著者
清野 嘉之 赤間 亮夫 岩谷 宗彦 由田 幸雄
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.195-211, 2019 (Released:2019-08-09)
参考文献数
39

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故後、環境から樹木山菜への放射性セシウムの移行が調べられている。しかし、草本に比べ樹木の山菜の情報は少ない。事故により環境中に放出されたセシウム137(137Cs)は、自然物のセシウム133(133Cs)と異なり、生態系内でまだ平衡に達しておらず、分布は今も変化していると考えられる。生態系における137Csの現在の分布は、植物体内の分布を含め、133Csの分布パターンに近づいていく途中の姿であり、133Csの現在の分布や代謝特性を明らかにすることにより137Csの将来の状態を推定できると考えられる。そこで2015~2017年に福島県の6町村でコシアブラ (Eleutherococcus sciadophylloides) とその生育環境における放射性セシウム、133Csの現状を調べた。当年シュート (枝葉) 133Cs濃度は、土壌K+の濃度 (R2 = 0.2756, P = 0.023) や沈着量 (R2 = 0.3390, P = 0.011) と負の相関関係を持ち、リター133Cs (P = 0.425)、土壌133Cs+ (P = 0.751) 濃度とはあまり関係がなかった。リターから当年シュートへの137Csの面移行係数 (Tag) は、133CsのTagと正の相関関係 (R2 = 0.5748, P < 0.001) があり、133Csが移行し易い条件では137Csも移行し易いと考えられた。樹体内の器官を比較すると、137Cs/133Cs濃度比が葉や根皮では材や樹皮より小さい場合があった。今後、137Csが生態系内で平衡していくにつれ、前者は後者のレベルに上昇していくと考えられる。また、新芽の137Cs濃度は今後、土壌K+が高濃度の林地では低下し、低濃度の林地では上昇する可能性がある。本研究で示した知見や仮説を検証する、さらなる研究が必要である。

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Transfer of radiocesium released in the 2011 #Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident to… https://t.co/zF5EJMIeWd
2011年福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムのコシアブラ (<i>Eleutherococcus sciadophylloides</i>, 新芽が食べられる野生樹木) への移行 https://t.co/J9vPj7ckeC
論文(無料・日本語): 2011年福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムのコシアブラへの移行 https://t.co/bsWymVEEAx  2019年、清野嘉之(森林総合研究所)ら。2015~2017年に福島県の6… https://t.co/vggPA2yVPb

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