著者
佐々木 大樹
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.111-138, 2021 (Released:2022-04-01)
参考文献数
190

「〓〓〓〓〓」は胎蔵大日如来の五字真言とされ、真言密教において厳密に師資相承されてきた。その一方で五字真言は民間に流伝し、災難を除き、病気や怪我を治す一種の呪いとして用いられてきた。本論では各都道府県より刊行された各種『県史』等を中心に、民間において五字真言がいかに信仰され、流通されたのかを調べた。具体的には功能別に様々な事例を整理し、Ⅰ 毒害を避ける(ⓐ蛇除けとその解毒 ⓑ蜂除けとその解毒)、Ⅱ 傷病を治す(ⓐ火傷 ⓑ歯痛 ⓒ止血 ⓓその他の傷病)、Ⅲ その他の効能、という細目を設けて、その由来等を論じた。しばしば五字真言は民間において転訛し、前後に意味深長な言葉が加えられたが、蛇除けには蕨やナメクジ、火傷の治療には「猿沢池の大蛇」、止血ならば「血は父母の恵み」といったように、言葉と功能には一定の法則性があることが判明した。
著者
佐々木 大樹
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.0263-0282, 2016 (Released:2019-02-22)
参考文献数
25

初期密教における重要な尊格として、変化観音・金剛手等とならび、仏頂尊の名を挙げることができる1)。仏頂尊は、釈尊が具えた三十二相のうち、頂上肉髻相を尊格化したものと考えられている。仏頂尊は、七世紀頃に初めて文献上に登場した初期密教を代表する仏尊であり、以後の経軌、例えば『大日経』『金剛頂経』等に継承されていった。仏頂系の経軌は、共通して組織的な儀礼(特に灌頂)をもち、また部族(kula)の概念を導入する等、両部大経に与えた影響も大きいと評されている2)。 仏頂尊は、数多くの密教経軌に登場し、その名称・種類は様々であるが3)、その中でも諸仏頂を総べるものとして頂点に君臨したのが一字金輪である。またその一字金輪の真言「ノウマクサマンダボダナン ボロン」(namahsamantabuddhānāṁ bhrūṁ)は、絶大な力を有する呪句とされ、真言宗では主に修法・法要の成就を促す目的で読誦されることが多い。本稿では便宜上、一字金輪の真言を「ボロン呪」と呼ぶこととしたい。
著者
白井 悠佑 佐々木 大樹 田中 美子 松夲 耕三
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
no.14, pp.13-29, 2015-07

2型糖尿病へのハチミツの影響を調べた研究はいくつか報告されているが、その真偽やメカニズムについてはよくわかっていない。そこで、本研究は肥満性2型糖尿病マウスを用いてハチミツが糖尿病に及ぼす影響やそのメカニズムの一端を見いだすことを目的に研究した。肥満性糖尿病マウスとしてKK-Ayマウスを使用。各グループ6~7匹になるように5つのグループ(PBS、グルコース、スクロース、ハチミツ(クリの花))にわけた。それ以降、グループ毎に体重を測定し、血糖値等を各グループ間で比較した。特に糖分として日常利用する佐藤との比較に重点をおいた。 KK-Ayマウスへの各種糖の投与により、ハチミツ群と比較してスクロース群は有意に高い体重を示した。また、各種糖類投与前に行った糖負荷試験(oral sugar tolerance test: OSTT)ではスクロース群とハチミツ群の間に有意な違いはなく、むしろ30分以降ハチミツ群はスクロース群よりも高い血糖値を示していた。しかし、投与8週間後に行ったOSTTではスクロース群はどの時点においてもハチミツ群の血糖値よりも高い値を示した。一方、血中脂肪関連物質に関しては、遊離脂肪酸、コレステロール、中性脂肪について有意差はない結果となった。各種糖投与前と投与後15分、30分の血中インスリン濃度測定では、各群ともに有意差は認められなかったが、ハチミツ群は15分血で高いインスリン値を示した。これに対し、スクロース群は有意差はないが最も低い傾向が見られた。肝臓および脂肪組織での遺伝子発現量の比較では、肝臓ではハチミツとスクロースでPBS と比較して有意な増加を示した。しかし、それ以外では各グループ間で違いは確認されなかった。 従って本研究において、KK-Ay糖尿病マウスへのハチミツ投与の影響は、スクロースの投与と比較して体重や血糖値の上昇を抑える作用のあることが確認された。即ち、糖尿病状態において、糖分として継続的砂糖投与は血糖値上昇を招くが、継続的ハチミツ投与ほとんど血糖値上昇が認められず、そのことはハチミツは砂糖に比べて、格段によい糖分であると云える。即ち、ハチミツは糖尿病に優しい糖分と云える。
著者
佐々木 大樹
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.279-307, 2020 (Released:2021-04-06)
参考文献数
13

