著者
嵯峨野 淳 マギー デイビット 片寄 正樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0860, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】肩関節障害における肩甲骨の重要性はよく報告されているが,肩甲骨の動きを客観的に測定する報告は少ない.肩甲上腕関節の回旋という動きはスポーツ動作においても,日常動作においても必要不可欠な動きであるにもかかわらず,肩甲上腕関節の回旋が肩甲骨回旋に与える影響について報告はされていない.よって本研究の目的は以下の通りである。1)異なる3種類の肩甲上腕関節における回旋が肩甲骨上方回旋におよぼす変化を比較すること.2)肩甲骨上方回旋における利き手(右)・非利き手(左)における違いを比較すること.【方法】対象はすべて右利き,投動作を要するスポーツ経験のないもの,年齢が16歳から35歳であるとういう条件を満たした各年齢男女1名ずつそれぞれ20名ずつ,計40名とした.肩甲上腕関節に異なる3種類の回旋を加え(中間位,最大外旋,最大内旋)この肢位を保ちつつ,肩甲骨面での挙上時の肩甲骨の回旋量をインクリノメーターを用い二次元的に測定した.肩甲骨の測定は左右おこない,各回旋肢位それぞれ外転0度,30度,60度,90度で3回測定した.統計処理は3元配置分散分析をもちいた.【結果】1)肩甲上腕関節回旋肢位の違いと肩甲骨面挙上角度の交互作用がみられた.このことから,上腕骨挙上にともなう肩甲骨回旋量の変化程度は回旋肢位によって異なるということが明らかになった.内旋位における肩甲骨面での挙上時は他の回旋肢位よりもより肩甲骨上方回旋が必要とする傾向がみられた.2)肩甲骨の回旋量に利き手・非利き手による違いが見られた.【考察】3つの回旋肢位が加えられた時の肩甲骨面挙上時における肩甲骨の回旋量,回旋様式に違いがあることが明らかになった.特に内旋位,外旋位では中間位よりもより肩甲骨上方回旋を必要としていた.これらの結果から,上腕骨挙上に伴う肩甲上腕関節外旋・内旋肢位は中間肢位と比較して特に肩甲骨の上方回旋が必要であるという傾向が示された.日常生活動や投擲動作,水泳といったスポーツ活動においてまで肩甲上腕関節回旋と肩甲骨挙上は必要不可欠である.このため肩関節の障害を予防,リハビリテーションをする上で回旋が肩甲骨におよぼす影響の理解は大切な要素となりうると思われる.本研究は体表から,また本来3次元での動きをする肩甲骨をあえて肩甲骨の上方回旋ということに絞って評価した.このことは今後肩関節に何らかの疾患を有する者や異なる活動レベルの被験者のデータと比較することで,リハビリテーションだけでなく,障害予防のスクリーニングテストとしての臨床応用への利用価値もでるものと考える.

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