著者
小林 匠 谷口 圭吾 野宮 杏奈 片寄 正樹
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.43-48, 2018-10-31 (Released:2019-01-26)
参考文献数
20

新たに考案した足関節底屈筋力検査法(PFBT)の信頼性・有用性の検証を目的とした.健常若年成人192名を対象に,足関節底背屈可動域,PFBT,踵挙上回数を測定した.PFBTは片脚立位・足関節最大底屈位で踵骨に下方へ最大抵抗を加えた際の安定性で陽性と陰性に分けた.PFBT陽性群は陰性群より有意に底背屈可動域が小さく,踵挙上回数も少なかった(p<0.01).PFBTの検者内信頼性は高かったが(κ=0.88),検者間信頼性は不十分だった(κ=0.37).PFBTは従来の徒手筋力検査法より簡便だが,異なる筋機能を評価している可能性もあるため,さらなる検証が必要である.
著者
玉置 龍也 遠山 美和子 片寄 正樹
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.175-181, 2022-04-30 (Released:2022-06-05)
参考文献数
3

オリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会では,大会施設においてすべてのステークホルダーに対する医療サービスの提供が求められる.特に選手向け医療サービスでは,通常の医療に加えて,競技エリア(FOP)における適切な救急対応,あるいは選手のパフォーマンスをサポートするサービス内容の提供が必要となる.東京大会では,多様な職種が連携してこれらのサービスを提供し,選手の包括的サポートを実現した.
著者
河合 誠 谷口 圭吾 齋藤 輝 秋間 広 片寄 正樹
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.61-69, 2015-08-24 (Released:2018-09-28)

The purpose of this study was to determine the neuromuscular activation patterns of the quadriceps femoris (QF) synergists including the vastus intermedius (VI) during squat movement. For 15 healthy men, surface electromyography (EMG) was recorded at VI, vastus lateralis (VL), vastus medialis (VM) and rectus femoris (RF) during the repetitive squat movements. The squat movement started upright posture. This movement consisted of eccentric (ECC) phase, isometric (ISO) phase at the bottom, and concentric (CON) phase with knee joint angle between 0° to 90°. The root mean square (RMS) of the EMG signals during three phases was calculated for knee joint angles ranging from 15° to 90°. Each ECC and CON phase was further divided into three subcategories. The RMS during squat was normalized by that of 15° to 40° during the ECC phase for all muscles. During the squat movement, a significant muscle-by-angle interaction in normalized RMS was found (P < 0.05). The normalized RMS of VI was signifi cantly higher than that of the VL and VM at all subcategories during ECC phase and ISO phase (P < 0.05). These results suggest that the VI plays an important role in the fl exed knee position during squat movement. This uncovered finding may help establishment of future effective therapeutic programs for dysfunction of QF related knee joint disorders.
著者
滝澤 恵美 内山 英一 片寄 正樹 泉水 朝貴 鈴木 大輔 藤宮 峯子
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.239, 2010 (Released:2010-10-12)

