- 著者
-
佐々木 大樹
- 出版者
- 智山勧学会
- 雑誌
- 智山学報 (ISSN:02865661)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, pp.111-138, 2021 (Released:2022-04-01)
- 参考文献数
- 190
「〓〓〓〓〓」は胎蔵大日如来の五字真言とされ、真言密教において厳密に師資相承されてきた。その一方で五字真言は民間に流伝し、災難を除き、病気や怪我を治す一種の呪いとして用いられてきた。本論では各都道府県より刊行された各種『県史』等を中心に、民間において五字真言がいかに信仰され、流通されたのかを調べた。具体的には功能別に様々な事例を整理し、Ⅰ 毒害を避ける(ⓐ蛇除けとその解毒 ⓑ蜂除けとその解毒)、Ⅱ 傷病を治す(ⓐ火傷 ⓑ歯痛 ⓒ止血 ⓓその他の傷病)、Ⅲ その他の効能、という細目を設けて、その由来等を論じた。しばしば五字真言は民間において転訛し、前後に意味深長な言葉が加えられたが、蛇除けには蕨やナメクジ、火傷の治療には「猿沢池の大蛇」、止血ならば「血は父母の恵み」といったように、言葉と功能には一定の法則性があることが判明した。