著者
田中 武一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
巻号頁・発行日
pp.A0627, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】ストレッチングの効果や生理学的な検討は様々な観点で研究されている。その中で可動域の変化を指標とした報告は多いが、そのほとんどが強度を明記していないことが多く、痛みを伴わない程度など主観的に設定している。また、ストレッチングは伸張痛を出現させないのが一般的であると言われているが、伸張痛を伴う強度でのストレッチングでも可動域の向上を認めるという報告もあり一貫していない。そこで本研究では、膝関節伸展位での股関節屈曲(SLR)ストレッチングにおけるハムストリングの筋活動電位(いわゆる防御性収縮)を定量化し、ストレッチング効果を検討することによって、筋活動電位の度合いが客観的な強度として使用できるかを明らかにすることを目的とした。【対象と方法】本研究に同意を得た健常男性10人(平均年齢29.2±4.7歳)を対象とし、測定姿位は背臥位とした。等尺性最大股関節伸展筋力を100%MVCとし、ストレッチングにおける筋活動電位は100%MVCに対する割合で定量化した。SLR角度は2.5%MVCの筋活動電位を認めた時点とし、ストレッチング前後で三回ずつ測定した。ストレッチングとSLR角度測定はBIODEXsystem3(酒井医療)を用いて、等速運動モードで設定速度2°/secにて実施し、ストレッチングは3セット行った。対象群はストレッチングをしない群(C群)、2.5%MVCの強度で20秒ストレッチングする群(S1群)、5.0%MVCの強度で20秒ストレッチングする群(S2群)の3群とし、各群はランダムに日を変えて行った。なお、S1群とS2群ではストレッチング中の伸張痛をVAS変法を用いて評価した。表面筋電図はMyoResearch(酒井医療)を用い、電極設置部位は半腱様筋の遠位1/3とした。統計学的検討には、対応のあるt検定、分散分析、多重比較を用いた。【結果】各群の平均変化率は、C群102.2±3.8%、S1群111.0±5.2%、S2群120.2±11.9%であり、ストレッチングの前後の角度は各群とも有意に増加した。また各群間の多重比較では、C群よりS1群が、C群よりS2群が、S1群よりS2群が有意に増加した。VASはS1群6.8±1.5よりS2群8.1±1.7の方が有意に増加した。【考察】一般的にストレッチングは伸張反射が起こらない痛みのない範囲で行うと言われている。しかしS1群よりS2群に有意な可動域改善を認めたことから、ゆっくりとした速度で5.0%MVCまでの強度であれば、伸張痛を伴ってもより強いストレッチングの方が効果的であることが示唆された。これは、SLRの可動性制限因子が主にハムストリングスだけであることに加え、防御的な筋収縮が起こることでより張力が増し、Ib群線維による自原抑制を助長したのではないかと考えられる。 今回の結果により、ストレッチングに対する客観的な強度設定として、ストレッチングにおける筋活動電位を指標とすることの有用性は示唆されたが、短期的な効果であり、その後の筋の弾力性の評価や長期的経過を今後検討していく必要がある。

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