【目的】股関節内転筋群としてグルーピングされている長内転筋や大内転筋は作用が筋名に付与されている。しかし、人が股関節の内転運動を行うことは稀であり、この作用以外の理解が荷重股関節では重要と考える。そこで本研究は、内転筋群の中でも特に大内転筋に注目し、股関節に対するモーメントアーム(以下、MA)を調べ、「矢状面(屈曲・伸展)」「水平面(内旋・外旋)」の作用を検討することを目的とした。 【方法】87歳女性の未固定遺体を第4腰椎の高さから脛骨近位端で切断し用いた。関節包と大内転筋以外は切離した。大内転筋は、貫通動脈と骨の付着部を目安に上部、中部、下部の3つに肉眼的に分類した。上前腸骨棘と恥骨結合部が床と垂直になるように骨盤の矢状面傾斜角度を決定し、骨盤をjigに固定した。大腿骨の自重による自然下垂位(垂線に対し約10°屈曲位)をゼロポジションとし、左側の大腿骨を屈曲・伸展方向に験者がゆっくり動かした。この際、骨上の任意点の座標は3D磁気式デジタイザー(Polhemus社製、FASTRACK)を用いて追従した。サンプリング座標の値を用いて関節角度、大腿骨骨頭中心、MAを算出した。大腿骨骨頭は球体として扱い、骨頭表面上3点の座標と日本人女性の平均骨頭半径(r=2.16cm)を使用し、非線形最小二乗法で推定した。MAは、推定骨頭中心座標と大内転筋の各部分の起始部と付着部を結んだ作用線との垂直距離を求めた。なお、本研究は札幌医科大学の倫理委員会で承認され、生前の本人と遺族に対しては身体の一部を解離して研究に用いることが説明され同意が得られている。 【結果】大内転筋の上部、中部、下部ともに股関節屈曲範囲では、伸展MAと外旋MAを有していた。矢状面のMAは、ゼロポジションにおいても伸展MAを有していた。なお、水平面のMAはゼロポジション付近を転換点とし伸展範囲では内旋MAとなった。 【考察】筋は「収縮」しかできず関節への作用は、関節中心に対する筋の位置によって決まる。すでに大内転筋の下部(坐骨結節~内側上顆)については「伸展作用」が示されている。今回の結果より、上部・中部についても下部と同様に伸展に作用するMAを含有する可能性が推察された。水平面上の回旋作用においては、股関節ゼロポジション付近を変換点に作用方向を変える特徴を持ち、内旋・外旋双方に作用を持つ可能性があった。大内転筋は、恥骨部~坐骨部に起始を持ち関節中心を前後に広く被う構造的特徴があり、多様な作用を含む筋であると予想される。今回は1股関節のデータによる結果であり今後も検討作業を行う予定である。
著者
吉田 昌弘 菅原 一博 吉田 真 谷口 圭吾 片寄 正樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.499-503, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕超音波画像診断装置を用いて安静時と足関節前方引き出しテスト(ADT)時における前距腓靱帯(ATFL)の伸張距離の計測を行い,検者内および検者間の再現性を調べること。〔対象〕過去1年以内に足関節捻挫の既往がある大学生8名10足。〔方法〕8 MHzのリニアプローブを足関節前外側部にあて,安静時およびADT時における超音波画像撮影を行った。PC上にて距骨-外果の骨間距離をATFL伸張距離として計測し,検者内および検者間の再現性について級内相関係数(ICC)を用いて調べた。また,安静時およびADT時の距骨-外果距離を対応のあるt検定で比較した。〔結果〕安静時,ADT時ともに検者内および検者間において高い再現性が得られた。安静時の外果-距骨間距離は16.5±3.9 mm,ADT時では20.0±4.9 mmであり,両者に有意な差を認めた。〔結語〕安全性および高い再現性から,足関節捻挫群に対するADTに超音波画像を併用する定量評価の有用性が確認された。
著者
中尾 学人 山根 裕司 谷口 圭吾 片寄 正樹
出版者
札幌医科大学保健医療学部
雑誌
札幌保健科学雑誌=SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES = SAPPORO MEDICAL UNIVERSITY SAPPORO JOURNAL OF HELTH SCIENCES
巻号頁・発行日
no.8, pp.13-20, 2019-03-01

本研究の目的は,ジャックナイフストレッチングの即時効果を脊柱屈曲可動域およびハムストリングスの弾性率に着目して検証することとした。健常男性15名を対象とし,異なる2つの条件(ストレッチング実施条件,コントロール条件)において,立位体前屈における指床間距離(FFD),脊柱屈曲可動域(胸椎,腰椎,骨盤前傾),ハムストリングスの弾性率(大腿二頭筋長頭,半腱様筋,半膜様筋)を条件の前後に測定した。その結果,ストレッチング介入条件では,FFDおよび骨盤前傾可動域は,ストレッチング後に有意に増大し(p < 0.01),ハムストリングスの弾性率は,ストレッチング後に全ての筋で有意に低い値を示した(p < 0.01)。このことから,ジャックナイフストレッチングによりハムストリングスの弾性率が低下することが明らかとなり,FFDの増大および骨盤前傾可動域の増大は,ハムストリングスの弾性低下に起因した可能性が示唆された。
著者
寒川 美奈 山中 正紀 片寄 正樹 大西 祥平
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C1024, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 スキーは,日本で最も楽しまれているスポーツのうちの1つである.そのなかでフリースタイルスキー(モーグル)は競技としては新しく,コブ斜面を一気に滑走し,2回のエアー(ジャンプ)を組み合わせて行うという種目であり,スキー競技の中でも危険度が高いスポーツであるといえる. 今回,2003年10月14日から11月1日までスイスにて行われた全日本フリースタイルスキーモーグルチームの合宿に理学療法士として参加する機会を得た.その際実施したメディカルチェックの結果,7名中7名にてOber test陽性,うち3名に膝蓋腱炎(内側)の既往があった.1名は,チェック実施時にも同部の疼痛を有していた. 我々はフリースタイルモーグルスキー選手にみられた膝蓋腱炎の発生メカニズムについて考察し,若干の知見を得られたので報告する.【症例】 27歳女性.モーグルスキー歴9年.4年程前よりスキー練習中膝蓋腱内側に疼痛有し,超音波及び電気治療などを受けていたが,増大時にはステロイド注射にてコントロールしていた.2002年12月右MCL損傷後,膝蓋腱の疼痛増大していた.2003年10月初期評価実施.両Frog eye.右Patella下位.筋力右膝関節伸展筋,両股関節外転筋,内転筋低下.Ober test陽性.大腿四頭筋柔軟性に左右差あり.片脚スクワットでknee in傾向.膝蓋骨可動性低下.圧痛は膝蓋骨下内側部にあり,運動開始時,あるいは疲労を感じてくると疼痛出現.自発痛はなかった.これらの評価に基づき,超音波,腸脛靭帯や大腿四頭筋に対するストレッチング,膝蓋骨に対するモビライゼーション,3 point Straight Leg Raising,片脚スクワット,片脚バランスなどを指導した.また腱炎に有効とされる遠心性収縮を用いての筋力強化も行った.練習後には,必ずアイシングを行わせた.【結果】 合宿中であったにもかかわらず,疼痛をコントロールすることができた.疼痛は膝蓋骨下内側部にのみ限局して存在したが,他部位に広がることはなかった.膝蓋骨の可動性も増大した. 【考察】 疼痛をコントロールできた理由として,アイシング実施による炎症の最小限化,膝蓋骨の可動性が増大,遠心性収縮を利用した筋力強化などを用いたためと考えられた. スキー滑走姿勢が常に体幹前傾,股関節屈曲・膝関節屈曲位であるため,腸脛靭帯は短縮しやすい肢位であるといえる.その際下肢は外旋位をとり,膝蓋骨は外側変位となり,膝蓋腱内側部にストレスが加わると考えられた.したがって,今後は本症例だけではなく同様の受傷を回避するために,他選手にも腸脛靭帯のストレッチングを意識的に実施させるべきであると考えられた.
著者
飯田 尚哉 谷口 圭吾 渡邉 耕太 宮本 浩樹 谷口 達也 藤宮 峯子 片寄 正樹
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.88-94, 2018-12-18 (Released:2019-01-08)

