著者
春成 秀爾
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.161-179, 2005 (Released:2005-12-22)
参考文献数
40

1941年12月に中国で行方不明になった北京原人骨の捜索は今もつづいている。しかし,すでに63年前のことで,捜索は行き詰まりの状態にある。本稿では,1941年12月から1年半にわたって日本の憲兵隊が捜査した結果を1943年5月にまとめて上海の憲兵隊司令部へ提出した文書を紹介する。さらに,長谷部言人らの研究者と北京原人骨との関わりを示す文献の提示と分析をおこない,北京原人骨に関する日本側の資料とする。日本・中国・アメリカの資料を検討したところでは,日本軍および日本人研究者の動きが,北京原人骨行方不明事件を発生させたもっとも重大な背景となっているけれども,原人骨の失踪とは直接的な関係は見いだせない。その一方,原人骨の失踪以前にアメリカに渡ったワイデンライヒや彼の秘書であったヒルシュブルク,助手であった胡承志の言動には不明なところがある。北京原人骨の失踪は,日中戦争中,日米開戦時に生じたきわめて不幸な事件であって,日本側に「文化帝国主義」があったことを研究者は銘記しておくべきであろう。

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知り合いに教えてもらったやつだけど、北京原人の骨の話は↓の論文がおもしろかった。結局どこにいったんだろう… https://t.co/QCSdcozHSb
こんな文献があるのか。 戦争中に失われた中国の古代人類化石の行方。 https://t.co/eQuQjCXdR1
@Jiraygyo @MIBkai 実はこういうお話が<北京原人の骨 https://t.co/00lnwTeNSO
『北京原人の骨の行方』…興味深い論文だけど、「北京マン」で大草原w https://t.co/EcY2MG0j0u

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