土砂加持とは、土砂を真言陀羅尼で加持する密教儀礼であり、土砂を遺体などに散ずることにより、往生できると信じられた。日本では光明真言による土砂加持が広く行われてきた。本論では、インドや中国における土砂加持に関する研究を踏まえ、日本において土砂加持信仰を宣揚した僧として明恵房高弁を取り上げた。具体的には、明恵房高弁の土砂加持に関する著作を網羅的に調べ、その理解や実践について六つのテーマを設けて研究した。その結果、明恵は、経典や儀軌の記述を踏まえながらも、土砂の選定や土砂加持の手段、また在家者にすすめる受持方法において特異な解釈を施していることが確認された。また、明恵房高弁は、土砂加持や呪砂の本質を説明する際、多く弘法大師空海の思想(『即身成仏義』『声字実相義』等)を援用していることが判明した。
著者
谷村 圭哉 谷田 彩花 田中 美子 佐々木 大樹 松本 耕三 Keiya TANIMURA Ayaka TANIDA Yoshiko TANAKA Daiki SASAKI Kozo MATSUMOTO 京都産業大学総合生命科学部動物生命医科学科 京都産業大学総合生命科学部動物生命医科学科 京都産業大学ミツバチ産業科学研究センター 京都産業大学生物工学研究科 京都産業大学総合生命科学部動物生命医科学科
出版者
京都産業大学先端科学技術研究所 ; 2002-
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
no.15, pp.13-32, 2016-07

これまでにハチミツが血糖値をあまり上昇させないという報告や、砂糖と比較して体重をあまり増加させないという報告がされている。しかし、その真偽やメカニズムについては、まだ明らかにされていない。本研究は、肥満性2型糖尿病動物を用い、ハチミツが糖尿病に与える影響とそのメカニズムを解明することを目的としている。 本研究では、肥満性糖尿病マウスを用い、ハチミツと各種糖を長期間投与し、血糖値、インスリン値を測定し、糖尿病に及ぼすハチミツの影響を調べ、さらにその影響に関与する遺伝子の探索を行った。 各種糖を投与した結果、ハチミツ群では、グルコース群やスクロース群に対して体重や脂肪量が増加していなかった。また、投与4週間後、12週間後の経口糖負荷試験(Oral sugar tolerance test(OSTT))では、グルコース投与群やスクロース投与群に対し、ハチミツ投与群は相対的に低い血糖値を示した。血中脂肪関連物質に関しては、遊離脂肪酸において、ハチミツ群で他の群と比較して有意な減少が認められた。血中インスリン濃度を測定したところ、 各種糖投与60分後において、ハチミツ投与群はPBS投与群、グルコース投与群と比較して有意に低い値を示した。ハチミツの影響をさらに調べるために、肝臓においてインスリンシグナル経路について調べてみたが、影響は見られなかった。そのため、肝臓において脂質代謝に関わるタンパクについて調べたところ、AMPK‒activated protein kinase(AMPK)のリン酸化がPBS群とハチミツ群では高くなっていた。 本研究において、NSYマウスへのハチミツは、スクロースの投与と比較して体重や血糖値の上昇を抑え、血中遊離脂肪酸濃度を減少させることが確認された。そして、その要因の一つとして、ハチミツはAMPKのリン酸化を亢進させていると考えられる結果を得た。