Although shear wave elastography (SWE) has been used to indirectly measure passive force in muscle tissues, it is unknown whether SWE can be utilized to evaluate passive force in capsule tissues. This study investigated the relationship between the shear elastic modulus and passive force in posteroinferior shoulder capsules using SWE. Six posteroinferior shoulder capsules were dissected from six fresh-frozen cadavers; then, humeral head–capsule–glenoid specimens were created from each capsule. The humeral head and glenoid were each immobilized with clamps of a custom-built device. Passive force (0-400 g in 25 g increments) was applied to each capsule via a pulley system, and elasticity was measured simultaneously using SWE. Our data revealed that the relationship between the shear elastic modulus and passive capsule force was highly linear for all six tested capsules (p < 0.01). The mean (± standard deviation) coefficient of determination was 0.933 (±0.030; range 0.883 and 0.963). Our study demonstrated that SWE is a valid and useful method for indirectly and noninvasively evaluating the passive force of the posteroinferior shoulder capsule.
著者
嵯峨野 淳 マギー デイビット 片寄 正樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0860, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】肩関節障害における肩甲骨の重要性はよく報告されているが,肩甲骨の動きを客観的に測定する報告は少ない.肩甲上腕関節の回旋という動きはスポーツ動作においても,日常動作においても必要不可欠な動きであるにもかかわらず,肩甲上腕関節の回旋が肩甲骨回旋に与える影響について報告はされていない.よって本研究の目的は以下の通りである。1)異なる3種類の肩甲上腕関節における回旋が肩甲骨上方回旋におよぼす変化を比較すること.2)肩甲骨上方回旋における利き手(右)・非利き手(左)における違いを比較すること.【方法】対象はすべて右利き,投動作を要するスポーツ経験のないもの,年齢が16歳から35歳であるとういう条件を満たした各年齢男女1名ずつそれぞれ20名ずつ,計40名とした.肩甲上腕関節に異なる3種類の回旋を加え(中間位,最大外旋,最大内旋)この肢位を保ちつつ,肩甲骨面での挙上時の肩甲骨の回旋量をインクリノメーターを用い二次元的に測定した.肩甲骨の測定は左右おこない,各回旋肢位それぞれ外転0度,30度,60度,90度で3回測定した.統計処理は3元配置分散分析をもちいた.【結果】1)肩甲上腕関節回旋肢位の違いと肩甲骨面挙上角度の交互作用がみられた.このことから,上腕骨挙上にともなう肩甲骨回旋量の変化程度は回旋肢位によって異なるということが明らかになった.内旋位における肩甲骨面での挙上時は他の回旋肢位よりもより肩甲骨上方回旋が必要とする傾向がみられた.2)肩甲骨の回旋量に利き手・非利き手による違いが見られた.【考察】3つの回旋肢位が加えられた時の肩甲骨面挙上時における肩甲骨の回旋量,回旋様式に違いがあることが明らかになった.特に内旋位,外旋位では中間位よりもより肩甲骨上方回旋を必要としていた.これらの結果から,上腕骨挙上に伴う肩甲上腕関節外旋・内旋肢位は中間肢位と比較して特に肩甲骨の上方回旋が必要であるという傾向が示された.日常生活動や投擲動作,水泳といったスポーツ活動においてまで肩甲上腕関節回旋と肩甲骨挙上は必要不可欠である.このため肩関節の障害を予防,リハビリテーションをする上で回旋が肩甲骨におよぼす影響の理解は大切な要素となりうると思われる.本研究は体表から,また本来3次元での動きをする肩甲骨をあえて肩甲骨の上方回旋ということに絞って評価した.このことは今後肩関節に何らかの疾患を有する者や異なる活動レベルの被験者のデータと比較することで,リハビリテーションだけでなく,障害予防のスクリーニングテストとしての臨床応用への利用価値もでるものと考える.
著者
加藤 拓也 谷口 圭吾 池田 祐真 本村 遼介 片寄 正樹
出版者
日本基礎理学療法学会
雑誌
日本基礎理学療法学雑誌 (ISSN:21860742)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-71, 2016-08-03 (Released:2018-09-28)

