1d)のような、文脈的な語彙代用は子どもの誤りには観察できなかった。語彙レベルに限らず、音韻的な誤りにおいても文脈の影響を受けていると思われる誤りはきわめて少なかった。このことは、子どもの記憶容量の限界からくるのか、発話部門内の操作の容量(音韻的な交換タイプは多く観察される。これも一種の文脈的な誤りとみるならば例外となる。)によるのか今後の課題としたい。
著者
原口 庄輔 岡崎 正男 佐々木 冠 時崎 久夫 田中 伸一 寺尾 康 上田 功 米田 信子 小松 雅彦 西山 國雄 白石 英才 三間 英樹 田端 敏幸 本間 猛 深澤 はるか
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、今まで一見すると混沌した状況にあった音韻類型に関する諸問題について、帰納的接近法、演繹的接近法、相関関係からの接近法、という三つの方法論により、新たな知見を得ることを目的としたものである。研究期間中に、三つの方法論により次の研究成果が上がった。(1)個別言語の具体的な音韻現象に関する新たな一般性の発見、(2)最適性理論における制約に関する新たな提案、(3)語の韻律構造と文の語順の相関関係の明確化。これらの知見は、すべて、新しい音韻類型確立に貢献するものである。