The purpose of this study was to determine the relationship between the neuromuscular activation patterns of hip adductor longus (AL), adductor magnus (AM) and hip joint angle during isokinetic hip flexion and extension. For 9 healthy men, surface electromyography was recorded at adductor longus, adductor magnus, rectus femoris, biceps femoris, semitendinosus muscles during isokinetic hip flexion and extension by three different velocities: 60 deg/sec, 90 deg/sec and 120 deg/sec, respectively. The normalized root mean square (RMS) of AL during hip flexion was significantly higher than that of the AL during hip extension. The normalized RMS of AL during hip flexion in 10°to 40°was significantly higher than that in 60° to 70° . The normalized RMS of AM during hip extension was significantly higher than that of the AM during hip flexion. These results suggest that AL is specifically recruited at the hip shallow flexed position of hip flexion and AM is recruited during hip extension.
著者
寒川 美奈 山中 正紀 片寄 正樹 大西 祥平
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C1024-C1024, 2004

【はじめに】<BR> スキーは,日本で最も楽しまれているスポーツのうちの1つである.そのなかでフリースタイルスキー(モーグル)は競技としては新しく,コブ斜面を一気に滑走し,2回のエアー(ジャンプ)を組み合わせて行うという種目であり,スキー競技の中でも危険度が高いスポーツであるといえる.<BR> 今回,2003年10月14日から11月1日までスイスにて行われた全日本フリースタイルスキーモーグルチームの合宿に理学療法士として参加する機会を得た.その際実施したメディカルチェックの結果,7名中7名にてOber test陽性,うち3名に膝蓋腱炎(内側)の既往があった.1名は,チェック実施時にも同部の疼痛を有していた.<BR> 我々はフリースタイルモーグルスキー選手にみられた膝蓋腱炎の発生メカニズムについて考察し,若干の知見を得られたので報告する.<BR>【症例】<BR> 27歳女性.モーグルスキー歴9年.4年程前よりスキー練習中膝蓋腱内側に疼痛有し,超音波及び電気治療などを受けていたが,増大時にはステロイド注射にてコントロールしていた.2002年12月右MCL損傷後,膝蓋腱の疼痛増大していた.2003年10月初期評価実施.両Frog eye.右Patella下位.筋力右膝関節伸展筋,両股関節外転筋,内転筋低下.Ober test陽性.大腿四頭筋柔軟性に左右差あり.片脚スクワットでknee in傾向.膝蓋骨可動性低下.圧痛は膝蓋骨下内側部にあり,運動開始時,あるいは疲労を感じてくると疼痛出現.自発痛はなかった.これらの評価に基づき,超音波,腸脛靭帯や大腿四頭筋に対するストレッチング,膝蓋骨に対するモビライゼーション,3 point Straight Leg Raising,片脚スクワット,片脚バランスなどを指導した.また腱炎に有効とされる遠心性収縮を用いての筋力強化も行った.練習後には,必ずアイシングを行わせた.<BR>【結果】<BR> 合宿中であったにもかかわらず,疼痛をコントロールすることができた.疼痛は膝蓋骨下内側部にのみ限局して存在したが,他部位に広がることはなかった.膝蓋骨の可動性も増大した. <BR>【考察】<BR> 疼痛をコントロールできた理由として,アイシング実施による炎症の最小限化,膝蓋骨の可動性が増大,遠心性収縮を利用した筋力強化などを用いたためと考えられた.<BR> スキー滑走姿勢が常に体幹前傾,股関節屈曲・膝関節屈曲位であるため,腸脛靭帯は短縮しやすい肢位であるといえる.その際下肢は外旋位をとり,膝蓋骨は外側変位となり,膝蓋腱内側部にストレスが加わると考えられた.したがって,今後は本症例だけではなく同様の受傷を回避するために,他選手にも腸脛靭帯のストレッチングを意識的に実施させるべきであると考えられた.